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「それで楽になれるなら、もっと求めろよ」
(6)
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「そんなに俺のことでいっぱいになってんの? 兄貴を拒絶するくらい?」
「…っそ、れは…!」
「はは、俺の思惑どおりってわけだ。紗奈は、もう俺とのセックスなしじゃ生きていけなくなってんだよ」
羽琉の唇がまた降ってきて、その熱さに今にも溶けそうになる。
同じ家の中に琉生がいるのに、羽琉に触れてほしくてたまらない。
いつのまに、こんなに淫乱になったんだろう。
そんな自分に驚きながらも、羽琉が相手だとどうも抵抗できそうにない。
ソファの上に体を沈められ、あちこちに優しいキスが降ってくる。
額、頬、首筋、耳――そのたびに感じて、体が疼いて仕方ないなんて。
「は、る……だめ、変になる…っ」
琉生が抱いてくれないから、羽琉を求めるんだって思ってた。
だけど、そうじゃなかった。
琉生を拒絶してでも羽琉に抱かれたくなるのは、彼とのセックスが良すぎるからだ。
いつもこうしてほしいと思ったところに触れて、夢中になるくらいに感じさせられる。
「ほんとエロ。紗奈のそういうとこ、すげえ好き」
たったそれだけの言葉なのに、ドキンッ、と胸の高鳴りを覚えた。
その『好き』の言葉に特別な意味なんてないのに、つい反応してしまう。
「体だけ、でしょ?」
確認するように聞くと、羽琉ははっきりとしたことは言わずに笑うだけ。
それが問いかけに肯定しているようで、ほんの少しだけ胸が痛んだ。
そんな心情なんて知らないはずなのに、まるで見透かすような瞳を向けられる。
「紗奈はどう言ってほしい? 体だけじゃないって言えば満足する?」
「………」
「欲張りだね。兄貴と別れる気なんてないくせに俺も欲しがるんだ?」
「そういうわけじゃ、」
――違う、そのとおりだ。
琉生の気持ちが離れていくのに気付いていながら『好き』の言葉に縋って、無理やりに一緒にいる理由を作ってる。
本当のことを言うと、琉生を想う気持ちにも迷いが出ているのに。
それもこれも、羽琉のせい。
「紗奈にとって、俺はなに?」
なんでそんなこと聞くの。
体だけを最初に求めたのは羽琉のほうなのに、どうして勘違いするようなこと。
「そういう羽琉こそ、私のこと、本当はどう思ってるの?」
――体だけ、セフレ。
抱き合う理由がなくても抱き合うことができるなら、それでいい。
羽琉の腕の中でなら、〝女〟であることを思い出すことができる。
セックスして甘く淫らな声を上げて、これでもかと欲しがって。
たったそれだけでいい。
それが羽琉を求めてしまう理由、意味――そのはずだったのに。
「ずっと言ってるだろ、俺は紗奈を抱ければそれでいいんだよ」
そう言われて、胸の奥がツキンと痛んだのはきっと気のせい。
同じことを思ってるのに、なんでこんな気持ちになるんだろう。
「特別な感情なんて、紗奈も俺に求めてるわけじゃないだろ?」
「……そう、ね」
聞かれたことに頷いただけなのに、羽琉はほんの少しだけ寂しそうな顔を見せた。
こんな何気ない顔をして心を持っていこうとする羽琉は、どこまでもズルい。
「紗奈」
改まったように呼ぶ声はまっすぐで、見つめてくる瞳は透明で目が逸らせない。
そんな瞳で見られたら、特別な気持ちがあるんじゃないかって勘違いしてしまう。
いつも思わせぶりな態度や言葉で振り回すんだから。
琉生と付き合ってるのに、それを嫌だと思えない自分がひどく醜いような気がする。
「もし、俺が――」
羽琉はなにかを言おうとして、でも最後まで言い終える前に止めた。
その先の言葉を待ったけど、それが出てくることはなかった。
それどころか、「……やっぱいい」と言うのをやめた。
その後また唇を重ねられて、なにも言うことができなかった。
落ちてくるキスはいつも以上に優しくて、骨抜きにされるほど気持ちよく感じた。
羽琉、なにを言おうとしたの?
どんな気持ちで触れて、どんな気持ちでこんなに優しいキスをしてくるの?
聞きたいことはなにひとつ聞けず、紗奈はただキスを受け入れるだけだった。
「…っそ、れは…!」
「はは、俺の思惑どおりってわけだ。紗奈は、もう俺とのセックスなしじゃ生きていけなくなってんだよ」
羽琉の唇がまた降ってきて、その熱さに今にも溶けそうになる。
同じ家の中に琉生がいるのに、羽琉に触れてほしくてたまらない。
いつのまに、こんなに淫乱になったんだろう。
そんな自分に驚きながらも、羽琉が相手だとどうも抵抗できそうにない。
ソファの上に体を沈められ、あちこちに優しいキスが降ってくる。
額、頬、首筋、耳――そのたびに感じて、体が疼いて仕方ないなんて。
「は、る……だめ、変になる…っ」
琉生が抱いてくれないから、羽琉を求めるんだって思ってた。
だけど、そうじゃなかった。
琉生を拒絶してでも羽琉に抱かれたくなるのは、彼とのセックスが良すぎるからだ。
いつもこうしてほしいと思ったところに触れて、夢中になるくらいに感じさせられる。
「ほんとエロ。紗奈のそういうとこ、すげえ好き」
たったそれだけの言葉なのに、ドキンッ、と胸の高鳴りを覚えた。
その『好き』の言葉に特別な意味なんてないのに、つい反応してしまう。
「体だけ、でしょ?」
確認するように聞くと、羽琉ははっきりとしたことは言わずに笑うだけ。
それが問いかけに肯定しているようで、ほんの少しだけ胸が痛んだ。
そんな心情なんて知らないはずなのに、まるで見透かすような瞳を向けられる。
「紗奈はどう言ってほしい? 体だけじゃないって言えば満足する?」
「………」
「欲張りだね。兄貴と別れる気なんてないくせに俺も欲しがるんだ?」
「そういうわけじゃ、」
――違う、そのとおりだ。
琉生の気持ちが離れていくのに気付いていながら『好き』の言葉に縋って、無理やりに一緒にいる理由を作ってる。
本当のことを言うと、琉生を想う気持ちにも迷いが出ているのに。
それもこれも、羽琉のせい。
「紗奈にとって、俺はなに?」
なんでそんなこと聞くの。
体だけを最初に求めたのは羽琉のほうなのに、どうして勘違いするようなこと。
「そういう羽琉こそ、私のこと、本当はどう思ってるの?」
――体だけ、セフレ。
抱き合う理由がなくても抱き合うことができるなら、それでいい。
羽琉の腕の中でなら、〝女〟であることを思い出すことができる。
セックスして甘く淫らな声を上げて、これでもかと欲しがって。
たったそれだけでいい。
それが羽琉を求めてしまう理由、意味――そのはずだったのに。
「ずっと言ってるだろ、俺は紗奈を抱ければそれでいいんだよ」
そう言われて、胸の奥がツキンと痛んだのはきっと気のせい。
同じことを思ってるのに、なんでこんな気持ちになるんだろう。
「特別な感情なんて、紗奈も俺に求めてるわけじゃないだろ?」
「……そう、ね」
聞かれたことに頷いただけなのに、羽琉はほんの少しだけ寂しそうな顔を見せた。
こんな何気ない顔をして心を持っていこうとする羽琉は、どこまでもズルい。
「紗奈」
改まったように呼ぶ声はまっすぐで、見つめてくる瞳は透明で目が逸らせない。
そんな瞳で見られたら、特別な気持ちがあるんじゃないかって勘違いしてしまう。
いつも思わせぶりな態度や言葉で振り回すんだから。
琉生と付き合ってるのに、それを嫌だと思えない自分がひどく醜いような気がする。
「もし、俺が――」
羽琉はなにかを言おうとして、でも最後まで言い終える前に止めた。
その先の言葉を待ったけど、それが出てくることはなかった。
それどころか、「……やっぱいい」と言うのをやめた。
その後また唇を重ねられて、なにも言うことができなかった。
落ちてくるキスはいつも以上に優しくて、骨抜きにされるほど気持ちよく感じた。
羽琉、なにを言おうとしたの?
どんな気持ちで触れて、どんな気持ちでこんなに優しいキスをしてくるの?
聞きたいことはなにひとつ聞けず、紗奈はただキスを受け入れるだけだった。
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2025/10/21 和泉 花奈
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