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35.混ぜ込み派?重ね派?
しおりを挟む皆さんと仲良くなれて、また今度お茶会ならぬ女子会をやろう!と約束をして楽しいひと時を過ごせた生誕祭が終わり、なんとなく何もない日が続いたある日の事。
今日はシェフに食材の調達をお願いして…
遂に!!念願の!!
お好み焼きをやる日がやってきたのです!!
ヤッタ!ヤッタわ!!
ただ、何個か難点がありまして。
まず、この世界に…蒟蒻が無かった…。
そして、紅生姜、天かす、鰹節、青のり…無かった。鰹節がないって事は出汁が取れない…うん、まあそこは目をつぶって食材から出る味で何とかなる!
無くても何とかなるものばかりだからいけるよね。
さて、まずは長芋をすります。
小麦粉に卵、水、出汁がないからそこは省きますが、エビの粉末の物はあったのでそれを入れて、混ぜて混ぜて…疲れたのでシェフに代わってもらいます。
キャベツを千切りに、イカを処理してもらい、豚肉を薄切りにしてもらいます。
では、別ボールにキャベツを一掴み、イカを入れて先ほど混ぜた生地と軽く混ぜ合わせて、ここで混ぜすぎないのがふんわり仕上げるポイント!そして油を引いたフライパンにじゅわーっと広げます。
その上に豚肉を乗せてー待ちます!
あーいい匂いしてきたー。
『リリィ今度は何を作っているのだ?』
『なかなかに旨そうな匂いがするじゃねえか!』
ん?お好み焼きよ!
ロウとセルが安定のキッチン扉から顔を覗かせて話しかけてきた。
コレがまた美味しいの!出来上がったら一緒に食べましょ?お好み焼きソースが無いからそこは手作りなの。
ケチャップとマヨネーズを先に混ぜるのもポイント!じゃないと綺麗に混ざらないのよね。
その後にソースを混ぜる、これでお好みソースの完成!
ーーーはっ!!
「シェフ!もうやけてるとおもうわ!ひっくりかえしてみて!」
「ーー!はい!」
ポンッとひっくり返されジュワーッといい音がキッチンに響いた。
シェフだけではなく、キッチンメイドさん、従僕の皆さん、メイドの皆さんこぞってキッチンに集まっているんだけど…そんなお好みパーティー出来るほど生地作ってないんだけど…どうしよう…。
とりあえず、またしばらく待ち!
…………
………………
「…シェフやけたとおもうわ!もういちどひっくりかえしてみて」
「はい!あぁ、いい香りですね…」
いい感じで焼けてたお好み焼きをお皿に乗せ、4当分に分けて手作りソースを塗る。
「では、いただきます!」
パクリと一口。
うんまーーーーい!!!
コレコレ!コレよ!!求めていた味はコレ!!
美味しすぎる!
あ、皆さんの視線が痛いな…
「えーと…ヨシ!きじをもっとたくさんつくるわ!シェフてつだってくれる?」
「畏まりました!」
「キャベツのせんぎり、ぶた、いか、よろしくです!」
「お任せ下さい!」
「よし!じゅんびができしだい、ベルナーけ、おこのみぱーてぃーのはじまりよ!!」
ワッ!!と皆さん大喜びされました。
……この日からベルナー家では月に一度、お好みパーティーが開催されるようになり、その日は主従関係なく皆でお好み焼きをつついて食べるという、一風変わった日になっていったのでした。
そして…ある日のお好みパーティーの日、お客様をおもてなしする事になったらしく、いつもは出される事のないお酒が用意されていた。
「セバス、きょうはだれがくるよていなの?」
「本日は、ミシェル様の同胞で私めの知り合いでもあるリンリン、ドルトス、ルーファス、オルガが来る予定です」
「わっ!みなさんにあえるのね!うれしい」
「お好み焼きの噂を聞きつけたルーファスが来たい、とゴネまして。それを聞いたリンリンがドルトスとオルガに声をかけて、今日に至ります」
「そうなのね。よーし!きょうはおおさかやき、ひろしまやき、りょうほうやるわよ!」
「おお…さか?やき…とは?」
「あ!えーと、おこのみやきのしゅるいのことよ。きじに、ぐざいぜんぶまぜあわせるのがおおさかやき、まずきじをやいてからくざいをうえにのせてやくのが、ひろしまやき、よ!」
「成る程…それは意見が割れそうな予感ですね…」
意見が……割れる……だと…?
…確かに!!
前の世界でも意見は真っ二つに割れてた問題!!
よし、この際だからこの世界の人達の意見を確認していこう。
準備万端で、あとはお客様をお迎えするだけ。
お客様が来るまでの間、テラスでロウにもたれて皆様の到着を待ちます。
ロウの横でセルが
『オレっちにももたれていいのに…』
って言っていますが、やはりここはもふもふの圧倒的勝利でしょう。
ただ、暑い日にはセルの方が冷んやりしていいかもね!
「リリィ様、お客様が到着されましたよ」
「はーい」
ヨシ!と気を引き締めてリビングに戻ると圧倒的に濃ゆい方々がいらしてました。
「みなさま!ごぶさたしております!」
「あらリリィ…っって!後ろ…!後ろ!!」
「うしろ?」
後ろを見るとロウとセル。
あ!皆さんには免疫なかったんだった!!家の人達はもうなれた物で廊下でロウが伸びてようが、リビングのシャンデリアにセルが絡まっていようが、平常心ですごせるくらいには共に生活していくのに慣れたんだよね。
「あ、えーとこちらはふぇんりるのロウとよるむんがんどのセルです。よろしくおねがいします」
『よろしく頼む』
『まあ、仲良くしてやるよ』
ゲシッとセルのボディにエルボーを加えて…と。
「そうだった…わね…。フェンリルがいるっていう話…って、ヨルムンガンドも!!!」
相変わらずリンリンさんは反応がいいよね!
ツッコミ役に最適だよ!
「こんな所で…聖獣と会えるなんて…」
って感動してるのはルーファスさん。
あ、そうか確か召喚術師なんだよね?魔法陣書くのが上手いってロウが言ってた。
「レア素材が…こんな所で…」
って、言ってるのはドルトスさん。
ん?レア素材って何の事かな??
「ヨルムンガンド…が何故?」
あ、この人は初めてお会いするわ。
て事はこの人がオルガさんだね。
「ええと、いろいろありまして、かれらもわたくしのかぞくですので…えへへ」
ロウが体をスリッと擦り付けてきて、セルが頭にドシッと乗ってきた。
重いんですが…もう!離れて!
「…すっごい光景よね…聖獣を家族扱い…」
「確かに…有り得ないというか…レディに狼と竜…」
「一房…一枚…」
「封印はどうなってるの…?」
皆さん口々に色々と言ってるけど…どうしたらいいのかな?
「ほら、皆、リリィ様が困っているではないですか。そろそろ【お好みパーティー】を始めたいので、あ、オルガ、貴方はリリィ様と初めてお会いしますね?ご挨拶を」
パンパンと手を叩いてセバスが場を収めてくれた。
「あ、リリアーヌ・ベルナーです。おあいしたかったです」
「不躾に失礼しました。オルガ・ペリンと申します。ランコントルというバーを経営してます」
「そうなのですね、ふふ、おとなになったらぜひおみせにいかせていただくわ!」
お酒なんて、前の世界でも殆ど飲んだ事ないんだよね…お店の忘年会と歓送迎会くらいかな?オーナーが出してくれる時は飲んだけど、でもそんなに美味しい物じゃ無かったしなんだかんだで、飲んでても他の人が先に潰れていくからお世話しなくちゃいけなかったしなぁ。
「……私の姿を見ても何も言わない…」
「オルガ、そうなんじゃよ、このリリィって子はな。儂の姿を見ても一つも動じなかったんじゃ」
「ドルトスを初めて見た子供って大抵魔物と間違えて泣くか、固まるかよね?」
『カッカッカッ!お前ら如きでリリィが驚くわけないだろう!リリィはオレを見ても動じない女だぜ!』
「ヨルムンガンドを見ても…!!」
『我も初見で、もふもふされた』
何故か誇らしげなロウとセル。
「!!!!」
「やっぱり、リリィ…恐ろしい女ねっ」
何を皆さん言っているんだろう。
ドルトスさんは小さいけど髭がすごいおじさんって感じだし、オルガさんの見事な銀髪は前の世界だとあの色出すのが難しいんだよねっ!あれ?耳がちょっととんがってるかな?
「えーと?」
「あ、私、この耳見て分かる通りエルフなんです…エルフってエルフの森とかに集団でいる事が多くて、自分で言うのもなんですけどエルフが町にいるのとか珍しいんです」
「あっ!そうなんですね!すごいですね!ひとりでもまちでおしごとしているなんて!」
「ーー!あ…ありがとう。ふふふ。私…自惚れてたみたいでお恥ずかしい」
「?りっぱだとおもいますけど。だんたいでしかいられないひともおおいですからね」
『リリィにかかっちゃ、エルフも形無しだなククク…』
「ヨルムンガンド、あなたに言われたくはありません!」
『オレはセルだよ。もう過去のオレとは違うからな』
この2人…何か関係してたのかな?
でもセルが封印されたのって建国の時とか言ってたし…オルガさんがそんな年には見えないし…。
『まあ、エルフは長生きな奴が多いからな、アイツらに何かあったかは知らないが…』
そっか、まあ、深く追求はしないけどね。
「はいはい。そこまでにして下さい。そろそろ始めますよ?皆さん乾杯は何にしますか?」
セバスの一声で皆さんお酒を片手にまずは乾杯。
さて、皆さんはどっち派かしら?
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