【完結】硬派な殿下は婚約者が気になって仕方がない

らんか

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9.異母兄

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 イアンが謁見室に入ると、そこには既に陛下を始め、王妃や王太子、宰相や騎士団長や数名の大臣らが集まっていた。
 
 
「失礼します。遅くなりました」
 
 
 イアンが陛下にそう告げると、陛下は
「よい。婚約者とのお茶会の最中であったと聞いている。呼び出して悪かった」
 と返答された。
 
 
「いえ、問題ございません。
 ところで、何かあったのでしょうか?」
 
 
 イアンがそう質問すると、
「私から説明致しましょう」
 と、騎士団長が名乗り出た。
 
 
「王国の南地区にあるパルバット山脈の一体から、魔物の出没が激しくなってきたとの報告があったそうです。
 どうやら、大型の魔物の出現により、山脈の奥にいた魔物が町近くまで逃げてきていると予想されております」
 
 
 騎士団長の説明を受けて、宰相が続ける。
 
 
「本来であれば、その辺りを守っている辺境伯が指揮を取り、魔物討伐に向かうのですが、その辺境伯が魔物に襲われて大怪我を負ったとの事です。辺境伯を引き継がれる子息はまだ10歳と幼く、討伐隊の指揮が取れないとの事。
 騎士団長に行ってもらうと王宮の守りが手薄になってしまいますので、どうしたものかと皆で相談していたのです」
 
 
 宰相の説明にて、陛下が告げる。
 
 
「あそこの責任者は辺境伯だが、南地区全体の担当責任者は王太子である。
 よって、王太子が討伐隊の指揮をとって収めるのがスジなのだが……」
 
 
「何を仰いますの!? 経験の無い王太子が、そんな危険な所に向かうなど、万が一の事があればどう為さるおつもりなのですか!?」
 
 
 陛下の言葉を途中で遮るように、王妃が叫んだ。王妃は隣国の王女だったので、こちらに嫁いでからも何かと発言権が強い。
 
 
「王妃よ、ダミアンに経験を積ますのも、人の上に経つ上で必要な事だ。ダミアンはまだ何の功績も残しておらぬ。王太子だからとそのような事では、これから先どうするのだ」
 
 
 陛下が王妃にそう諭すが、王妃は頑なに拒否していた。
 
 
「経験がないからこそ、経験豊富な辺境伯でさえ大怪我を負うような危険なところには向かわせられないと申しているのです!」
 
 
 そう叫ぶ王妃をチラっと横目で見ながら、陛下は第一王子であり、王太子でもあるダミアンを見て尋ねる。
 
 
「ダミアンよ、お前はどう思う?
 討伐隊を率いる自信はあるか?」
 
 
 陛下にそう尋ねられたダミアンは、ビクッとなり、明らかにオロオロとした様子で
「え……わ、私は……」
 と言葉に詰まっている。
 
 
 ダミアンのその様子を見て、宰相や騎士団長、ほかの大臣らも残念なものを見る目で見ていた。
 
 
 王妃はその様子を見て、悔しげにイアンを見る。
 そして、陛下に進言した。
 
 
「陛下。王太子は総大将として全体の指揮を取る事とし、イアンに、兄である王太子に代わって討伐隊の指揮をとってもらいましょう。
 イアンの剣術の腕は騎士団長にも劣らないと聞いております。その上、魔法技術も優れているとの事。
 二人で力を合わせれば、さぞかし立派な功績を持ち帰ってくれることですわ」
 
 
 王妃の言葉に、大臣らはホッとしたようにその言葉に乗ってくる。
 
 
「それはいい! イアン殿下ならば必ずや魔物討伐をやり切ってくれるでしょう!」
 
「確かにイアン殿下の剣の腕は素晴らしいと聞いた事がある! 騎士団長にも劣らないとは、本当なのですか!?」
 
「ぜひ一度騎士団長との手合わせを見てみたいものですな!」
 
 
 大臣らがそう言って盛り上がりを見せている。それに満足した王妃が陛下に告げた。
 
 
「イアンならやり遂げてくれますわよ。あくまで王太子・・・の代わりに。
 兄弟二人で力わ合わせて解決すれば、王国内も最高に盛り上がりますわね?」
 
 
 そう言う王妃の言葉に、陛下は考え込む。
 
 何でもそつ無くこなすイアンに比べ、ダミアンへの支持率はあまり良くない。
 仮にも王太子がそれでは、これから先の王国も、陰りを見せてしまう。
 
 人気のあるイアンが、兄を盛り立てながら兄弟で討伐に参加し、国を守った事が国民に伝えられたら、それは王族にとって絶大な支持率となるだろう。
 
 
「イアンよ、ダミアンと共に現地に赴き、ダミアンの指示の元、討伐隊を率いてくれぬか?」
 
 
 陛下にそう尋ねられたイアンは、チラリと異母兄であるダミアンを見た。
 
 ダミアンは終始オドオドとしながら、母である王妃の顔色を窺っている。
 
 
「分かりました。兄上と共に現地に向かい、討伐隊を率いて必ずや魔物を収めてみせましょう」
 
 
 イアンの返答に、陛下は満足気に頷き、大臣らは歓喜する。
 その様子を宰相や騎士団長は、何か言いたげな様子で見ていた。
 
 
 
「ちゃんと王太子に敬意を払って動いてちょうだいね。王太子の御身に危険をもたらさないよう頼みましたよ」
 
 
 王妃はイアンにそう告げて席を立つ。
 
 
「御意」 
 
 
 イアンも短くそう返答し、未だに青い顔でオロオロしているダミアンに話しかける。
 
 
「兄上、よろしくお願いします」
 
 
「い、イアン……。私は指揮なんて自信が……」
 
 
 そう小さく返答するダミアンに、イアンは優しく告げる。
 
 
「兄上なら出来ますよ。危険に晒す事は絶対にしませんので、安心してください。
 総大将である兄上は、最後尾で、でんと構えてくれればいいのです」
 
 
 イアンの言葉に、ダミアンは不安そうな表情も弱い笑みを浮かべる。
 
 
 この第一王子であり、一年前に王太子に任命されたダミアンは、イアンの異母兄であり王妃の実子だ。歳はイアンより一つ年上の22歳。
 
 とても過保護に育てられているが、実際は王妃の威圧に晒され続けて、気弱な性格となってしまっていた。
 
 いつも自信無げにオドオドとし、戦いを好まない優しい人である異母兄をイアンはいつも心配していた。
 
 王妃に萎縮し、何も出来ない異母兄だが、本当のところは能力はそんなに悪くない。
 魔力も実はイアンよりも多いのだ。
 
 だが、本来の力が発揮出来ず、いつも自信無げに王妃に言うがままになっているダミアンに、今回王妃の目の届かない場所で、本来の力を少しでも発揮してもらいたいとイアンは考えていた。
 
 
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