31 / 122
31.かりんとうは皆を救う?
しおりを挟む『で?リリィは何をしてるんだ?』
「かりんとうづくりよ!」
キッチンの扉からロウとセルが顔を覗かせて話しかけてきた。
キッチンは、動物禁止ですからね!
この間のお茶会とか、お母様の方のお茶会とかでもすごい好評だったらしくて、今度のヴィータの生誕祭?に持って来てって皆に言われたのよ。
特にお母様が王妃様に強めにお願いされたって言ってたし…。
王様も食べてみたいって。
作っていかないとヤバそうな雰囲気だったからね。
本当は…町で何か探そうと思っててレオと約束したんだけどね…。
楽しみにしてたのに…
…月の雫亭でご飯食べるの。
『目的が変わってるぞ…』
『まぁ、リリィだから…』
だってさ、せっかく町に行けるチャンスだったのに…。
あ、町には行けないけど孤児院にかりんとうを差し入れに行こうかなー。
それだったら、お母様も許してくれそうな気がするし!
町には行けないし、月の雫亭にも行けないけどねっ!
あーぁ、行きたかったなぁ…月の雫亭。
『…リリィは食い意地が凄いな』
『何よりも三度の飯が大切だってこの間叫んでたぜ…』
◇◇◇
お母様に許可を貰って今日は孤児院に来ています!
明日はヴィータの生誕祭だからあんまり遅くまでは居られないけどね。
月の雫亭とは反対方向にあるこの場所で、ふぅ…と月の雫亭の方向を見ながら溜息連発よ…。
「……どうかしたの?」
わっ!!ビックリした!!
「リュド!びっくりしたー!!おどろかせないでよね!」
「…なんだ、げんきじゃん」
「なに?わたしはげんきよ?」
「…ならいいよ」
「あ!しんぱいしてくれたの??ありがとう!」
ニヘラと笑ったらリュドの頬っぺたが赤く染まった。
あ!熱中症?日陰に連れて行かなきゃ!
この世界の人達は熱中症になりやすいのかな?
対策ちゃんと教えてあげなきゃ!!
「リュドこそ、ちょうしわるいんじゃないの!?ひかげにいこう!」
グイグイと手を引いて木陰に向かう。
「ねっちゅうしょうはね、ひかげであたまとわきをひやすの!あとはすいぶんをとって…」
「…ねっちゅうしょう?」
「あ、しらない?あついひになるびょうきみたいなものよ。へたしたらしんじゃうからねっ!」
「…びょうき?なら、ちゆいんで…」
「バカねっ!そういうのにたよってばかりじゃ、いざというときにこまるのはじぶんなのよ!きちんとじぶんでできるたいさくをべんきょうしておかなくちゃ!」
「……リリアーヌさまって…」
「リリィでいいわよ?」
「リリィさま…」
「リリィ」
「リリ」
「リリィ」
「…リリィは…なんかかわってるね」
「そう?ふつうだと、おもうけど…」
「ふふふ…。かわってるよ。ちゆいんにたよるなとか…」
「あら、それはあたりまえじゃない?まずはじぶんでできることはじぶんでしなくちゃね!」
「……なんでためいきついてたの?」
「…きいてくれる?」
「う、うん」
ゴクリとリュドの喉が鳴った。
「…わたし」
「うん…」
「つきのしずくていにいきたかったの!ほんとうに…うぅ…しんぷるに、しーふーどどりあがたべたいきもちだったの…」
「………」
「うちのしぇふにつくってもらったの、おいしかったのよ。おいしかったの!でもね!もしかしたらつきのしずくていだったらもっとおいしいのかも!?ってかんがえたらとまらなくて…」
「……」
「じぶんでつくる?ともおもったけど、やっぱりいかとかえびのしょりがめんどうだし…いかのしょりってめんどうじゃない?いか…あれ?このせかいたこってあるの?たこ。たこやきたべたーい!!あ、でもあのまるくやくためのてっぱんがないか…じゃあ、おこのみやき?それならいけるね!ヨシ!」
「ぷっ…ぶふっ…」
「?リュド?だいじょうぶ?」
「あはは!それはこっちのセリフなんだけど!」
あはは!とリュドが大笑いしてる。
なんか暗かったリュドの表情が明るく見えるよ?
そんなにツボる事あった?
「クック。ふぅ…。リリィ、やっぱりかわってるよ」
えっ!?中身大人ってバレてる??
なんか変だった?確かに3歳にしてはちょっと食い意地が張ってるかな?とも思うけど…。
でも、それくらい普通にいるでしょ…?いるよね…?
「…どこが?わたしふつうだとおもうけど…」
「…きぞくのひとって、ちかよりがたかったり…こわかったり…してたけど。リリィはちがうね」
あ、そっち系ね。
良かった。
「こわい?」
「うん。ボクをみるめがね…。えものをみるようなめだったり、むしけらをみるようなめだったり…」
それって…闇の属性のせいで?獲物って…何かに使うって事?
「リュドはきぞくはきらい?」
「いちぶのね。ベルナーけのひとはそんなことないけど。イヤなやつもおおいとおもってる」
「いやな…やつ」
「きぞくは…やみのぞくせいのせいで…ボクじしんのことなんてどうでもよくて、ただそのちからがほしいだけなんだ」
こじらせてる…ね。
やっぱり辛い事沢山あったんだ…。
「リュドは…こんごどうしたいの?」
「こんご?そんなもの…」
「まだ3さいかもしれないけど…かんがえたほうがいいとおもうよ?」
「……」
「まだやみのぞくせいって分かってるだけでしょ?せんていしきで、どのせいれいがけいやくしてくれるか、わからないじゃない?」
「…まあたしかに」
「すごーいせいれいがけいやくしてくれたり、そうじゃなくても、これからは『やみ』がいいっていうひともふえるとおもうんだけど。れあ、だし」
「レア?」
「そうよ。これから『やみ』にたいするにんしきがかわるわけじゃない?そしたら、すくない『やみ』ににんきがあつまってくるわけよ」
「…にんきね、ふん」
「リュド?」
「そんなの、ただおもしろがってるだけじゃん。」
「うーん、はじめはそうかもしれないけどさ、そこはじつりょくで、ねじふせていけばいいんじゃないの?」
「じつりょく…」
「じぶんではなにもせずに、ただぶーぶーともんくいってるだけなら、そこまでのひとってことだけどさ、ちゃんとじぶんをみてほしかったら、じぶんでどりょくしてから、じゃないの?」
「……。」
お説教タイムみたいになっちゃってるじゃんー。そんなつもりはないんだけど…リュド顔が青くなってきてる?あれ?やばめ??やっぱり調子悪いんじゃない?
「だいじょうぶ?」
「…うん。ど、どりょくしても、みてもらえなかったら?どりょくしただけむだじゃん!」
「うーん、だれかひとりにでもみとめてもらえたら、それはせいこうだとおもうけど…」
「…だれにもみとめてもらえなかったら?」
「んー…どりょくのほうこうがまちがってたかな?っておもう。で、ちがうやりかたでまたやってみる。みとめてもらうのって、そういうののくりかえしだとおもうけど」
…前の世界でもそうだったもんな。
努力が全て報われる訳じゃないけど、見てくれてる人がいるもんなんだよね。
それだけで、がんばれるというか…。
「…くりかえし」
ん?リュド、顔色が戻ったね。
もう具合悪くないのかな?良かった良かった。
「うん。そしたらきっとだれかがみてくれるはずだよ!すくなからずわたしはみてるよ!」
こうやって関わった以上は私もその一人としてしっかり見させて頂きます!
何目線だよー!何様だよー!って感じだけどねっ!
「リリィが…みててくれるの?」
「?うん」
「そっか…リリィがみててくれるんだね…」
「うん。あ、かりんとうたべる?」
「かりんとう?」
「おいしいよ!みんなのところにももってきたけど、…これはほんとうは!わたしのぶんだけど…リュドにあげるわっ!!」
しゃーなしや!
コレは私の隠しおやつ…だけど、あっちに持っていった分はすぐになくなりそうだったし、もうないかもしれないから…。
リュドにも食べさせてあげたい!って思ったし。
「はい!」
「ありがとう…」
「………」
「リリィ?」
「…やっぱりいっしょにたべない?」
「…ぶふっ!」
あ、また笑われちゃったよ…。
大人気ないけどさー、皆に配るばっかりで最近自分で食べれてないんだもん…。
「あははは!いーよ!いっしょにたべようよ」
「うふ!ありがとう!」
ポリポリと木陰に2人で座って無言で食べる。
うん、やっぱこれだよね!緑茶とか飲みたいわー。
「…リリィ」
「ん?ポリポリ」
「ありがとう」
かりんとうの事かな?
いいのよ!皆で食べたら美味しいしさ!
「ん?ポリポリどういたひまひて」
「ボク、…がんばるよ」
「ん、がんはっへね!ポリポリ」
「ぷっ…クックック…あーあ、ばかみたいだ!」
「?ポリポリ」
「なやんでいたのがばかみたいにおもえるじゃん…うん…がんばろ!」
ポリポリ食べてたらリュドが何かブツブツ言ってるけど、ポリポリでよく聞こえないな。
早く食べないと、かりんとう無くなるよ?
32
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる