乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

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93.初めての場所は緊張しますか?

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 レオと手を繋いで歩いていると、どこに行くのか分からないけどあまり不安は無かったです。

 落ち着いている人と一緒にいるってそれだけで落ち着けるのかな?

 
 少しだけほの暗い雰囲気のここはどこなんだろう……。
   
 レオと繋いだ手にギュッと力が入る。


 「リリィここは来た事ある?」
 「──無いわ」
 「そっか、でも怖がらなくて大丈夫っぽいな」
 「え?」
 
 
 レオがそう言うと肩から闇の精霊シエルがヒラリと飛び回っていた。

 
 「ここがどこかは分からないけど、シエルが楽しそうにしているから大丈夫だと思う」
 「──本当だね」


 『レオ、リリィ、ここはね闇の精霊達の国でスヴァルトアールヴヘイムって言う場所だよ。悪い場所じゃないから大丈夫』
 

 シエルが話しかけてきて、更に奥へと誘います。


 『二人ともいきなり連れてきてごめんね。驚いたでしょ?でも、今しか無かったんだよね』
 「どう言う事?」
 『ここには人間は入れないんだ。精霊王様もここは管轄外みたいなモノだから』
 「へー!オベロンも管轄外なんだ!すごいね」
 『ふふ、それでレイテア・ソーク様……あ、闇の精霊のトップのお方がリリィ達に会いたいって言うから皆で力を合わせて連れてきちゃったんだ』

 
 闇の精霊のトップが?
 

 レオと顔を見合わせてお互いに驚きが隠せませんでした。

 
 「ええと、そのレイ……さんが何の用でしょうか?」
 『レイテア・ソーク様だよ。リリィは相変わらず名前覚えるの苦手だね……』
 「えへへ……すみません。で、えーと何の用事かは聞いてる?」
 『うん。まあそれはお会いしてから……ね。レオも一緒にしっかりリリィの手を握っていてね』
 「?うん」
 『リリィの膨大な魔力とレオの闇属性の魔力で引っ張って来ているからね、手を離したら迷って戻れなくなるかもしれないからね』


 ──うわぁ。恐ろしい事サラッと言うじゃん……。

 レオの手を知らず知らずに力強く握り込んでしまった。

 
 「リリィ大丈夫。絶対に離さないから」
 「──う、うん。お願いね……」

 
 少し歩いて現れたのは世界樹……の幹?
 葉の部分が見えない。


 「ねえレオ、これは世界樹なのかな?」
 「うーん、多分そうなのかな?世界樹とそれぞれの階層は少し不思議な空間になっているって話だからね。ヘル様の所も世界樹の根の部分の更に地下深くだろう?」
 「あ、そうか。じゃあ幹しか見えてなくても世界樹って事か」
 『フフフ、そういう事です』

 
 目の前の世界樹の幹にフワリと黒い霧が出て目の前に黒髪黒目、黒い羽を持つ精霊が現れました。

 
 「え……と?」
 『初めまして、リリィ、レオ。私は闇の精霊レイテア・ソークです』
 
 
 あ、この子がレイ様。
 可愛い……ヤバイめっちゃ可愛いじゃん!!


 『フフフ、ありがとうリリィ』
 

 あ、心の声がだだもれ~。
 えーと気を取り直して……。

  
 「えと……今日どんな用事でしたか?」
 『うん、お礼を……と思って』
 「お礼?」
 『そう。貴方達のお陰で世間の闇の精霊達の認識を変える事ができたから。とても感謝しています。本当にありがとう』
 
 「あ!小さい頃のレオの光と闇事件の事ね!」
 「リリィ、そのネーミングはヤメて……」
 「え?じゃあ……レオと光と闇の大冒険?」
 「それはかなり違うと思うし……」
 「えー?じゃあどんなネーミングがいいの?」
 「いやいや、ネーミングしなくていいからね?」
 「えー?それじゃああの時の事は何て言ったらいいの?どうなの?」
 「え?それは……」
 「ほら、困るじゃない?光と闇の迷宮?レオのお悩み解決所?違うな……レオは名探偵?……」
 「──ちょ、もう最初のでいいよ……」
 「え?最初のでいいの?」
 「───うん」

 『ブフッ……』


 レオとああでも無いこうでも無いと話していたら吹き出す笑い声が聞こえた。
 
 
 『あ、失礼。君達は相変わらず仲良しだね。羨ましいよ』

 「?」

 『私達は闇。世の中の認識が変わっても、変わらない事があるから』
 「何ですか?変わらない事?」
 『──相容れない事』
 「え?」
 『闇は闇に。そこは変わらないから。他の子達とはあまり一緒に居られない』
 「ん?闇だから?」
 『そう、闇だから』
 「え?ここにいるから?他の所に行けないって事?」
 『そういう事』
 「──?それって普通の事じゃないの?」
 『?』
 

 え?私何かまたおかしな事言ってるかな?

 
 「レオ?私変な事言ってる?」

 少し不安になって繋いだ手をギュッと握りしめてしまった……。


 「ん?大丈夫だと思うよ?きちんと話してみて?」

 「うん、だって皆相容れない部分ってあるじゃない?私達と精霊達だって、本当なら人はここには来れないでしょう?それと同じじゃないの?」
 
 『──場所だけの話じゃないから……』
 
 「?うん。でも精霊同士も同じでしょう?闇の精霊がそうだって言うなら、光も同じじゃない?逆に考えたら闇が拒絶するから光が相容れないって事」

 『── 』

 「ややこしくなってきちゃったなぁ……もっとシンプルで良いと思うんだけどなぁ。うーん闇の精霊だからって明るい所に行けない訳じゃないでしょう?」
 
 『ええ。そうね』
 「絶対に明るい所に行けない!とかだったら相容れないのは分かるんだけど……気持ちの問題なのかな?そう思ってるのは闇の方って感じ?」

 『─── 』
 「住処はそれぞれの場所があるでしょう?だから闇だから何って事は無いと思うし、暗いから皆が来れないなら来て欲しくないならそれで良いと思うけど、遊びに来て欲しいなら明るい場所も作ったらいいんじゃないかな?」

 
 そんな単純な事じゃないかな?


 「寂しいとかつまらないと思うなら皆を呼ぶか遊びに行ったらいいんだよ?だって自由でしょ?人間の認識が間違っていた期間も長いから貴方達闇の精霊もその考えがどこかにきっと残っちゃってるんじゃないかな?」

 『──フフッ』

 
 ん?笑われた?


 『ごめんごめん、何だか…確かに闇に固執してたのは……私達の方……なのかな』
 「うーん、何とも言えないけど相容れないとか、考えない方が楽しいと思うよ?だって、シエルとセリカは仲良しだよ?ねえ、シエル」

 『うん!仲良しだよ!!』
 『──ふ、リリィ達に周りの認識を変えてもらったというのに、私は……私だけ変わってなかったって事か……』

 「これから皆で変わって行ったらいいんじゃないかなぁ」

 『そうね……ありがとうリリィ。本当に……』


 レイ様、寂しかったのかな?
 ずっと暗い所に居るのかな?外には出ない?人間の前には出てこないのかな?


 「また、呼んでくれたら遊びに来るよ!ね?レオ!」
 「ん?そうだね。リリィとずっと手を繋いでいられるしね」

 『ハハッ。手を繋がなくても大丈夫なようにも出来るけど……しない方がいいみたいだね?』

 
 ───!もう! 
 恥ずかしいじゃないの……

 でも、この繋いだ手があるから……
 
 私は安心して無茶ができるのかもしれない。

 
 「家にも遊びに来たらいいよ!リュドだって居るしシェイドだって居るよ?」
 『そうだね、今度……遊びに行く……』
 「じゃ、約束ねっ!」
 「あ!リリィ!!」


 一歩踏み出して指切りをしようと手を……ってレオの手……離しちゃった!!!!


 グニャリと空間が歪んだ。

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