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26. 思いがけず
しおりを挟む一先ず一段落したので、安心して次の日も普通に学園に向かった。
学園に到着すると、昨日の件は他のクラスの生徒や、上級生などにも知れ渡っており、学園全体が騒がしい。
それに、私に向けられる視線もチラホラと感じてくる。
「何故わたしまで? この事件で私の名前があがる要素、あったかしら?」
不思議に思いながら教室に向かう。
教室に入ると、すぐさま私の姿を見つけてルシルが駆け寄ってきた。
「アリッサ! 昨日は大丈夫だった!?」
ルシルが心配そうに聞いてくる。
そういえばルシルには、先生を呼びに行ってもらっていたから、詳しい説明も出来ていなかったなと気付く。
「ええ、心配かけてごめんなさい。昨日はルシルが先生を呼んで来てくれたおかげで、早めに対処出来たわ。ありがとう」
「そんな事! まさか、学園内であんな珍しい魔導具が使われるなんてビックリしたわ! みんな、その話でもちきりよ」
「そうなのね。でも、これでモニカ様への疑いは晴れたと思うわ」
そう言ったところで、ちょうどモニカ様が私たちのところにやってきた。
「アリッサ、昨日は貴女のおかげで、わたくしへの疑いが晴れましたわ。貴方には感謝しなくてはならないわね。ありがとう」
そう言って、モニカ様は私に頭を下げる。
その様子を見た周りのみんなもビックリした。
身分はもちろんの事、気位の高いモニカ様が他者へ頭を下げるなんて、滅多にない。
ましてや同世代の、位の低い私に頭を下げるだなんて、想像もつかなかった。
「あ、頭を上げてください、モニカ様! わたくしが勝手にやった事なので、気になさらないでください!」
慌ててモニカ様に、そう言って頭を上げてもらう。
「いえ、でも本当に感謝していますの。貴女が証言者や魔導具を見つけて下さらなければ、結局はわたくしのせいになっていたと思いますもの」
モニカ様はそう言いながら、チラリとウィリアム殿下の席を見る。
ウィリアム殿下はまだ登園していないようだ。
しかし、確かにあの殿下の勢いなら、余程の事が無い限り、全てモニカ様のせいにしそうだった。
まるで全ての諸悪の根源は、モニカ様にあるといった感じで。
これもゲームの強制力のせいなのだろうか? それともただ単にウィリアム殿下がモニカ様を嫌っているからだろうか……。
「いえ、実はあの魔導具を使用していたかどうかは、一種の賭けだったのです。使用していたから上手く証明出来ましたが、そうでなかった場合はどうなっていたか……。行き当たりばったりで行動してはいけませんよね。少し軽率だったと反省していたくらいなんです」
そう言って、軽く笑った。
モニカ様も、少しは気持ちが軽くなったようで、笑顔を見せてくれる。
普段より表情がほとんど変わらないモニカ様の笑顔は、滅多に見られない。
今の笑顔も、見た者をハッとさせる程の美しさで、それを見た周りの生徒たちも、一瞬ポーっとする程だ。
そばに居たルシルも、そんなモニカ様に見蕩れていたが、ハッと気付いて私に詰め寄ってくる。
「あっ! そうよ! 魔導具! あの凄い魔導具はフレデリック様がお作りになったなんて、聞いてなかったわよアリッサ!」
そう言って、ルシルは怒っている。
「え? あれ? そうだっけ?」
「ええ! そんな大事な事、ちゃんと教えておいてほしかっわ! そうすればちゃんと口止めしたのに!」
「え? 口止め?」
ルシルが何を怒っているのか分からない私は、首を捻るばかりだ。
すると、ルシルは少し声を小さくして、言ってきた。
「今や、あの凄い魔導具を発明したフレデリック様は、みんなの憧れの的になっているのよ。フレデリック様に変な虫がついたらどうするの」
ルシルは拗ねた口調でそう言っている。
まさか、昨日の件で兄が注目されているだなんて、思いもしなかった。
話の流れ上、発明者に兄の名前を使ってしまった事を思い出す。
「え?……そんなに?」
「そうよ。あの後、フレデリック様の話で持ちきりだったわ」
まさか、事件の真相の件ではなく、魔導具の発明者の件で話が持ちきりになっていただなんて。
さすがは魔導具大国。出世コースまっしぐらの人間に、みんな敏感なのね。
だから朝から私への視線も多く感じたのか。
兄は結婚願望がなく、未だ独身だ。
王国錬金魔導師団に所属する兄には、毎回大量に釣書が届いていた。
その釣書を見て煩わしそうにしていたが、ようやく最近は減ってきて、ホッとしている様子だったのに……。
しかし今回の件で、また兄に大量の釣書が届く事になりそうだ。
また周囲が騒がしくなりそう。
ごめんね、お兄様。
私は心の中でソッと兄に謝罪した。
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