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25. 王国錬金魔導師団登場
しおりを挟むマイケルとクレアの様子を見て、ロイド先生はため息を吐く。
「2人には個別に質問する事にしよう。入って来てくれ」
そう言って、徐に部屋の入り口を見る。
すると、王国錬金魔導師団の制服を着た数人の人たちが部屋に入ってきた。
「彼らは王国錬金魔導師団の者たちだ。この事件は特殊な魔導具を使用されたとして、彼らに調査を一任する事とした。学園内で解決するには、些か穏やかではないからね」
ロイド先生はそう言って、その中の責任者らしい男性に向かって話しかけた。
「よく来てくれたな、悪いが頼む」
「もちろんです」
その人はそう言って、そばに居た部下に、クレアとマイケルを連行していくように指示を出した。
「な、何故僕まで連れて行かれなければならないんだ! クレア! 何とか言え!!」
マイケルはそう叫ぶも、クレアは思い詰めた表情のまま返答しない。
そして、そのまま無言で連れていかれそうになっている。
「殿下! 助けてください! アリア! 君からも殿下に頼んでくれ!」
クレアとは違い、マイケルは連れられる際に往生際が悪く叫んでいた。
「殿下、マイケルが連れられて行ってしまうわ。どうしましょう?」
アリアは、オロオロとしながら、ウィリアム殿下とマイケルを交互に見ている。
「アリア、しばらくは様子を見よう。錬金魔導師団が出てくるとなると、これは僕たちの手に追える事ではないからな」
ウィリアム殿下はそう言って、アリアを宥めている。
「あとの者はおまかせしても?」
騎士団の責任者がロイド先生にそう言うと、ロイド先生も頷いた。
「あぁ、任せろ。後で聴取内容をそちらにも送る」
「了解致しました」
騎士団員の人は、そう返答した後、部屋を出た。
騎士団員たちがあの二人を連れて部屋から出た後、ロイド先生は残る私たちを見た。
「さて。これから君たち一人一人から事情を聞かせてもらう。申し訳ないが口裏を合わせる事が出来ないよう、この部屋に監視員としてほかの先生に来てもらうから、君たちは私が呼ぶまでここに待機だ」
そう言って、ロイド先生はほかの先生の協力を仰いだ。
ほかの先生が到着すると、まずはウィリアム殿下から一人ずつ錬金術研究室に呼ばれていく。
その後、ユリウス、ボルグ、アリアと呼ばれ、残るは私のみとなった。
「アリッサ・イグラール、待たせたな」
そう言って、ロイド先生は最後に私を研究室に呼び出した。
研究室に入ると、ロイド先生は眼鏡を外し、急にダラけたようにソファに座り込む。
「疲れた……。アリッサ~お前、とんでもないものを見つけやがって~」
恨みがましい目で私を見て、自分の横に座るように手招きした。
「お疲れ様です、ルーク様。王国錬金魔導師団長様として、しっかりと究明してくださいね」
私はルーク様の隣に座り、ニッコリと笑った。
「ああ。全く、学園で取り扱い注意の魔導具が使われるだなんて、最近の子供はなんて恐ろしいんだ……」
そう言って、ルーク様は頭を抱えている。
確かに、あの魔導具の取り扱いは制限されており、認められた一部の者しか持っていないはず。
管理不行き届きとして、その持ち主も厳しく罰せられるだろうし、ましてそれを無断で使用した彼女たちも同様に罰せられるだろう。
しかし、私はクレアがそれを使ってまでモニカ様を嵌めた理由が分からず、腑に落ちない。
どうもクレア自身が望んで使用したとも思えなかった。
「使用したクレア様はどうなるの?」
私の問いに、ルーク様は気怠げな様子で答える。
「未成年だからなぁ。使用した理由にもよるけれど、単に使用しただけでは、そこまで国としては重い罪を本人に課せることはしないと思う。だが……」
「だが?」
「あの娘は、あの魔導具で第三王子の婚約者であり、ベルモート公爵令嬢を嵌めようした。この行為については重く受け止められるだろうね」
あぁ、そうだよね。
単に特殊な魔導具の無断使用というだけの話ではない。それを使って誰を嵌めようとしたのか。それが大きな問題となるもの。
「何故あんな事をしたんだろ……」
同じクラスの人が向けるには、余りに酷い悪意。
モニカ様は大丈夫なのだろうかと心配になった。
「大丈夫だ。モニカ・ベルモート嬢はクラスメイトのルシル・アバンスと共にすでに帰っていったそうだ。お前が心配しなくてもいい」
そう言って、私の頭をガシガシと少し乱暴に撫でた。
「もう! ルーク様! 髪がボサボサになるでしょう!?」
私が文句を言うと、ルーク様は楽しそうに笑った。
「しかし、アリッサの作った認識阻害魔導具発見機は凄いな。私のこの眼鏡にも敏感に反応している。すぐに作動を止めなかったら、私の眼鏡も皆にバレるところだったな」
ルーク様は、今は作動していない発見機をじっくりと見ていた。
ルーク様の眼鏡も認識阻害魔導具だ。
しかも最新式の、完全に別の人間に見えるという優れもの。
これは何とルーク様が私の魔導具を元に改良したものだ。
私もまだそこまでの性能にたどり着けてなかったから、それを作り出した時には悔しく思ったものだ。
しかも私の学園入学に備えて、自分もここに入る目的の為に作り出したというから、その執念が怖い。
思わすジト目で見てしまうのはは仕方ないと思う。
「どうした? そんなに見つめて。改めて俺がいい男だと気付いたか?」
嬉しそうにそう笑うルーク様に、思わずため息が出る。
眼鏡を外したら、隠されていた素顔がさらけ出る。
目はブルーイエローの深く澄んだバイカラー色。鼻筋が通り、口角が少し上がった薄めの唇。顔が小さく、神が作り上げた最高級品の9等身。
確かに見た目は極上だ。
口を開かなければ……だけどね。
「ルーク様……。その眼鏡の魔導具、そんなに性能がいいのは何故です? 私が作るとそんなに性能が出ないんですけど……」
悔しく思いながら質問してみた。
すると、ルーク様はクスクス笑い出す。
「アリッサは魔導具の発明作りは天才だけど、細かい作業向きではないからね。未だに人口魔石を完璧に作れないだろう? 人には向き不向きがあるのさ」
くっ! 嫌なところを突いてくる。
確かに私は、魔鉱石に魔力を注入する作業で、色んなものが混じって注入し、純粋な属性魔石が作れない。
繊細な作業が苦手な私には、不向きな作業だ。
「とりあえず、結果をまた教えてね。魔導具の出処も知っておきたいし」
「ああ、わかり次第伝えるよ」
悔し紛れにそう言った私に、ルーク様は笑顔で返してくれる。
ルーク様のその言葉に安心し、私は研究室を後にした。
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