107 / 122
107.なんかゴメン!!
しおりを挟むトレファス兄は禍々しい魔のモノの姿になった。
魔道具の前で私達は目を見開いて固まっていた。
「魔の……モノ……?」
『トレファス兄が元々そうだったのか、それともなり変わられているのか……』
魔道具の向こうでニヤニヤとしているトレファス兄妹。勝ちを確信しているような表情だ。
実際にはもうすでに私達がダンジョンを制覇し戻ってきている。このまま放置して戻るのもありなんじゃない? なんて思いがムクリと込み上げてくるが、あの魔のモノを放置はできない……。
さて、どうした物かと皆で頭を悩ませていた。
『とりあえずアンデッドドラゴン……あいつとダンジョン内のグールは片付けておかねばならんのじゃないか?』
そうネスルがロウ達に問いかけた。
『まあ確かにそうだな。次に来る奴らの為にもクリーンにしておくべきではあるな……』
ロウはそう言うとよっこいしょと立ち上がり大きく伸びをしてから私達に振り返った。
『リリィ達はどうする?』
「そりゃあ一緒に行くわよ? 何も出来ないけどね」
ロウ達に任せてしまえば簡単な事だけど、トレファス兄妹が何をしようとしているのか確認しなければいけないと思う。
テオも入ると言っているけど皆に止められた。
レオは勿論行くと言っていてライル様セナ様イシスで話し合っている。
『リリィ、奴らが何を考えているのか分からんが良いのか?』
「大丈夫よ。元々私達に売られた喧嘩でしょ? 売られた物は買うし、倍返ししないと気が済まないわ」
『ハハッ!! 成る程。じゃあ我等もリリィと同じ様に奴らに倍返ししないといけないな!!』
ロウがそう言うと皆が笑って頷いた。
───大丈夫かな??
「リリィ、さっきは何もできなかったけど、今度はオレも何かの足しくらいになるようには頑張るよ」
「レオは一緒に居てくれるだけで心強いんだからね!」
アハハとレオと私は笑い少し気を引き締めた。
今回は魔道士のセナ様も一緒に再びダンジョンに入った。
グール達で埋め尽くされたダンジョン内は気分の良い物では無かったが、セナ様がまず状況を確認してOKが出ればロウ達が倒して行く。溢れてきた奴らをレオが倒していた。
私は基本的に皆より後方にいて周りを見ながらレオも十分に強いわ、と感心していた。
私はそんな彼等の強さに引き締めたはずの気を抜いてしまっていたと思う。
行きのように蹴散らしては行かなかったのでボス部屋到着までに時間は掛かってしまったけどそれでも普通の人達よりはかなりハイペースでボス部屋に到着した。
扉を開く。
そこにはトレファス兄妹の姿があり先程まで魔のモノの姿だった兄は元に戻っていた。
「ククク、遅かったではないか? 我等は随分前にボスを倒したぞ?」
「ウフフ、勝負は私達の勝ちね」
トレファス兄妹は口々に勝った勝ったと話してくる。
「精霊姫は我が手の中に。レオはマリアのモノに……」
「あ、お話し中すみませんね」
セナ様がトレファス兄が話しているのを遮って話を進めた。
「えーと、何件かお話ししておかなくてはいけない事があるのでよろしいですか?」
トレファス兄妹は眉間にシワを寄せて聞いている。
「まずですね、レオ、リリィ様は既にダンジョンをクリアされています」
「はぁっ!?」
トレファス妹が淑女らしからぬ声をあげた。
「開始6分半の最短記録でクリアされています。報酬のアイテムも同時に確認済みです。貴方方を待って随分と時間が過ぎてしまいましたけども」
トレファス兄妹をチラリと見ながらセナ様は淡々と話した。
「そんな筈ないわっ! グールだって置いたし!」
「あ、グール達は全て消滅させてありますのでご安心下さいね」
セナ様の言葉を聞いてトレファス妹はワナワナと肩を震わせた。
「ちょっと! どう言う事よ!! シナリオではまだ弱いはずよ!!」
「?? シナリオ??」
「──っどうでもいいわっ!! お兄様!!」
「ククッ仕方ない。精霊姫よ……我が手元に……」
トレファス妹が訳のわからない事を言い出して、兄が私に向かって何かモヤを発した。
───発したのだが、私の守りの力はそれ以上だったらしく特に奴何も起きなかった。
「………… 」
「………… 」
皆が無言で、そして少し悲しい目で兄を見つめた。
「──っっ、もう一度だっっ!!」
そう言って手を翳しモヤを出すがまたモヤモヤっと少し近づいて……その後拡散した……。
「……なんか、ごめん」
意図せず謝罪の言葉が口から漏れ出していた。
8
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる