【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

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王立学園編~後編

39.大会前の憂鬱

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 今日は魔法大会の第四回戦から始まる。
 
 私はE闘技場にグレイとセリーヌと一緒に向かっていた。
 
「あれ? セリーヌ。私の応援に来てていいの?
 毎年、婚約者のマイク様の応援に行っていたじゃない?」
 
 私の質問に、少し困った表情でセリーヌは私を見る。
 
 
「あぁ……。どうせマイク様はわたくしの応援など望んでいらっしゃらないのですもの。
 それに、昨日珍しくマイク様から連絡があったのだけど、エマの戦いの様子を聞かれましたの。
 わたくしがいくらエマが凄い能力を持っていて、どの対戦も一瞬で勝利したと説明しましても疑うばかりで……。
 少し疲れましたから、マイク様とは暫くお会いしたくありませんわね」
 
 セリーヌがここまで言うとは、余程昨日マイクが私の事を散々疑って、嫌な態度をとったのだろう。
 元々マイクはセリーヌを放置して、アリアにかまけてばかりだ。
 
 セリーヌとしても、マイクとの距離のとり方に悩んでいたからね。
 
 
「私の事でセリーヌが気まずい思いをしたみたいで、ごめんなさい。
 でも、セリーヌが私を信じて応援してくれている事が、私はとても心強いのよ?」
 
 セリーヌにそう伝えると、笑顔になってくれた。
 
「もちろんですわよ! わたくしは何があってもエマの味方ですからね!」
 
「ふふ、ありがとう」
 
 私たちの会話を聞いて、グレイも優しい顔を向けてくれている。
 
 うん、今日も頑張らないと!
 
 急に強さを発揮した私に向ける視線は、決して優しいものばかりではないけど、何もやましい事はしてない。
 
 堂々と戦って、目標の為に優勝しないとね!
 
 
 そう決意している所に、後ろから声がかかった。
 
 
 
「おい」
 
 
 ん? この呼び方、聞き覚えがあるわね。
 
 
 
「おい! 聞こえないのか!」
 
 その声にこっそりグレイが声を掛けてくる。
 
「また王子がお前を呼んでるみたいだぞ」
 
「名前を呼ばれるまで振り向く気はないわ。
 2人とも、無視してね」
 
 私は小声でそう返事する。
 
 
 私達が振り向かない事に苛立ったのか、アステルは大声で私の名前を呼んだ。
 
 
「エマ・ベルイヤ! 呼んでいるだろう!」
 
 
 その声に、はぁっとため息を零し、渋々振り向いて挨拶をする。
 
 
「これは第1王子殿下。昨日の対戦では見事勝ち進められたとか。おめでとうございます」
 
 そこには、アステルのみならずアリアやオリバー、マイクやレスター、アストナ先生まで居た。
 
 
「はっ! 貴様に祝われても嬉しくもないわ!
 そういうお前こそ、どういう手を使って第三回戦まで勝ってこれたんだ?
 どうせ裏で汚い手を使ったんだろう!」
 
 
 アステルがそう私に叫んでくる。
 
「汚い手とは? またそんな風に証拠もなしに決めつけて、大声でわたくしを恫喝されるのですか?
 それとも、対戦前にわたくしを精神的に追い詰めようと、わざと怯えさせようとされています?」
 
 
「なっ! なんて事を! 貴様は誰に向かってそんな口を!」
 

 今度はレスターが私に叫んできた。
 

「集団で1人の令嬢を脅そうとする行為は、卑劣な行為なのでは? そうですよね? アストナ先生?」
 
 
 グレイが私を背の後ろに隠しながら、以前の話を持ち出してそう言うと、アストナ先生は苦々しい表情になる。
 
 
「やめたまえ。アステル王子、レスター。
 エマ嬢の戦いを見れば分かる事だ。その時に不審な行動があれば改めて問いただせばいい。
 今はその時ではない」
 
 アストナ先生にそう言われ、2人は引き下がる。
 しかし、アステル達はまだ私を睨みつけていた。
 
 
 
「……では、失礼しますわ」
 
 
 私達は、その場から離れ、早々にE闘技場に向かった。
 
 
 
 
「エマ、大丈夫ですの?」
 
 セリーヌが心配そうに私を見る。
 
「大丈夫よ。もう慣れっこだわ」
 
 私は無理に笑顔を作って、返答した。
 
 
 でも、やはりショックだった。
 アストナ先生まで、あの集団の中にいた。
 あの、正義感の強いオリバーも何も言わなかったが、私に疑惑の目を向けていた。
 
 アリアの部屋に入った時、宝玉にアリアはオリバーの事を祈っていた。
 
 あのオリバーの態度は宝玉の力のせいだろうと思うが、それでもやはりショックだ。
 
 
 そう考えていると、急に背中をポンポンと宥めるように軽く叩かれる。
 
 
 私を慰めてくれているのだろう。
 隣りを見ると、グレイが前を向きながらも私の背中に手を添えてくれていた。
 
 
「ありがとう、グレイ」
 
「ん」
 
 
 私の言葉に、グレイは短く返答する。
 
 
 そうね。
 私にはちゃんと信じてくれる仲間がいるもの。
 
 
 あの人達が舌を巻くくらい、実力で勝ち抜いていくわ!
 誰にも何も言わせないくらい、堂々と実力でね!
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