106 / 122
106.怪しい予感!!
しおりを挟む「厳密な時間が出たそうだよ。6分30秒」
テオが笑って伝えて来たのは私達がダンジョンに入ってから出てくるまでの時間。アディは隣で苦笑いしている。
「ココは小さいダンジョンなのでそこそこの腕があれば一昼夜でボス部屋には到着できるんですけど、そこそこの人だとボスを攻略出来ないんです。ドラゴン種の中でも中位くらいのレベルなので……それをねぇ……」
そう言ってため息を吐くのは王宮魔導士のセナ様。
「聖獣様達なので仕方ないですね。それに、レオもリリィ様も助かったみたいですし。万事OKという事ですね」
セナ様はそう言うとレオの頭をグリグリとかき回した。二人は仲が良いのかな?
「ちょ、セナ様やめて……」
「レオがさっさとミシェル様からリリィ様を奪わないから隙をつかれてこういう事になるんだ。国内だと周知の事実でも国外には話を聞かない奴らも多いんだから」
セナ様が真剣な顔でそう言うとレオは分かりやすくシュンとしてしまった。
「今回……オレ頑張ってあいつらよりも早くダンジョンクリアしてリリィを守ってそれをミシェル様に……」
ガックリと項垂れて肩を落とすレオの周りにロウ達が集まって行った。
『レ、レオ……スマン』
『そ、そうだよな、いいチャンスだったよな……スマン』
ロウとセルが焦ったように謝っている。
『あー、そっか。悪かったな……その、次があるさ!』
『ミシェルもな……我等にはそこは手出しができんからな……スマン』
それを見てネスルとオベロンも謝っていた。
「聖獣様と精霊王に謝られている……」
「こんな……近くにおられるのも奇跡なのに……」
全てを知っているセナ様と宰相側近のイシトは顔を見合わせて震えていた。
それから3時のお茶をしてアディは王妃様からの呼び出しで王宮に戻り、他のメンバーはここでやれる仕事をしながらのんびり?トレファス兄妹の帰還を待っていた。
私とレオはセナ様の仕事の手伝いをしていたが陽が傾いてきた事に気付きふと素朴な疑問を皆にぶつけた。
「……ねぇ、呼び戻したら早いんじゃないの?」
「あー、始めはそうする予定だったのですが、あの兄妹グールをダンジョンに置いて行っていると聞きましたので少し探りを入れているんです」
すみません、とイシトが謝るとセナ様が続けて話してくれた。
「ダンジョン内に自分の契約獣や召喚獣を置く事はできます。それは特に問題無い。ただグールと言う所が少し引っかかってまして……トレファス兄妹は闇属性では無いとの事ですから」
「グールは闇属性じゃないと召喚できないの?」
「まあ、基本的にはそうですね。特に何も無ければ……いいのですけどね」
セナ様はダンジョンを見て手元にある魔道具を確認すると眉をひそめた。
「……セナ様?」
「……彼等も実力はあるのでしょう。もうすぐボス部屋ですね。それにしても魔動具を利用して召喚魔法を使っているとしてもグールの数がエグい……」
ダンジョン内の様子は今回魔道具で確認されている。チラリと覗くと魔動具の画面いっぱいにグールの姿が映っていた。
「リリィ様、彼等はもしかしたらボスを倒した後も出て来ないかもしれません」
「どう言う事?」
「彼等はリリィ様達が既にクリアしている事に気付いていません。何かボス部屋に細工をして待ち伏せ? をするかも」
「……そんな事して何か得する事なんてあるの?」
「それは何とも言えませんが……リリィ様が聖獣様や精霊王様と契約している事は国内機密でもありますから、それが漏れているとは思えないのですが……」
『無理やりに連れて行くよりも従えさせて連れて行きたいのだろう。レオに関してもそうだと思う』
「ロウ? どう言う事?」
『ダンジョン対決で勝つ事が第一だが、勝った上でお前達を自分の思い通りに動かしたいって事だな。何かで操ってでも』
「操るって……」
『到着したな』
魔道具を見るとボス部屋に入るトレファス兄妹の姿があった。ボスはさっきロウ達が倒したドラゴン。既に復活しているのは恐怖だけどダンジョンの仕組みが判っていないのでそういうモノだとされている。
「何? 何か置いた?」
トレファス兄がドラゴンを挑発している隙に部屋の四角にトレファス妹がサッと何かを置いている。
『召喚の魔道具だな。禍々しい気配がたっている』
兄が呪文を唱えると首につけているペンダントが光り魔道具に向かってその光が吸収された。
妹は土魔法で壁を作り兄はまだ詠唱を続けていた。
『さて、何が出てくるかな』
その言葉と同時にモヤが部屋全体に広がり影が映った。ドラゴンは咆哮をあげている。
モヤが消失するとそこに現れたのはアンデッドドラゴン。
『──!! コイツ……ファブニールか?』
「ファブ? ロウ知ってるの?」
『まぁ一応。だが、普通のドラゴンだった筈なのだが……何故アンデッド?』
ボス部屋のドラゴンはアンデッドドラゴンの毒にやられて暫くして消滅した。
「……強い」
消滅した後宝箱を開けずそのまま放置してアンデッドドラゴンをそのままに兄妹は何か二人で話している。その後キョロキョロし頷くとトレファス兄は姿形を変えた。
その姿は禍々しく魔のモノ特有の黒いオーラを纏っていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる