【完結】モブなのに最強?

らんか

文字の大きさ
16 / 43

16

しおりを挟む
 「やはり。そうではないかと思っておりましたわ。
 わたくしと同じで前世の記憶がありますのね。しかも同じ日本で。」

 話を聞いてみると、ユーリは日本では主婦をしていたとのこと。
 お菓子作りにはまっていて、新しいお菓子を作ってはブログに上げて、まずまずの人気だったのだとか。
 また、異世界ものの小説が好きで、良く読んでいたとのこと。乙女ゲームをしたことは余りなかったそうだが、やった事のある数少ない内の一つがミラアタだったそうで、まさか、自分がミラアタの悪役令嬢に転生するとは思わず、分かった時にはパニックを起こしかけたらしい。
 ミラアタは高確率で悪役令嬢は断罪され、国外追放や、娼館行き、幽閉されたり最悪処刑されたりする。
 将来の聖女様に嫌がらせをし続け、最終的には命を狙うからなのだが……。

 今回、モブであるミーシャに目を向けたのは、本来ならオープニングのみ出場するモブ令嬢は、魔物討伐や飛竜に乗り回すことはおろか、馬にも乗れない普通のお嬢様らしい。
 魔法にも特に特化することはなく、剣術も出来ないのだとか。
 これは、ファンサービスの一環で、数量限定で発売された攻略本に載っていた情報なのだとか。
 (そんなの、知らないわよ~! たかだかモブにまで、そんな詳しく情報設定しなくても……)
 
 そんな設定があったとは知らなかったミーシャは、前世の記憶が戻る前から知ってる人が見たら必ず異質と感じるくらいの行動をとっていた。
 記憶が戻った後も、もちろん気にせず呑気に構えていた自分の迂闊ぶりに、ほとほと情けない思いだ。
 そして、決定的だった瞬間は、あのオープニングの婚約破棄。あの時モブ令嬢は、オロオロして泣き出したのだとか。
 あんな風に毅然とした態度で言い返した事で、確信したらしい。
 それでも今日まで声を掛けなかったのは、断罪に巻き込む恐れがある為、躊躇っていたという。
 でも、シオンが学園に来た事で、またミーシャがヒロインに敵対心を持たれているのではないかと感じて、声を掛けてくれたようだ。

 「ユーリ様はいつ前世を思い出されたのですか?」
 「わたくしは、産まれた時から記憶がありましたのよ。だから、どうにかダミアン様の婚約者になるのを回避したかったのに、国の事情でどうする事も出来ませんでしたの。
 だから、せめてヒロインとは関わらないように、ダミアン様とも距離を置き、好意はないことや、いつでも婚約解消に応じるともお伝えしてあるのですが、ゲームの強制力なのかしらねぇ……。」
 
 ほぉ……と溜息をつきながら、ユーリは今までの事を教えてくれた。
 また、自分と同様に悪役令嬢となる可能性がある他の攻略対象たちの婚約者たちにも、極力ヒロインとは関わらないように助言したという。

 「もともと、あのヒロインが原因で婚約破棄されたミーシャ様のことは、他の婚約者である皆様と心配していましたの。だから以前から、わたくし達の〈癒しの会〉メンバーのお茶会にお誘いしたいとは思っておりましたのよ。
 ぜひ、次はメンバーの皆様もお誘いしてお茶会を開きましょうね」と、ユーリはにっこりと笑った。
 
 そして、そのあとはヒロインの今後の動きや、いつ頃聖なる力に目覚めるのか、攻略対象の有力候補は、やはりダミアンであるなど、進捗具合を確かめ合い、今後も定期的に情報交換をしながら、何とか断罪回避に向けて手伝ってほしいと頼まれた。

 そのお礼として、ユーリが開発するスイーツ類を優先的に我が家に提供してくれる事になった。
 ユーリは、さすが産まれた時から前世の記憶があるだけあって、この世界で色んな食材を探求し、前世の知識をもって、色んなお菓子を作り出し、王都にスイーツ店を出していたのだ。
 (まさかあの超有名な人気スイーツ店の経営者がユーリ様だったとは!)

 そして、前世を思い出してから、無性に食べたいと思っていたお米や味噌汁などもあることを聞いて、出してもらった時には涙した。帰りにお米と味噌を分けてもらい、レシピも書いてもらって大満足で帰途したミーシャであった。
しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。 夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。 ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。 一方夫のランスロットは……。 作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。 ご都合主義です。 以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います

黒木 楓
恋愛
 伯爵令嬢のリリカは、婚約者である侯爵令息ラルフに「水魔法しか使えないお前との婚約を破棄する」と言われてしまう。  異世界に転生したリリカは前世の知識があり、それにより普通とは違う水魔法が使える。  そのことは婚約前に話していたけど、ラルフは隠すよう命令していた。 「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」  そう言われ続けてきたけど、これから命令を聞く必要もない。 「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」  飲んだ人を強くしたり回復する聖水を作ることができるけど、命令により家族以外は誰も知らない。  これは前世の知識がある私だけが出せる特殊な水で、婚約破棄された後は何も気にせず使えそうだ。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

(完結)相談女とお幸せに!(なれるものならの話ですけども。)

ちゃむふー
恋愛
「私は真実の愛に目覚めたんだ!ミレイユ。君は強いから1人で大丈夫だろう?リリアンはミレイユと違って私がいないとダメなんだ。婚約破棄してもらう!!」 完全に自分に酔いしれながらヒーロー気分なこの方は、ヨーデリア侯爵令息のガスパル。私の婚約者だ。 私はミレイユ・ハーブス。伯爵令嬢だ。 この国では、15才から18才まで貴族の令息令嬢は貴族の学園に通う。 あろう事かもうすぐ卒業のこの時期にこんな事を言ってきた。 できればもう少し早く言って欲しかったけれど…。 婚約破棄?大歓迎ですわ。 その真実の愛とやらを貫いてくださいね? でも、ガスパル様。 そのリリアンとやらは、俗に言う相談女らしいですわよ? 果たして本当に幸せになれるのかしら…?? 伯爵令嬢ミレイユ、伯爵令嬢エミール2人の主人公設定です。 学園物を書いた事があまり無いので、 設定が甘い事があるかもしれません…。 ご都合主義とやらでお願いします!!

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

所詮私は他人でしたね でも対価をくれるなら家族の役割を演じてあげます

れもんぴーる
恋愛
シャリエ子爵家には昔、行方不明になった娘アナベルがいた。十三年ぶりに戻って来たアナベルに、セシルは姉が出来たと喜んだ。だが―――アナベルはセシルを陥れようと画策する。婚約者はアナベルと婚約を結びなおし、両親や兄にも虐げられたセシルだったが、この世界はゲームの世界であることを思い出す。セシルの冤罪は証明され、家を出ようとするが父と兄から必死で引き留められる。それならばと、セシルは家を出て行かない代わりに、「娘」を演じる報酬を要求するのだった。数年後、資金が溜まり家を出て自らの手で幸せを掴もうとしているセシルと新しくできた婚約者マルクの前に再びアナベルは現れる。マルクはアナベルの魔の手から逃れられるのか? セシルはアナベルの悪意から逃げきれ幸せになれるのか?(なります (≧▽≦)) *ゲームを題材にしたの初めてですが、あんまりその要素は強くないかも(;'∀')。あと、少しですが不自然にコメディタッチが出てきます。作者がシリアスだけだと耐えれないので、精神安定の為に放り込む場合がありますm(__)m。 *他サイトにも投稿していく予定です。(カクヨム、なろう)

処理中です...