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王立学園編~後編
41.魔法大会⑥
しおりを挟むいよいよ第五戦目の開始だ。
私の相手は、クラスは違うが火属性の同じ4年生の男子生徒。
対戦始まりの笛がなり、試合開始となる。
「ファイアボール!」
すぐさま男子生徒が火炎弾を連続で放ち、私の周りが火に囲まれた。
すぐに空間魔法を展開し、炎の広がっている場所の空気を遮断し、火を消し止める。
そして今度は光球を一気に10個生成し、相手の方に飛ばした。
光球は相手の周りで爆発を起こす。
ちゃんと直接当たらないように調節をしていたため、相手は酷い深手は負ってないようだ。
男子生徒はすぐに立ち上がり、体勢を整える。
「ファイアアロー!」
男子生徒がそう叫ぶと、私の周りに炎の矢が何本も飛んできた。
すぐにシールドを張り、炎の矢をはね返す。
私は相手に向かって掌をかざし、光のエネルギーを凝縮したレーザーのようなものを放出した。
これにより、相手の肩にそのエネルギーが直撃して倒れる。
男子生徒は戦闘不可能となり、五回戦目も勝利した。
E闘技場から、私の他にもう1人特設闘技場に参加するのは、酸性雨を降らした水属性の2年生の女子生徒であった。
しばらくすると、他の闘技場も上位2名が決定したようだ。
小休憩を挟み、今後は特設闘技場にて試合をする案内のアナウンスが流れる。
私と2年生の女子生徒も特設闘技場に向かうよう指示され、特設闘技場に向かった。
向かう途中でセリーヌが私に走り寄って来た。
「エマ! 第六回戦進出、おめでとう!」
「ありがとう、セリーヌ」
「まずまずの戦いだな。まぁ、こんな所で苦戦していたら優勝なんて到底無理だからな」
後からのんびりとやって来たグレイがそう言って、私に飲み物を渡してくれる。
「ありがとう、グレイ」
「ん」
グレイは短い返事だが、満更でもない顔をしている。
「初参戦で、ここまで来ること自体、凄いことですのよ! 誇っていいですわよ、エマ!」
セリーヌがそう言ったがあと、溜息を吐く。
「ん? どうしたの? セリーヌ」
「あ、なんでもないですわよ」
「何でもない顔してないわよ?」
「ん~……。
先程、マイク様の所も応援に行きましたの。
でも、お前はエマの試合で変なところはないか見ておけって言われて……。
いくらエマの実力だと言っても聞き入れて下さらないばかりか、友達であるエマを監視しろだなんて言われましたの。
もう、マイク様の事、どう関わっていけばいいのか分からなくなりましたわ」
セリーヌは悲しげな表情でそう語る。
マイクは私の監視をセリーヌにさせようとしたそうだ。
よりによって親友と言っても過言でないセリーヌを使うだなんて!
「私は、正々堂々と試合に勝って、あの王子の婚約者候補を外してもらうよう頑張るわ。
セリーヌも、自分がどうしたいか、ちゃんと考えてみて」
そう言った私を見て、セリーヌは考え込む。
「エマは本当に強いですわ。もちろん戦いにおいてもですが、主に心が。
……わたくしも強くなれるかしら……」
「私はセリーヌを応援するし、何か手伝える事があればもちろん協力するわ」
「……そうですわね、エマの協力があれば何でも出来そう。
わたくしがどうしたいのか、真剣に考えてみますわ」
セリーヌの言葉に私は力強く頷く。
大切なセリーヌには、幸せになってもらいたいもの。
信頼関係も築けない相手といたって、不幸になるばかりだ。
私達の会話を聞きながら、グレイは小声で
「やっぱり人間は大変だな……」
と、呟いていたが、私達には聞こえなかった。
第六回戦に出場するのは各闘技場で勝ち抜いてきた10名の選手達だ。
もちろん第1王子のアステルや、アリア、マイク、オリバー、レスターも勝ち上がってきていた。
特設闘技場に着いた私に、早々にアステル達が話しかけてくる。
「どんな手を使ったのか知らんが、よくここまで勝ち上がってきたものだ」
アステルの言葉に軽く会釈してやり過ごそうとしたが、今度はレスターやマイクが食ってかかってくる。
「逃げるのか? 汚い手を追求されると困るからなぁ?」
「近くでじっくりと見ているから、ズルは通用すると思わないほうがいいですよ」
レスターとマイクの挑発に、少し苛立つも相手にはしない。
私が何も言わない事に苛立ったのか、アステルが私に近寄ってきて、剣を突きつけた。
「お前を正々堂々と叩きのめせしてやる」
グレイが私を自分の方に引き寄せ、冷めた目でアステルを見据える。
「正々堂々? 無抵抗な女性に剣を突きつけておいて? これが一国の王子のする事ですか?」
私を庇うグレイに、目で大丈夫と訴えてから、しっかりとアステルの目を見据え、口を開く。
「ええ、わたくしも名誉にかけて、正々堂々と闘いますわ」
私の言葉に憎々しげに睨みつけた後、アリア達に「行くぞ」と告げて去っていった。
「あ、アステル様、お待ちください」
アリアはこちらを訝しげに見ながらも、慌ててアステル達を追いかけた。
「あいつらは本当に学習しないな。しかも女ひとりに剣まで突き付けるなんて」
グレイは呆れたように言う。
「何を呑気な! エマ、大丈夫ですの!? 第1王子のあのやり方は横暴ですわよ! やりすぎですわ!」
「そうね。このお礼は対戦で堂々と返さないといけないわよね」
セリーヌとグレイに悪い笑みを向けながらそう言う。
「だな」
「それがいいですわね」
2人も同じような笑顔で頷いた。
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