【完結】うちの悪役令嬢はヒロインよりも愛らしい

らんか

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32. 事件の真相②

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 殿下はモニカ様に謝罪しなければならないはずだ。
 殿下を見据えて、私は改めて殿下に問う。
「殿下? 何か言う事があるはずですが?」
 私のその言葉に、ウィリアム殿下は下唇を噛み締め、小刻みに身体を震わす。
 そして、思い切ったようにモニカ様の方を向いた。

「お、お前! 何故あの時階段をすぐに降りずに戻って行ったんだ!」

 え? そこ? 謝罪じゃなくて?

 私はウィリアム殿下の発言に力が抜けそうになる。
 モニカ様も、まさかそんな事を聞かれるとは思っていなかったようで、素でキョトンとした顔をした。

「え? あの時は、教室に忘れ物をしたのを思い出して、取りに戻っただけですが……」

 まぁ、そうよね。
 戻るなんて、たいがい忘れ物くらいだと思うもの。
 モニカ様の発言に、周りの皆も納得顔だ。
 殿下も、それ以上問いただすことが出来ず、俯いている。

 え? それでおしまいなの?
 何故それを聞いた?

「殿下?」
 声をかけて、殿下の言葉を促してみた。

「以上だ!」
 殿下はその言葉を最後にそっぽ向く。

 は? 嘘でしょう?

 余りの態度に、この後どう対処していいのか分からなくなり、私は思わず両陛下に視線を向けた。
 王妃様は両手で顔を覆い、もはや顔を上げられないとばかりに下を向いている。
 陛下は、口を開けたまま放心していた。

 あ……。駄目だ。
 ふたりとも現実逃避してるわ。
 
 他に救いを求めて、私は隣で待機しているルーク様(ロイド先生)を見る。
 ルーク様は、二の句が告げずに困っている私の姿が笑いのツボだったようで、下を向いてお腹を押さえ、震えながら声を出さずに笑っていた。
 この……! どうしてくれよう!

 そう思った時、拘束されているもう一人の方、ボルグが声を上げた。

「階段の件は違ったとしても、アリアの教科書が破られたり、物が壊されたり隠されたりしてたんだ! それについては皆、モニカ・ベルモートがやったと言っていたぞ!」

 言ってやったとばかりに、鼻息荒くボルグは叫んできた。
 おお~! さすがは脳筋!
 この雰囲気の中で、その発言が出来るとは!

 私は軌道修正出来たことに安心し、脳筋にある意味感謝した。

「そうですね。何故それらの事が全てモニカ様のせいになっているのかわたくしも疑問でした。ですので色々な場面を探し出し、検証したのです」

 そう言って、違う場面の映像を映し出す。一年のゴールドクラス。つまり、私たちのクラスの中が映像に映った。

 そこに映し出されたのは三人の女生徒たち。一応モザイクをかけてある。
 全校生徒に顔を晒して吊し上げたいわけではないし、数も多い。むやみに殿下たちに敵意を向けられるのも本意ではないしね。
 あとでこの人たちには、個人的に学園側から注意してもらうつもりだ。
 そして、映像の画面からは女生徒たちの声が聞こえてきた。

「今、誰も来ないでしょうね?」
「大丈夫よ。みんな移動教室の方に行ったわ」
「早くしないと、わたくし達も遅刻しちゃうわよ!」
「アリアの席はここね! さぁ、さっさとやってしまいましょう!」
 その言葉と共に、アリアの机の中から教科書類を出し、ビリビリに破いていく。

「あー、少しはスっとしたわ!」
「ホントね! あの子ったら、わたくし達の婚約者にも色目使って話かけてるんですもの!」
「そうそう! さりげないボディタッチも多いし!」
「どうせこんなに破いても、すぐに殿下たちが買い揃えてあげるんだから、これくらい、いいですわよね!」
 こんな感じで、この女生徒たちはアリアを悪し様に罵りながら、教科書類を破いていた。
 そして、ふと、ひとりの女生徒が言葉をこぼす。
「これだけわたくし達がやっても、殿下たちはすぐに、モニカ様の仕業だと決めつけるんですもの。モニカ様もお気の毒よね」
「ほんとよね。アリアへの嫌がらせは、全てモニカ様の仕業になっているですもの。モニカ様の存在って、私たちにとってはありがたいわよね」
「おかげで、わたくし達は安心してアリアへの憂さ晴らしが出来ますものね」
「あっ! もうこんな時間だわ! 早く行かないと遅刻してしまいますわよ!」
 そこから三人の女生徒たちは、慌てて教室を後にした。

 この映像はここで止まる。
 そしてまた、別の映像が始まると、今度は別の女生徒たちが、アリアに対する誹謗中傷を周りに伝えていた。
 この時も、見つかった時に「モニカ様から聞いた」と言えば、すぐに殿下たちは信じてくれると笑い合っている。
 こんな感じで、他の映像をみても、殿下たちがすぐにモニカ様の仕業だと決めつけるから、大丈夫などという発言があちらこちらから聞こえてきた。

 数件の映像が止まる頃、大講堂の中はとても静まり返っていた。
 誰もが心の中に芽生えた罪悪感、いたたまれなさ、同情心。
 これらの感情が混ざり合い、そして、その原因となった殿下やボルグを冷ややかな視線で見つめる。
 そんな中、殿下とボルグは背筋に冷たい何かが走った気がした。
 
 
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