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33. 事件の真相③
しおりを挟むここで映像は止まった。
誰もが殿下とボルグを冷ややかに見ている。
皆の視線が殿下とボルグに注ぎ、ふたりは視線の冷たさにゾッとした。
「し、知らない……。僕はそんな事、知らない! お前らも言っていたじゃないか! ベルモートがやったと! ベルモートが言っていたって! なのに、何故そんな目で見るんだ!」
我慢出来ずにウィリアム殿下が叫ぶ。
それに連ねるようにボルグも言った。
「そ、そうだよ! 俺たちは間違ってない! この映像に映っていた奴らが悪いんじゃないか! こいつらがあの女のせいにしてアリアを虐めていたのが悪いんだろ! 何故俺たちが責められなきゃならない!」
その言葉に俯く者、目を逸らす者など様々だ。
当事者ではないものの、その言葉に安易に同調していた者なども、居心地の悪さを感じてソワソワしている。
私は、殿下達を見たあと、会場にいる他の生徒達を見渡した。
「確かに一番の原因は、なんでもすぐにモニカ様のせいだと決めつける殿下達が悪いのでしょうね。発言力の強い殿下が言えば、そうなのかと思ってしまう。たとえ違うと思っても、王族である殿下の言葉を否定することは難しい。だからこそ、力のある方にはその発言力の重さと責任を感じてほしいところです」
私の言葉に、殿下は顔を背けたまま何も言葉を発しない。
そして私は今度は他の生徒たちに向けて言葉を紡いた。
「その一方で、ここにいる人達の中に、心当たりのある人が何人もいる事でしょう。自分達は疑われる事がなく安全だからと、自分達のやった事を全てモニカ様に押し付けて、笑っている。みんなやっているから。こんな事くらい。そんな安易な気持ちで平然とモニカ様を傷つけている」
私の言葉に、気まずい表情をする者もいれば、睨みつけている者もいる。
「その小さな悪意は、やがて大きな束となります。集団心理の恐ろしさで、嘘をねじ曲げて真実とするくらいにまで育っていったのです。もうこうなってしまえば、モニカ様がいくら否定しても、誰の耳にも届かない。自分達がやった事さえ忘れて、モニカ様がやったような気分になった人もいるのではないですか?」
講堂の中は静まり返り、私の言葉だけがこだまする。
この中で、どれだけの人に私の言葉が胸に響いてくれただろう。
「殿下、改めて問います。あなた様は何故、いつもモニカ様の仕業だと決めつけておられたのでしょうか?」
私の問いに、殿下の肩がぴくりと動く。私に視線を合わせないまま、口を開こうとするもまた閉じてしまうの繰り返しだ。
そして、ようやく私に向き直ると、睨みながら言葉を発した。
「だいたい、この映像はなんだ! こんなもの、今まで見た事がない! これらはお前が捏造したものではないのか!? これが証拠になるわけがない! 試験的なものだとさっきロイド先生が言っていたではないか! これらが真実である証拠はあるのか!?」
あくまで自らの非を認めようとしないウィリアム殿下に、私は失望した。
こんな人がモニカ様の婚約者だなんて、私は絶対に認めたくない。
こんな人が王族を名乗り、好き勝手に人を傷つけている事に苛立ちが止まらなかった。
私は殿下に応戦しようと口を開きかけたが、隣にいるロイド先生に止められる。
思わずロイド先生を睨むと、ロイド先生は壇下を指さした。
そこに、今まで姿の見えなかったユリウスが、壇下の裾から姿を現した。
ユリウスは真っ直ぐに殿下の前まで歩いて行くと、真剣な表情で殿下を見た。
「殿下、もうやめましょう。そして僕たちの非を認めましょう。僕たちは今まで、何の疑問も持たないまま、悪意ある行動は全てベルモート嬢のせいだと決めつけていました。そこに根拠など全くないのに……」
「ユリウス……! 何故来た!?」
殿下が驚きとともにユリウスを見る。
今回、この騒動を起こすうえで、ユリウスは加担するのを拒んだ。
ならばせめて邪魔をするなと、ウィリアム殿下はユリウスに、卒業式には参加するなと命令していたのだ。
「まさかお前がこいつらにバラしたのか!? この裏切り者めがっ!」
そう言ってボルグが飛び掛ろうとするが、拘束中にて、すぐに押さえつけられる。
「いや、僕は言ってない。だけど、彼女たちはすでに知っていた。そして証言を求められたんだ」
「証言?」
ユリウスの言葉に、ウィリアム殿下は訝しげに問うた。
「はい。これまでのベルモート嬢への無礼の数々。それらを証言する為に、僕はここに来ました」
「お前は今日は来るなと命令したはずだ! この僕の命令を無視してこいつらの為に来たと言うのか!?」
ウィリアム殿下は睨め付けながら、ユリウスに叫ぶ。
「申し訳ございません。陛下には殿下のお言葉を伝えた上で、証言と謝罪の為にここに来る事の許可を頂きました」
ユリウスはそう言ってウィリアム殿下に頭を下げた。
そして、今度はモニカ様に向かって頭を下げる。
「モニカ・ベルモート公爵令嬢。僕たちは、真偽を確かめせず、アリアに対する全ての悪意は、ウィリアム殿下に対する嫉妬からだと決めつけておりました。そこに、ウィリアム殿下の婚約者である貴女への配慮など一切気にせずに。本来ならば、殿下の側近である私が殿下の行動を諌めないといけない立場であったのに、一緒になって婚約者ではない女性を殿下に近づける手伝いまでしてしまった。改めて謝罪させて頂きます。今までの非礼の数々、本当に申し訳ございませんでした」
そう言ってユリウスは、モニカ様に頭を深々と下げて謝罪した。
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