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「そんなに欲求不満なら、俺が満たしてやろうか」
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「彼氏から?」
電話を切ると隣から聞かれて、ひとつ頷く。
羽琉は意味ありげに口元を緩めて、「ふうん。ラブラブなんだ」と笑った。
仲はいいけどそれだけで、同じ家にいるのに抱いてくれる気配もない。
琉生は元々淡白なところはあったけど、それでも会えば抱いてくれた。
そのセックスに物足りなさを覚える時もあったけど、『好き』と抱きながら言われるのが嬉しかった。
想われている実感があって、同じぶんだけ彼を愛したいと思った。
「ね、写真ないの。彼氏の」
「えっ?」
「いや、紗奈さんが選ぶ男ってどんなかなーってちょっと興味あって」
羽琉には関係ないし、見せる理由なんてない。
そう思うのにスマートフォンの写真を見せたのは、今日限りだと思ったからだ。
旅先で出会った名前しか知らない男――それだけでしかないから。
「優しそうじゃん」
そう言った羽琉の口元が怪しく歪んだことに、紗奈は気付いていなかった。
「……まあ優しい、けど」
どれだけ『好き』と言ってくれても優しくしてくれても、それだけじゃ足りない時がある。
セックスのことばかり考えてるわけじゃないけど、たまらなく抱かれたい時だってある。
女にだって性欲はあって愛されたい時だってあるのに、そういう時でも琉生は見ないふり。
そういう気持ちにまったく気付いてないわけじゃないと思うのに。
「なに? なんか不満ありそ」
「……不満っていうか、」
いや、不満か。
抱いてほしいのに抱いてくれない、なんて不満以外のなにものでもない。
そんなに魅力がないのかと思うと自信がなくなる。
紗奈はすぐには答えずに、マスターにまたカクテルを頼んだ。
目の前に差し出されたグラスを呷るように飲み、はー、と息を吐いた。
「もうずっと抱いてもらえてないのに、付き合ってるって言えるのかな…」
紗奈は体を突っ伏すようにして、無意識にそんな言葉を漏らした。
初対面の男に言うことじゃない。
それでも言ってしまったのは、不満が自分の中で募っていたから。
琉生に抱かれないことが、自分の中でトゲのように大きくなっていたから。
自分から言えばいいのにそうできない自分の弱さも、本当に嫌になる。
「へえ、レスなんだ?」
「……うん」
「どれくらい?」
「んー、もう1年近くかな。同棲してるっていうのにおかしいよね」
「で、紗奈さんは欲求不満ってわけだ?」
それもあるけどそれだけじゃない、ただ愛されたい、愛されてる実感が欲しいと思ってるだけ。
言葉だけじゃ、キスだけじゃ足りないものを満たしてほしいから。
なのにどうして、琉生は欲しいものを与えてくれないんだろう。
言葉じゃ伝わらないことはきっとあって、それを伝えてほしいのに。
「紗奈さん、こんなに可愛いのにね」
琉生さえもあんまり言わないことをどうして羽琉が言ってくれるの。
こんなふうに『可愛い』って言われるのは好きじゃないのに、その言葉が胸の奥に響く。
羽琉の手が優しく頭を撫でてくれる。
それがなんだか心地よくて、テーブルに顔を突っ伏しながらすっと瞼を閉じた。
それは自分が欲しいものとは違うのに、琉生とは違う手がくすぐったい。
電話を切ると隣から聞かれて、ひとつ頷く。
羽琉は意味ありげに口元を緩めて、「ふうん。ラブラブなんだ」と笑った。
仲はいいけどそれだけで、同じ家にいるのに抱いてくれる気配もない。
琉生は元々淡白なところはあったけど、それでも会えば抱いてくれた。
そのセックスに物足りなさを覚える時もあったけど、『好き』と抱きながら言われるのが嬉しかった。
想われている実感があって、同じぶんだけ彼を愛したいと思った。
「ね、写真ないの。彼氏の」
「えっ?」
「いや、紗奈さんが選ぶ男ってどんなかなーってちょっと興味あって」
羽琉には関係ないし、見せる理由なんてない。
そう思うのにスマートフォンの写真を見せたのは、今日限りだと思ったからだ。
旅先で出会った名前しか知らない男――それだけでしかないから。
「優しそうじゃん」
そう言った羽琉の口元が怪しく歪んだことに、紗奈は気付いていなかった。
「……まあ優しい、けど」
どれだけ『好き』と言ってくれても優しくしてくれても、それだけじゃ足りない時がある。
セックスのことばかり考えてるわけじゃないけど、たまらなく抱かれたい時だってある。
女にだって性欲はあって愛されたい時だってあるのに、そういう時でも琉生は見ないふり。
そういう気持ちにまったく気付いてないわけじゃないと思うのに。
「なに? なんか不満ありそ」
「……不満っていうか、」
いや、不満か。
抱いてほしいのに抱いてくれない、なんて不満以外のなにものでもない。
そんなに魅力がないのかと思うと自信がなくなる。
紗奈はすぐには答えずに、マスターにまたカクテルを頼んだ。
目の前に差し出されたグラスを呷るように飲み、はー、と息を吐いた。
「もうずっと抱いてもらえてないのに、付き合ってるって言えるのかな…」
紗奈は体を突っ伏すようにして、無意識にそんな言葉を漏らした。
初対面の男に言うことじゃない。
それでも言ってしまったのは、不満が自分の中で募っていたから。
琉生に抱かれないことが、自分の中でトゲのように大きくなっていたから。
自分から言えばいいのにそうできない自分の弱さも、本当に嫌になる。
「へえ、レスなんだ?」
「……うん」
「どれくらい?」
「んー、もう1年近くかな。同棲してるっていうのにおかしいよね」
「で、紗奈さんは欲求不満ってわけだ?」
それもあるけどそれだけじゃない、ただ愛されたい、愛されてる実感が欲しいと思ってるだけ。
言葉だけじゃ、キスだけじゃ足りないものを満たしてほしいから。
なのにどうして、琉生は欲しいものを与えてくれないんだろう。
言葉じゃ伝わらないことはきっとあって、それを伝えてほしいのに。
「紗奈さん、こんなに可愛いのにね」
琉生さえもあんまり言わないことをどうして羽琉が言ってくれるの。
こんなふうに『可愛い』って言われるのは好きじゃないのに、その言葉が胸の奥に響く。
羽琉の手が優しく頭を撫でてくれる。
それがなんだか心地よくて、テーブルに顔を突っ伏しながらすっと瞼を閉じた。
それは自分が欲しいものとは違うのに、琉生とは違う手がくすぐったい。
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