ワンナイトラブの相手は彼氏の弟でした

羽月咲羅

文字の大きさ
11 / 82
「そんなに欲求不満なら、俺が満たしてやろうか」

(7)

しおりを挟む
 羽琉はすぐに自分を抜いたりせずに、ふっ、と笑って軽くキスをしてきた。
 恋人でもないのに、どうしてこんなに甘い口づけをするんだろう。
 まるでそこに気持ちがあるんじゃないかって、勘違いしてしまいそうになる。
 彼の気持ちが自分になんて、会ったばかりでそんなことあるわけがないのに。

 羽琉は鎖骨のあたりにも唇を落として吸いつき、赤い跡を残した。
 その部分が甘く疼いて、なんだか落ち着かない。

「俺に抱かれた証、残しておくね」
「えっ?」
「彼氏とはレスなんだし問題ないだろ。これを見て、俺のこと思い出して」

 羽琉とは旅先で出会っただけで体を重ねるのも今日が最初で最後で、また会うつもりも連絡を取り合うつもりもはっきり言って皆無だ。
 なのにどうして、そんなことを言うの。

「どんだけ俺のを欲しがって、どんだけ俺ので乱れて啼いてたか、全部忘れないで」

 羽琉はそう言って、また唇に軽いキスを落として柔らかく微笑んだ。


 しばらくセックスの余韻に浸った後、羽琉はそっと自分を引き抜いた。
 それにどこか物足りなさを覚えるなんて、本当にどうかしてる。
 まだ自分の中に彼のモノがあるような、そんな感覚さえしていた。

 羽琉は自分の処理をする前に、まだ微かに濡れている紗奈の部分を優しくティッシュで拭ってくれる。
 その後、そっと布団を被せてくれて、優しく頭を撫でてくれた。
 まるで恋人の事後みたい。
 琉生に抱かれたのはもうずっと前のことだけど、こんなことをされた記憶もない。
 なのにどうして、会ったばかりの羽琉がそんなことをしてくれるの。

「関係を持った人みんなにそんなこと言って、こんなふうに優しくするの?」

 最初から軽い調子で話しかけてきて、女の扱いにも慣れてるふうだった。
 セックスも上手で、彼女にするみたいなことをされたら勘違いする。
 彼氏がいる自分でさえも、自惚れてしまいそうになるんだから。

「なに、ヤキモチ?」

 からかうような口調で言われて、迷いもなくはっきりと否定した。
 好きでもないのに、付き合ってもないのにヤキモチなんて妬くわけがない。

「違うわよ。ただそんなことばっかしてると、勘違いされると思って」
「勘違い、って?」
「だからっ……好きなんじゃないか、とか自惚れるっていうか」
「ふうん。紗奈も?」
「私はそんなことないけど」

 初対面の男が自分を好きだなんて、そんな自惚れるほど絶対的な自信なんてない。
 自分に魅力があるとは思えないし、ないから琉生に抱いてもらえないんじゃないかって。
 そんな卑屈なことばかり考えて、そんな自分が心底嫌になる。
 もっと自信があれば、愛されてる自信も持てればよかったのに。

「俺だって誰にでもこんなこと言ってるわけじゃない。ってか、初めて会う女を抱くなんてことも普段はないし」

 そうは言っても、初対面でセックスをしたのは事実だ。
 だから、てっきりいつもそういうことをしてるものだと思ってたのに。
 声をかけてきた様子からどこか軽くて、そういうことに慣れてるんだって。
 それが違うと言うのなら、どうして今日は抱いたりしたんだろう。

「じゃあどうして…」
「紗奈を抱いたかって?」
「……うん」
「興味があったから、かな。紗奈が欲求不満だったっていうのもあるけど」
「………」
「抱いて正解だったね。体の相性、バッチリみたいだし?」

 羽琉は口元に妖しい笑みを浮かべて、またチュッと唇にキスをした。
 それは触れる程度の軽いものなのに、なぜかまた欲情を刺激される。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

俺にお前の心をくれ〜若頭はこの純愛を諦められない

ラヴ KAZU
恋愛
西園寺組若頭、西園寺健吾は夕凪由梨に惚れた。 由梨を自分の物にしたいと、いきなり由梨のアパートへおしかけ、プロポーズをする。 初対面のヤクザにプロポーズされ、戸惑う由梨。 由梨は父の残した莫大な借金を返さなければいけない。 そのため、東條ホールディングス社長東條優馬の婚約者になる契約を優馬の父親と交わした。 優馬は女癖が悪く、すべての婚約が解消されてしまう。 困り果てた優馬の父親は由梨に目をつけ、永年勤務を約束する代わりに優馬の婚約者になることになった。 由梨は健吾に惹かれ始めていた。でも健吾のプロポーズを受けるわけにはいかない。 由梨はわざと健吾に嫌われるように、ある提案をした。 「私を欲しいなら、相手になります、その代わりお金頂けますか」 由梨は健吾に囲われた。 愛のないはずの優馬の嫉妬、愛のない素振りをする健吾、健吾への気持ちに気づいた由梨。 三人三様のお互いへの愛。そんな中由梨に病魔が迫っていた。

叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家 結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。 愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

お見合いから本気の恋をしてもいいですか

濘-NEI-
恋愛
元カレと破局して半年が経った頃、母から勧められたお見合いを受けることにした涼葉を待っていたのは、あの日出逢った彼でした。 高橋涼葉、28歳。 元カレとは彼の転勤を機に破局。 恋が苦手な涼葉は人恋しさから出逢いを求めてバーに来たものの、人生で初めてのナンパはやっぱり怖くて逃げ出したくなる。そんな危機から救ってくれたのはうっとりするようなイケメンだった。 優しい彼と意気投合して飲み直すことになったけれど、名前も知らない彼に惹かれてしまう気がするのにブレーキはかけられない。

雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜

和泉 花奈
恋愛
主人公の観月 奈緒(25)は、ある日突然仕事に行けなくなり、ずっとお家の中に引きこもっている。 そんな自分を変えたくて足掻き苦しんでいるが、なかなかあと一歩が踏み出せずにいる。 勇気を出して家から出た奈緒は、たまたまぶつかった須藤 悠翔という男に出会い、運命が大きく揺れ動く。 ※突然で申し訳ないのですが、投稿方式を変えました。 これまで1〜3話をまとめて1話にしておりますが、各話1話ずつそれぞれで公開することにしました。 急な変更に伴い、読者の皆様にご迷惑をお掛けして申し訳ございません。 これからも引き続き作品の応援をよろしくお願い致します。                   2025/10/21 和泉 花奈

上司に恋していいですか?

茜色
恋愛
恋愛に臆病な28歳のOL椎名澪(しいな みお)は、かつて自分をフッた男性が別の女性と結婚するという噂を聞く。ますます自信を失い落ち込んだ日々を送っていた澪は、仕事で大きなミスを犯してしまう。ことの重大さに動揺する澪の窮地を救ってくれたのは、以前から密かに憧れていた課長の成瀬昇吾(なるせ しょうご)だった。 澪より7歳年上の成瀬は、仕事もできてモテるのに何故か未だに独身で謎の多い人物。澪は自分など相手にされないと遠慮しつつ、仕事を通して一緒に過ごすうちに、成瀬に惹かれる想いを抑えられなくなっていく。けれども社内には、成瀬に関する気になる噂があって・・・。 ※ R18描写は後半まで出てきません。「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。

処理中です...