7 / 43
7
しおりを挟む
「私は魔力過多症を患っています。幼き頃は身体の中の魔力を上手く循環する事が出来ず、何度も死にかけました。運良く今まで生きながらえ、こっそり冒険者を装いながら魔物討伐で身体の中の溢れた魔力を放出しながら現行を保ってます。
しかし、放出しても年々身体の中で暴れだす魔力が抑えきれず、いつ魔力暴発を起こし死に至るか分からない状態になっているところに、モーニュ草で作る薬が魔力過多症にも有効だという話を聞きました。
だかモーニュ草はなかなか手に入らず。
ここの魔の森で見かけたことがあるという冒険者の話を頼りに採りに来たところ、探し出せず魔物に追われてしまい、そこをラバンティ辺境伯令嬢に助けて頂いたというわけです。」
我が家の応接室にて、父であるユクラディアス、母レイラ、兄ダンテ、ミーシャ、第一王子のシオンライド、ユージュラスは応接セットのソファに座り、家令のセバスのみドア近くに控えていた。
丁寧な物腰で自らの事を説明し、モーニュ草の必要性を示してくれたシオンライド第一王子は、改めてモーニュ草を分けてほしいことを伝えてきた。
(うーん、確かこの隠れキャラって、ヒロインが第二王子を攻略した後に王宮に入って、そこで離宮で今にも魔力過多で暴発しそうな第一王子を見つけて聖なる力で治すって設定じゃなかったっけ?
おそらくモーニュ草が手に入らなかったんだろう設定なのに、今ここで渡しちゃっていいのかな? いや、あるのに渡さないなんて、そんな不敬は許されないし、苦しみは少しでも早く取り除いてあげたいって思うけどさ)
一人悶々と考え込んでいたミーシャに父は「どうしたミーシャ? モーニュ草、今は育ってないのか?」と声をかけてきた。
扱いにくい魔の森の植物は、実はミーシャ一人で管理している。下手に瘴気を吸ってはすぐに内臓がやられ、最悪死に至らしめるのだ。
しかし、ミーシャはどういうわけか瘴気に当てられても全くの健康体。魔族か⁉︎ って小さい時には兄によく揶揄われたけど、すぐに反撃してやった。
というわけで、魔の森の温室内になんの植物が育ってるのかはミーシャしか知らない。
よく分からないものを育ててるのに、この両親も兄も全く動じておらず、辺境伯邸の使用人や騎士団員、領民ですら文句を言わない。みんなミーシャを心から信じてる証拠であり、その信頼を裏切らないようにミーシャもみんなの気持ちに応えてきたつもりだ。
「ありますよ。モーニュ草。もちろんお分けいたします。ただ扱いが難しいので、専門の薬師の方にすぐに渡して薬の生成に取り掛かって貰わないと枯れて効果がなくなります。また、モーニュ草からも微量の瘴気を発していますので、専門家に渡すまでは専用の包みからは決して出さないようお気をつけ下さい。」
本当はミーシャも薬の生成は錬金術で出来るのだが、これは家族内での秘密であり、いくら王子といえど簡単に言うわけにはいかない。
(へたに色んな加護持ちやらスキルがある事を知られたら、今度は王家自身から取り込まれかねないものね。私はあくまでモブに徹するわ)
しかし、放出しても年々身体の中で暴れだす魔力が抑えきれず、いつ魔力暴発を起こし死に至るか分からない状態になっているところに、モーニュ草で作る薬が魔力過多症にも有効だという話を聞きました。
だかモーニュ草はなかなか手に入らず。
ここの魔の森で見かけたことがあるという冒険者の話を頼りに採りに来たところ、探し出せず魔物に追われてしまい、そこをラバンティ辺境伯令嬢に助けて頂いたというわけです。」
我が家の応接室にて、父であるユクラディアス、母レイラ、兄ダンテ、ミーシャ、第一王子のシオンライド、ユージュラスは応接セットのソファに座り、家令のセバスのみドア近くに控えていた。
丁寧な物腰で自らの事を説明し、モーニュ草の必要性を示してくれたシオンライド第一王子は、改めてモーニュ草を分けてほしいことを伝えてきた。
(うーん、確かこの隠れキャラって、ヒロインが第二王子を攻略した後に王宮に入って、そこで離宮で今にも魔力過多で暴発しそうな第一王子を見つけて聖なる力で治すって設定じゃなかったっけ?
おそらくモーニュ草が手に入らなかったんだろう設定なのに、今ここで渡しちゃっていいのかな? いや、あるのに渡さないなんて、そんな不敬は許されないし、苦しみは少しでも早く取り除いてあげたいって思うけどさ)
一人悶々と考え込んでいたミーシャに父は「どうしたミーシャ? モーニュ草、今は育ってないのか?」と声をかけてきた。
扱いにくい魔の森の植物は、実はミーシャ一人で管理している。下手に瘴気を吸ってはすぐに内臓がやられ、最悪死に至らしめるのだ。
しかし、ミーシャはどういうわけか瘴気に当てられても全くの健康体。魔族か⁉︎ って小さい時には兄によく揶揄われたけど、すぐに反撃してやった。
というわけで、魔の森の温室内になんの植物が育ってるのかはミーシャしか知らない。
よく分からないものを育ててるのに、この両親も兄も全く動じておらず、辺境伯邸の使用人や騎士団員、領民ですら文句を言わない。みんなミーシャを心から信じてる証拠であり、その信頼を裏切らないようにミーシャもみんなの気持ちに応えてきたつもりだ。
「ありますよ。モーニュ草。もちろんお分けいたします。ただ扱いが難しいので、専門の薬師の方にすぐに渡して薬の生成に取り掛かって貰わないと枯れて効果がなくなります。また、モーニュ草からも微量の瘴気を発していますので、専門家に渡すまでは専用の包みからは決して出さないようお気をつけ下さい。」
本当はミーシャも薬の生成は錬金術で出来るのだが、これは家族内での秘密であり、いくら王子といえど簡単に言うわけにはいかない。
(へたに色んな加護持ちやらスキルがある事を知られたら、今度は王家自身から取り込まれかねないものね。私はあくまでモブに徹するわ)
347
あなたにおすすめの小説
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
【12月末日公開終了】婚約破棄された令嬢は何度も時を遡る
たぬきち25番
恋愛
侯爵令嬢ビアンカは婚約破棄と同時に冤罪で投獄が言い渡された。
だが……
気が付けば時を遡っていた。
この運命を変えたいビアンカは足搔こうとするが……?
時間を遡った先で必ず出会う謎の男性とは?
ビアンカはやはり婚約破棄されてしまうのか?
※ずっとリベンジしたかった時間逆行&婚約破棄ものに挑戦しました。
短編ですので、お気楽に読んで下さったら嬉しいです♪
※エンディング分岐します。
お好きなエンディングを選んで下さい。
・ギルベルトエンド
・アルバートエンド(賛否両論お気をつけて!!)
※申し訳ございません。何を勘違いしていたのか……
まだギルベルトエンドをお届けしていないのに非公開にしていました……
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
家を追い出された令嬢は、新天地でちょっと変わった魔道具たちと楽しく暮らしたい
風見ゆうみ
恋愛
母の連れ子だった私、リリーノは幼い頃は伯爵である継父に可愛がってもらっていた。
継父と母の間に子供が生まれてからは、私への態度は一変し、母が亡くなってからは「生きている価値がない」と言われてきた。
捨てられても生きていけるようにと、家族には内緒で魔道具を売り、お金を貯めていた私だったが、婚約者と出席した第二王子の誕生日パーティーで、王子と公爵令嬢の婚約の解消が発表される。
涙する公爵令嬢を見た男性たちは、自分の婚約者に婚約破棄を宣言し、公爵令嬢に求婚しはじめる。
その男性の中に私の婚約者もいた。ちょ、ちょっと待って!
婚約破棄されると、私家から追い出されちゃうんですけど!?
案の定追い出された私は、新しい地で新しい身分で生活を始めるのだけど、なぜか少し変わった魔道具ばかり作ってしまい――!?
「あなたに言われても心に響きません!」から改題いたしました。
※コメディです。小説家になろう様では改稿版を公開しています。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に
ゆっこ
恋愛
王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。
私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。
「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」
唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。
婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。
「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」
ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる