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「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢! お前との婚約は破棄とする! お前のようなオトコ女とは結婚出来ない!」
婚約者のダラオが、か弱そうな例の男爵令嬢を左腕で抱き寄せ、「リセラ、怯えなくていい。私が君を守るからね」と慈しむように見つめたあと、ミーシャを睨みながら学園の大勢の生徒が休憩している中央テラスの中で叫んだ。
お互い進級し2年生となり、交流が途絶えてから更に半年経った夏のある日。久しぶりに顔を合わせた婚約者の暴挙に、思わず「はぁ……」とため息混じりの令嬢らしからぬ返事をしてしまったが、同時に〈あ、これオープニングだ〉と頭にその言葉が浮かんだ。
そのまま流れるように前世の自分は日本という国で生まれて、学校卒業後は会社に勤め、ワーカーホリックで過労死した事を思い出した。しかもここは、私を心配した妹に、気分転換に勧められて始めた乙女ゲームの世界であり、自分はオープニングにだけ登場するモブ令嬢であると認識した。
(急に思い出したのに、こんな落ち着いてる自分にびっくりだわ。しかもこの状況でも、あんまりショックじゃない。私、この人の事をあまり好きじゃなかったのね。まぁ、いっか。前世でも結婚願望なかったし。もともと両親もこの婚約に乗り気じゃなかったし、ラッキーじゃない。領地に戻ったらお父様に泣きついて、独身のまま領地の隅にでも住まわせてもらおう。魔物討伐に人手がいるから、手伝いながらひっそりと暮らしていけるよね。
そうだ! あのヒロインはリセラって名前だったわ。あら? この半年後にメインの第二王子に婚約者の公爵令嬢も婚約破棄の断罪をされるんだけっけ。私はこの後出番ないから卒業まで傍観してていいのよね? 間近で乙女ゲームを見て楽しめるのって、得した気分?)
そんな事を考えていると、何を勘違いしたのか得意な顔でダラオが「ショックで返事も出来ないのか? でも、これは決定事項だからな!」とニヤニヤした表情で告げた。
「いえ、そのお申し出、私個人としては謹んでお受け致します。ですが、これは国が決めた政略結婚ですので、そちらのご両親とうちの両親にもちゃんと話を通して下さいませね」
にっこりと微笑みながら返答すると、顔を真っ赤にして怒りながらダラオは
「言われなくともそのつもりだ! そういう可愛げのないところが前から嫌だったのだ! リセラのような 慎ましやかな可憐な女性とは比べものにもならない!」と捨て台詞を吐きながら、リセラと共にテラスを後にした。
「ミーシャ! 大丈夫? ホントにあの男は見る目がないわよ! あの男にミーシャは勿体ないわ!」とティナが駆け付けて慰めてくれた。
「大丈夫よ。でも、この事を早く両親に伝えたいから、今日はもう帰るわね」
ミーシャは学園に早退することを申し入れ、迎えの馬車を呼び、王都にあるタウンハウスに早々に帰った。
婚約者のダラオが、か弱そうな例の男爵令嬢を左腕で抱き寄せ、「リセラ、怯えなくていい。私が君を守るからね」と慈しむように見つめたあと、ミーシャを睨みながら学園の大勢の生徒が休憩している中央テラスの中で叫んだ。
お互い進級し2年生となり、交流が途絶えてから更に半年経った夏のある日。久しぶりに顔を合わせた婚約者の暴挙に、思わず「はぁ……」とため息混じりの令嬢らしからぬ返事をしてしまったが、同時に〈あ、これオープニングだ〉と頭にその言葉が浮かんだ。
そのまま流れるように前世の自分は日本という国で生まれて、学校卒業後は会社に勤め、ワーカーホリックで過労死した事を思い出した。しかもここは、私を心配した妹に、気分転換に勧められて始めた乙女ゲームの世界であり、自分はオープニングにだけ登場するモブ令嬢であると認識した。
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そうだ! あのヒロインはリセラって名前だったわ。あら? この半年後にメインの第二王子に婚約者の公爵令嬢も婚約破棄の断罪をされるんだけっけ。私はこの後出番ないから卒業まで傍観してていいのよね? 間近で乙女ゲームを見て楽しめるのって、得した気分?)
そんな事を考えていると、何を勘違いしたのか得意な顔でダラオが「ショックで返事も出来ないのか? でも、これは決定事項だからな!」とニヤニヤした表情で告げた。
「いえ、そのお申し出、私個人としては謹んでお受け致します。ですが、これは国が決めた政略結婚ですので、そちらのご両親とうちの両親にもちゃんと話を通して下さいませね」
にっこりと微笑みながら返答すると、顔を真っ赤にして怒りながらダラオは
「言われなくともそのつもりだ! そういう可愛げのないところが前から嫌だったのだ! リセラのような 慎ましやかな可憐な女性とは比べものにもならない!」と捨て台詞を吐きながら、リセラと共にテラスを後にした。
「ミーシャ! 大丈夫? ホントにあの男は見る目がないわよ! あの男にミーシャは勿体ないわ!」とティナが駆け付けて慰めてくれた。
「大丈夫よ。でも、この事を早く両親に伝えたいから、今日はもう帰るわね」
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