【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

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王立学園編~前編

32.婚約者候補

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 次の日、学園に行くとオリバーが話し掛けてきた。
 
「エマ嬢、聞いたよ。アステル様の婚約者候補になったんだって? 
 ……俺は一足遅かったみたいだね。昨日俺の言った言葉は気にしなくていいから。
 ……おめでとう。これからはアステル様を支える者同士だ。改めてよろしくな」
 
 そう言って、残念そうな表情で離れていった。
 
 
「エマ!? どういう事!?」
 
 セリーヌがびっくりして問い詰めてくる。
 
『聞いてないぞ。何でそうなった?』
 
 グレイも念話を飛ばしながら私を見ている。
 
 私は、大きなため息を吐いた後、昨日の事を説明した。
 
 
 
「突然すぎよねぇ……。しかも王命だなんて……」
 
「第1王子はお前の事、嫌ってんじゃないのか? それでいいのか?」
 
 説明の後、セリーヌとグレイが私を気の毒そうに見る。
 
 
「いいも何も、私に選択肢なんてないじゃない! 王命なんだからっ!」
 
 キレ気味で返答するが、気を抜いたら泣きそうになる。
 
 3人で教室内でコソコソとその話しをしていたら、第1王子達がアリアと共に教室に入ってきた。
 
 
 他の生徒も何人かは既に知っているらしく、第1王子達と一緒にいるアリアと私を交互に見比べている。
 
 
 第1王子アステルが私に気付いて近づいてきた。
 
「おい」
 
「……」
 
 おい、ですって?
 何なの、こいつ。
 これの婚約者候補になるなんて、本当に泣けるわ。
 
「聞こえないのか! おい!」
 
「おい、とは誰の事でしょうか。わたくしはそのような名前ではありませんので、返答に困りますわ」
 
 ムカついて思わず言い返してしまう。
 
 
「相変わらず生意気な女だな! 僕にそんな口を聞いていいと思っているのか!?」
 
 アステルは睨みながら私にそう言った。
 
「生意気な女で申し訳ございません。第1王子殿下もこんな女が婚約者候補ではお嫌でございましょう? どうぞ陛下にそう進言して下さいませ」
 
「貴様! 王命に逆らうのか!?」
 
「まさか。わたくしはあくまで第1王子殿下の意志を尊重して申し出たまで。王命に逆らうなど全く考えておりませんわ」
 
 平然とした態度で、アステルにそう言っていると、セリーヌがこっそり囁いてくる。
 
「エマ、大丈夫ですの? 第1王子、かなりお怒りですわよ?」
 
「大丈夫ではないかも? でも後悔はしてないわ」
 
 私もコソッと返事をする。
 
 
「全く呆れる! こんな女が婚約者候補とはな!
 どうせお前は選ばれないんだ! 余計な事はするなよ! 特にアリアの邪魔をすると許さないからな!」

 そう叫んだ後、隣りの席で王子を冷たい目で見ているグレイに気づき、少し怯みながらアリアを連れて自席に戻っていった。
  

 全く朝からなんて日なの!?
 
 
 
 
 第1王子の婚約者候補が2人に絞られて決定した事は、その後すぐに学園中に知れ渡る事となった。
 そして、明らかに敗者はエマ・ベルイアである事も……。
 
 
「何で陛下は2人に婚約者候補を絞って決めたのかしら? はたから見たら、邪魔者は明らかに私よね?」
 
 お昼休憩にてグレイとセリーヌとで、喫茶室でお茶を飲んでいる時も、注目されている。
 
「まだアリア様が聖女と確定されていないから、万が一の為にでしょうね。アリア様のご実家は男爵家ですし、経済的にも権力的にも弱いですもの。
 その点、エマの家は侯爵家だし、鉱山を持つ領地で経済的にも豊かだし、ご祖父様は陛下からも一目置かれている、特殊属性の持ち主ですものね」
 
 
 セリーヌが好物のカッサータを幸せそうに食べながら、そう話す。
 
 その様子を恨めしげにジロリと見ると、私の視線に気付いたのか、急に神妙な顔つきになった。
 
「セリーヌ、急に真面目な顔してもダメよ。
 全く他人事だと思って!」
 
「ごめんなさい。美味しくて、つい顔が緩んでしまいましたの」
 
 ホホホと笑いながら食べ続けているセリーヌが羨ましい。
 私は全く食欲が湧かないわ。
 
「もう、さっさとアリア様を聖女に認定すればいいのに! そしたら高位貴族の後ろ盾など必要ないでしょう?」
 
 そういう私に、セリーヌはカッサータを食べ終えたようで、ようやく落ち着きながら話す。
 
 
「聖女認定するには、まだ聖属性の力が弱いみたいですわ。彼女、2属性でしょ? 
 どちらかと言うと、火属性の方が強いらしいですわよ。
 あ、でも最近はアストナ先生にマンツーマンで聖属性の指導を受けてるって聞きましたから、もしかしたら聖属性の力が上がって、聖女認定されるかもしれませんわね」
 
 
 アストナ先生……。
 そういえば、急にアリアと急接近したんだっけ。
 同時に私とは距離が出来てしまった。
 あんなに、親身になって色々と教えてもらっていたのが今となっては嘘のようだわ……
 
 少し寂しい気持ちになりながら、セリーヌが言った事を考える。
 
 
『宝玉を取り返せば強制力から逃れられるから、婚約者候補も外されるかも知れないぞ。
 このまま行けば原作どおり、アリアを陥れようとしたと濡れ衣を着せられて断罪、そして処刑だ。
 まぁ、その頃にはこの世界も終わるがな』
 
 そうグレイが念話で言ってくる。



 やはり早々に宝玉を取り返す必要があるようだ。
 この前は失敗したけど、次こそは何としてでも取り返してみせる!
 
 
 新たな想像魔法で取り返す方法を見つけた私は、即実践しようと考えていた。
 
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