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しおりを挟む「あっ!」
リーネがあっという間に店の奥に戻って行ったのを見て、思わずルイーゼが声を上げる。
きっと、まだまだリーネに絡みたかったであろうルイーゼは、不満気な表情でルークを見たが、ルークの冷ややかな目に、サッと目を逸らした。
「そう娘を虐めないでくれ、スノーメル小公爵殿。娘はこの店に来るのをとても楽しみにしていたんだ」
ルードグラセフ伯爵の言葉に、ルークはため息を零す。
「申し訳ありません。せっかく来て頂いたのに、このような雰囲気の中では買い物もしづらいのでは?
日を改めて来て頂いた方がよろしいかと」
ヘンリーがそう提案すると、ルイーゼが母親に泣きそうな表情で、母の腕を掴む。
「……あなた」
ナタリーに短く声をかけられたルードグラセフ伯爵は、気まずそうに眉間に皺を寄せながら、溜息を吐いた。
「先程は本当に申し訳なかった。
実は我々はこの店の商品の類似品を掴まされてしまってね。
知らずに学園で使っていた娘が、学園のクラスメイトに馬鹿にされたようなのだ。なので、正規品を買ってやらないと娘が学園に通えなくなる。
日を改めたいところだが、今日購入していきたい。いいだろうか?」
伯爵にそう言われて、ルークとヘンリーは顔を見合わせた。
****
「リーネ! 大丈夫!?」
店奥のスタッフルームに戻ったリーネに、私は駆け寄った。
「お嬢様……申し訳ございません。まさか、あの人達が店に来ていたとは思いもせず……」
「そんなの、仕方ない事だわ。誰も分からなかった事ですもの!」
「でも、あの人達は、私の所からお嬢様の情報を手に入れようとするかも知れません……。お嬢様にご迷惑をおかけする事になるかも」
そう言ってリーネは泣きそうな表情をしていた。
「大丈夫よ! 私はすでにあの家の人達とは関係ないもの! 例え私が元オリビア・ルードグラセフだとバレても、今の私はオリビア・モーリストなの。
あの人達にどうこう出来るわけないもの!
だから、心配しないで?」
私はそう言って、リーネを抱きしめる。
「昔から、リーネが傍に居てくれるだけで、私は安心するの。
だから余計な気を回して、私から離れようなんてしないでね」
「お嬢様……ありがとうございます」
リーネは抱きついている私の背中を、ポンポンと軽く叩きながら、私を宥めてくれる。
昔から、義母や義妹たちに嫌がらせを受けて陰で泣いていた時も、こうやってリーネは私を慰めてくれていた。
「なんだか恋人同士みたいだなぁ。
ルーク、お前のライバルはどうやらリーネのようだね」
いつの間にか、店から戻って来たヘンリーお義兄様とルーク様が、私達の後ろに立っており、この光景を見て、ヘンリーお義兄様が笑いながらルーク様にそう言っている。
「やめてくれ。リーネには勝てそうにない」
ルーク様も笑いながら、私達を見てそう言っている。
ラ、ラ、ライバルって……!
私のこと、からかってるだけよね?
も、もう! いつもルーク様は私を勘違いさせるような言動をされるから、変に意識してしまうわ!
落ち着いて、私!
私なんか、ルーク様のおメガネに叶うわけないもの。
そう考えながらも、私は恥ずかしくなって、慌ててリーネから離れた。
「あの人達はどうなりました?」
そして私は、あの後の事を見ていなかったので、あれからどうなったのか気になって聞いた。
「ああ……。商品を売りたくなかったから、丁重にお引き取り願おうとしたんだけど、よっぽどここの商品が欲しかったんだろうね。
あの後、とても低姿勢で購入したいと言ってきたから、一応は客として対応したよ」
ヘンリーお義兄様は飄々としながら、そう返答する。
「一年前に流行った品物を、とても人気のある品だと売りつけていたくせに」
ルーク様が呆れながらヘンリーお義兄様にそう言うと、
「定番の人気商品には間違いないだろ?」
と、ヘンリーお義兄様は平然と返答した。
二人のやり取りを聞いて、ほんわかとした気持ちになる。
さっさまではあんなに気持ちがざわめいていたのに……。
「しかし、あれほど必死で購入した品物も、実はオリビアが開発者だと知ったら、アイツら悔しがるだろうなぁ」
ヘンリーお義兄様の言葉に、ルーク様も頷きながら同意している。
「全てを兼ね添えてるオリビアの価値が分からないアイツらが悪い。
分かってから返せと言われても、絶対返さないけどね」
ルーク様のその言葉に、私は顔を真っ赤にして全力で抵抗を試みる。
「やめてください、ルーク様! 私はそんな風に言って貰えるような立派な人間ではありませんよ!?
ちょっ! 皆さんもなに、ニヤニヤしてるんですか!」
必死の私の叫びにも、ルーク様やリーネ、ヘンリーお義兄様までもが笑っていた。
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