【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

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王立学園編~前編

33.忍び込み作戦

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「というわけで、グレイ。今夜、アリアの部屋に忍び込むわよ」
 
 
 放課後、セリーヌと別れた後に私はグレイにそう告げた。
 
 
「は? 忍び込む? どうやって?」
 
 グレイは訝しげに私を見る。
 
 ふふふ。私が編み出した新たな想像魔法をお見せする時が来たようね。
 
 
「今から新しい魔法を見せるわね」
 
 そう言って、周りに誰もいない事を確認してから、私は想像魔法を使った。
 
 
「え? エマ?」
 
 
 グレイが周りをキョロキョロ見回している。
 
 そう。
 私が新たに作った魔法は、透明人間になれる魔法だ。
 
「グレイ。私はここに居るわ。動いていないわよ。魔法で消えて見せてるの」
 
 そう言ってから、魔法を解除する。
 
「ね? これならバレずに忍び込めるでしょ? グレイは元々消える事が出来るから、これで一緒に忍び込んで宝玉を取り返しに行けばいいのよ」
 
 
「……なんか、その想像魔法、何でもありだな。
 なんて魔法をディオーネ様はお前に授けたんだ……」
 
 
 確かに。
 困らない能力を授けるって言われたけど、まさかこんなチート魔法を授けてくれるとは思わなかった。
 ディオーネ様には本当に感謝しかないわ。
 
 
「悪い事には絶対に使わないわ。そんな使い方したら、ディオーネ様の信頼を無駄にするものね」
 
「まぁ、そうだな。悪事に使った時点でその能力は無くなりそうだしな」
 
 
 確かに!!
 うっかり者のラケシス様とは違って、しっかりしたディオーネ様なら、絶対にそうする気がするわ!
 
「ラケシス様の宝玉を取り戻す為の事だから、忍び込んでも悪事にはならないわよね?」
 
 ちょっと不安になってグレイに確認する。
 
「……大丈夫だと思う」
 
 グレイの返事にホッと息を吐く。
 
 改めて想像魔法の使い方に気をつけようと気を引き締めた。
 
 
 
 
 
 その日の夜、早々に自室に戻り、アリーには今日は特別疲れたからもう休むと伝えて、下がってもらう。
 
 アリーが部屋から出たのを確認し、すぐに透明魔法を展開して透明になった私は、屋敷の外で待機していたグレイと落ち合った。
 
 透明になった2人で、アリアの住んでいる教会に忍び込み、アリアの部屋を目指す。
 以前アリアの部屋に来た事があった為、容易にアリアの部屋に辿り着いた。
 
 
 (あ、グレイ。部屋の中にどうやって入ろう? 透明になったからって、すり抜ける事は出来ないのよね)
 
 念話でグレイにそう伝えると、グレイは無言のまま私の手をひいて、そのままドアを通り抜ける。
 
『俺と手を繋いだままにしておけば、俺の能力で一緒に通り抜けられる』
 
 そうグレイからの念話が返ってきた。
 
 
 流石は女神様の遣いの幻獣様。
 能力は人間より段違いだわ。
 
 
 部屋に入ると、アリアがいた。
 どうやら、アストナ先生から出された聖属性の宿題をしていたらしい。
 
『で、これからどうやって宝玉を取り戻すんだ?』
 
 グレイがそう聞いてくる。
 
 私はアリアの様子を見て、まだある事をしていないことにホッとしていた。
 
 (それはね……)
 
 私が計画を念話で話そうとした時、アリアの宿題が終わったようだ。
 
「あ~疲れた! 真面目に勉強するのも本当に疲れるわぁ! さて、ゆっくりお湯につかるとしますかぁ!」
 
 
 そう言って、バスルームに向かった。
 
 (待ってました!)
 
 
 私が念話でそう叫ぶと、グレイはまさかといった様子でこちらを見る。
 
 因みにお互い透明になってると見えなくて不便だから、お互いは見えるように魔法で調整してあるのだ。
 
 
『お前、まさか風呂に入っている隙に宝玉を取ろうとしてたのか!?』
 
 信じられないものを見るような目で見てくるグレイに、当然といった顔で頷いた。
 
 (流石にお風呂に入っている時は、脱衣室に宝玉を置いておくでしょ? 何で今まで思いつかなかったのか、今までの私を叱ってやりたい気分だわ)
 
 そう言って、グレイの手を引きながら脱衣室に向かおうとする。
 
『ちょっ! やめろ! 俺は行かないぞ! 女の入浴を覗く趣味はない!』
 
 (何言ってるのよ。入浴は覗かなくていいわよ。脱衣室から宝玉を持って帰るだけなんだから。グレイがいないとドアを通り抜けられないじゃない)
 
 
 呆れた様に言った私は、まだ抵抗するグレイの手を強く引きながら脱衣室に入る。
 
 
 脱ぎ散らかした服を見て、案外だらしないなと思いながら、宝玉の入った巾着袋を探す。
 
 (あ! あった!)
 
 巾着袋を見つけ、すぐに中身を確認するが、中に宝玉は入ってなかった。
 
 (え!? 宝玉がないわ!)
 
『よく捜せ! 俺は目を瞑っているから探せないんだ!』
 
 グレイは、紳士道を貫くつもりなのか、脱衣室に入ってから全く目を開けない。
 
 幻獣なんだから、人間の女の入浴くらいで何をそんなに動揺しているのかと、呆れてしまう。
 
 (何、呑気な事を言ってるのよ! 宝玉を見つけないとこの世界がなくなるのよ!)
 
 私がそうグレイに諭していると、バスルームの中からアリアの声が聞こえてきた。
 
 
「本当にこのラッキーアイテムのおかげよね。順調に婚約者候補になれたし、アストナ先生も私の味方になってくれた。
 あとは、オリバー様を私に振り向かせたら、ほぼ原作通りに進むんじゃない?」
 
 アリアがそう言っているのを聞き、アリアが前世の記憶を持っていることを確信した。
 
 
 私は嫌がるグレイの手を強く引きながら、バスルームに入る。
 グレイは激しく抵抗しているから、私だけがバスルームの扉をすり抜けて入る形となっているが、その時に見てしまった。
 
 
「女神様。お願いします。
 どうかオリバーの気持ちを私に振り向かせてください。
 どうか、あの小説と同じ運命を辿ることが出来ますように」
 
 
 そう言って宝玉を両手で祈るように握りしめ、一心にお願いしている姿を。
 
 そしてその願いを叶えるように、宝玉が黒く光る。
 
「あら? また大きくなった気がする? お願い事をする度に大きくなっていくわね?」
 
 
 その宝玉を目の前にかざす様に手で持ってアリアがそう呟く。
 
 
 その宝玉は前に見た時より更に濁った色になっており、ピンポン玉くらいの大きさになっていた。
 
 
 
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