人と人との間で思う

秋本シラキ

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9章

人と人との間で思う 9章

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仕事先が見つかったのは奇跡であった。亨は鉛筆工場で働いていた。もちろん、まり子はそばにいない。以前と変わらず、亨に対する周囲の目は冷たい。亨と接しようとするものは誰もいない。しかし、亨はそんな周囲のことなどは気にせず、ただ黙々と働いていた。



この仕事も極端な人数不足で入れてもらったのであって、人数が集まったらいつ辞めろと言われるかわからない。しかし、そのことは亨は気にもせず、ただ今はここで懸命に働いていた。



亨は変わった。何が変わったのか?周囲の人間たちではない。自分自身が変わったのである。そんな亨は、自分自身の置かれた運命を不幸だとは決して思わなくなっていた。



新宿駅の西口、人集りができていた。そこには、てィッシュ配りをするまり子の姿があった。もちろん、そこには亨の姿はない。以前と変わらず、まり子に対する人の愛しぶりは異常なものであった。知らぬものが自分勝手にまり子に声を掛け、触れてくる。しかし、まり子はそんな周囲のことなどは気に止めず、ただ、普通の女性と同じようにポケットティッシュを配っていた。



こんなことをやっていて、また殴られたり殺されそうになるかもしれない。しかし、そのときには警察を呼べば言いし、万が一殺されたとしてもそれは自分の運命なんだとあきらめるしかない。そうまり子は思っていた。



まり子は変わった。何が変わったのか?周囲の人間たちではない。自分自身が変わったのである。そんなまり子は、自分自身の置かれた運命を不幸だとは決して思わなくなっていた。
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