乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

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99.あなたに会えて良かった?

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 隣国の王女マリアはヴィータとは勿論、リュドとも仲良くしているようです。

 リュドは側近だからね仲が良い方がいいよね。

 でも何故か高等部のお兄様達を呼び付けてはカフェでお茶をしていたりもします。
   
 ……そこにはレオも居て。ローラン様、マティ様も。

 テオは呼ばれても「アディが一緒ならば参加します」というスタンスを崩さず不参加を決め込んでいます。

 イザベル様とメルは「断れるような立場に居ないのだから仕方ない。どうぞご自由に」というスタンス……。
 
 お兄様に至っては始めだけは参加するものの何かと理由をつけて逃げ出しているそうです。

 レオも断れるような立場に居ない……のは分かっているんだけど、メル達と違ってレオは婚約者が居ない状態……だし。私が何か言える立場では無いし……。


 モヤモヤがモヤモヤしてモヤモヤするんです。


 カフェに行ってしまったら、王女様達に会ってしまうかもしれないと思うと逃げ腰になってしまって、図書館か魔法訓練スペースか……それとも師匠の所かヘルの所か……逃げ出したくなります。

 唯一、王女様は寮には足を踏み入れないので部屋に篭っていますがこのままココに居てもモヤモヤが晴れるわけでもないので精神的に良くないと思い、とりあえず部屋を出て寮のカフェテラスに向かいました。


 こんな日に限って誘える友人達は皆予定があって不在なんだよなぁ……。

 はぁ……。

 
 カフェで紅茶とショコラパイを頂くことにします。こういう時は甘い物を取った方がいいよね。


 カフェには人も殆どおらず何となく自分だけが取り残されたような感覚に陥ってしまいます。

 いつも私の周りには賑やかなメンバーがいてくれて、寂しいな……なんて思った事は無かったのに……。

 なんだろう。急に一人ぼっちな気分。

 ロウ達契約獣やオベロン達精霊との関係は良好だし……それでも寂しく思うのは……いつもの手が……ここに無いから……。


 はぁ……。
 

 「あれ? リリィ~!? こんな所で溜息吐いてどうした~?」
 

 軽い口調で話しかけて来てポンと肩を叩かれて振り返るとピンク頭のエリーがニコリと笑っていました。


 「エリー!」
 
 
 この世界でこんな気軽に人に触れてくるのなんてエリーだけかもしれない。だけどなんだかホッとする。


 「何何? なんかあったのかな~?」
 「──特には……無いのだけどね。甘い物が食べたくなって」
 「あー、そういう時ってあるよね! リリィの美味しそう! 私も一緒していいかな?」
 「勿論!!」
 「じゃあちょっと買ってくる!」

 
 そう言って去って行った背中を見ながら、前の世界の数少ない友人とたまにお茶したな……とふと思い出しました。

 ……そういえば最近は前の世界の事を忘れてきたなぁ。

 
 「お待っとさーん!」
 「ブフッ……」


 エリーの突然のセリフに紅茶を吹き出しそうになってしまいました。


 「リリィ大丈夫?」
 「だ、大丈夫……」

 
 何なんだ? この人は。面白いぞ? やっぱり面白い人だぞ?


 「うーん、ここの食事ってどれも美味しいよね! リリィのショコラパイも美味しそう!!」
 「美味しいよ? 食べてみる?」
 「ワーイ! じゃあ私のバリーパイも一口どうぞ」


 一口頂戴、はいどうぞ! なんて久しぶりすぎるなぁ……


 「美味しいねぇ……ってそうだ! 今日はハンカチ持って来てたんだった! ありがとうね!」
 「あ、どういたしまして……」


 他愛も無い話をしながら気持ちが晴れてくるのが分かりました。


 「で? なんであんなに浮かない顔してたの?」
 「───えと」
 「あ、話していい事だったら話してね?」
 「うん……えと、会いたい人に会えなくて……」
 「───そうだったの? わかる~!!」
 「え?」
 「会いたい人に会えないの……切ないよね……」
 「──エリーも?」
 「そうなの! でもね……ずっと会いたかった人には……何となくそれはそれなんだけど……」
 「けど?」
 「最近ね、そのずっと会いたかった人じゃない人の事が気に……なってて……それっていいのかな? って」


 ん?ずっと会いたかった人がいたけど、今は違う人が気になってて、それに対していいのかな? って思ってるって事だよね?


 「え? いいんじゃないの?」
 「え? いいの?」
 「え? なんでダメなの?」
 「えっと……だって……あれ?」
 

 ???

 二人で顔を見合わせて首を傾げたら、フフッと笑いが込み上げてきた。


 「決められている事なんてないんだから。まぁ、家同士の繋がりで貴族の恋愛は……難しい事も多いけどね。でも心は自由なはずだから」
 「……そっか、そうだよねぇ」
 「うん、エリーも……その、急に男爵令嬢になったって聞いたけど……。戸惑ってるかもしれないけどさ、そこまでガチガチに決められてるような世界じゃないから」
 「リリィッ!!」

 
 ガシッと両手を握り締められてブンブン振られて少し腕が痛いです……。


 「ありがとう!! そうだよね!! 例え決まりがあったとしても自分の思うようにしたっていいんだよね? 何かが変わっちゃうかもだけど……」
 「?よくわからないけど……何かが変わってもそれはそれでいいと思うけど」
 「──うん。そうだよね! 何かさ私雁字搦めになってた感じ!!」
 「雁字搦め?」
 「うん。なんて言うのかな……使命と言うのか……この世界ではそうしなきゃいけないみたいな」


 うーん、何となく分かるような分からないような……?

 
 「──決められた事があったとしてもそれが絶対って訳じゃないと私は思ってるから、好きにしていいんじゃないかな? ってかなり横暴?」
 「そんな事ないよ! リリィに会えて良かったなぁ……あ、リリィも会えなくて……だっけ?」
 「あ、うん……でも今は仕方ないのかな? って感じだから」
 「そうなの?」
 「うん。そうなの」
 「じゃあ、待つしかないよね……」
 「うん。待つしかない……待っててもいいのかなぁ」
 

 勝手に待っててもいいなんて決めちゃダメだよね……。


 「じゃあ、通信かなんかで待ってるねって伝えたらいいじゃん!」
 「え?」
 「そうしなよ! そしたら相手にも伝わるしさ! あわよくば会う約束とかもできるじゃん!」

 
 あ、そうか。通信魔法……ケータイみたいな物だもんね。そういう風に使えるの忘れてたな……。


 「通信してもいいのかな?」
 「えー! いいでしょ? 迷惑とかだったら出ないだけだし、忙しくても時間が少しでもあれば返事はくれるでしょ?」
 「そっか! そうだよね! 通信してみるよ。エリーありがとうね!」
 「いいえ~私もリリィにありがとうだもん!」


 二人でガッシリと両手を握り合って笑い合いました。


 私、エリーの事よく知りもしないのにレオには会わないようにして欲しいなんて言って……なんて嫌な奴だったんだろう……。

 反省だよ!!
 エリーに会えて良かった!!

 ヨシ、気を取り直してレオに連絡してみよう!

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