【完結】白い結婚をした悪役令嬢は田舎暮らしと陰謀を満喫する

ツカノ

文字の大きさ
8 / 10

旦那様のはなし②

しおりを挟む
王妃の子の振りをして学園に通いだしてすぐに、頭が痛くなるような状況になっていたことを知る。よもや将来の側近候補の有力貴族の子息たちも王妃の子と一緒になって、男爵令嬢に入れ込んでいるとは思わなかった。入れ込んでいる所か、中にはすでに男爵令嬢との愛を貫く為に幼い頃からの婚約者と婚約破棄をしている者もいるという。

それを聞いた時は、いつの間に我が国は一妻多夫制になったのだろうかと一瞬真剣に悩んだものだが、そうではないことを知って別の意味で驚いたものだった。では、五人で男爵令嬢を共有するつもりなのかと考えたが、まだ跡継ぎがいない貴族の子息が誰の子を孕むか解らない一人の女性を共有するのは血筋を重んじる彼らの常識ではあり得ない。とある東の国では、一人の女性を共有することで男同士の結束を深めることもあるらしいが、彼らについてはそういうわけでもなさそうだった。

とはいえ、数代遡れば名門貴族同士の婚姻で、どこかで血は繋がっているだろうし、誰の子でもあっても自分の子として扱うことにしたのかと思いきや、すぐに違うことが解る。

何故なら、それとなく個別に卒業後のことを聞いてみると、皆口を揃えて「男爵令嬢と結婚して、自分の正妻として家に迎え入れます」と答えたからである。もしかして、実は男爵令嬢は五つ子だったとか、実は東の国のニンポウとかいう秘術である『分身の術』の使い手だったりするのかと思ったのだが、勿論そんなわけはなく。

普通に男爵令嬢は一人で、王妃の子を含める五人が各々自分の正妻にするつもりでいただけだった。

どうやって、彼らその望みを実現するつもりなのかは知らない。ただ、彼らの父親の代とは違う結末にはなりそうだった。王妃の場合、女神のように崇拝する彼女を『王妃』にすることで一致団結しており、子世代のようなお互いを牽制し血で血を洗うようなギスギスした雰囲気ではなかった筈で。他人事ながら、どうするつもりなんだと遠い目をしたのは言うまでもない。

儚げで可憐な容姿で王子相手でも天真爛漫で物怖じをしない所が魅力だといわれている男爵令嬢の本命を探ってみても、全員揃っている場所では『アタシはみんなの物よ』と言い、個別に会う時は『実はアナタのことが本命ナンデス』と伝えるあざとさは、田舎に引きこもっていた時に偶に乳兄弟と気晴らしにお忍びで行った近くの村にある酒場の女が思い出された。

恐らく彼女は、天性の『運命の女』なのだろう。権謀術数に明け暮れてる貴族から見れば彼女に何か裏があるように見えるのだろうが、どういうわけか関わり合いになった相手を次々破滅させてしまう女が存在のである。
ああいう女の為に、小さな村の酒場であっても自殺や決闘騒ぎで何人も命を落としたところを目撃した身としては男爵令嬢には身構えずにはいられない。幸運なことに彼女は自分をちやほやしてくれれば誰でも良く、自分に高い物を贈ってくれる人が一番で『将来の王妃』の座への執着もないように見えた。恐らく、卒業しても五人の王族を含む名門貴族の子息からちやほやして貰って一生貢がれる生活を思い描いているのだろう。
だからこそ、王妃の子は『王太子』の肩書きが優位に働かないことに焦って、あんなことをしでかしたに違いない。偶に耳に入る噂によれば、呪いの剣で顔を傷つけただけあって治りが悪いらしい。弟の復帰が長引くのと比例するように、王妃はヒステリックになっていった。

王妃がヒステリックになり始めた頃、ひとつの噂が王宮に流れ始める。
素行の悪い『王太子』を廃嫡して、こんなこともあろうかと密かに王妃が産んだ子を新たな王太子として立てるつもりという噂。男爵令嬢に入れ込む愚かな王太子とは違って、優秀かつ素晴らしい人物だという話に乾いた笑いしか出ない。ただ単に男爵令嬢に入れ込んだ『王太子』が戻ってくるだけだというのに。それに、『王妃の子』と言われるのに『国王夫婦の子』とは言われないことに誰も不自然さを感じていないことも不思議と言えば不思議であった。

その頃から、私の食事にそれとなく毒が入っていたり、量が減らされたり、薄いスープとカビたパンになり、「早く王妃様のお子様がいらっしゃらないか」と聞こえるように嫌みを言われ始める。全てが王妃の思い通りで。死んだ魚のような目をした国王は、力なく彼女の言葉に頷くだけ。
恐らく、卒業パーティーで婚約者を断罪した後に、速やかに私は処分されるのだろう。そして、『顔に傷がある王妃の子』が新しい『王太子』として披露されるに違いない。

不幸中の幸いに、昼食は学園で食べることができたし、嫌々の体で偶に婚約者の屋敷へ足を運べば食事を採ることも可能だった為、餓死するようなことはなかった。それよりも、王宮中の出来事は舞台でも見せられているような気がして堪らなかった。
まるで、市井で未だに上演されている王妃と国王の『真実の愛』の舞台のようで。
自分の生まれとか、現在の状況とか、これからのこととかをさっ引いても、目の前で繰り広げられる出来損ないな喜劇に乾いた笑いしかでない。
産んですぐに死んだ母と自分自身は今更仕方ないとして、前回唯一自分のことを見てくれた王妃の子の婚約者の少女はこの悪意からどうにかしてあげたいと思う。とは言え、王妃や側近候補の貴族子弟に知られないように動くのは難しく、今以上悪評が広がらないようにするのがせいぜいだった。

そんなある日、状況は一転することが起こったのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

皆様ごきげんよう。悪役令嬢はこれにて退場させていただきます。

しあ
恋愛
「クラリス=ミクランジェ、君を国宝窃盗容疑でこの国から追放する」 卒業パーティで、私の婚約者のヒルデガルト=クライス、この国の皇太子殿下に追放を言い渡される。 その婚約者の隣には可愛い女の子がーー。 損得重視の両親は私を庇う様子はないーーー。 オマケに私専属の執事まで私と一緒に国外追放に。 どうしてこんなことに……。 なんて言うつもりはなくて、国外追放? 計画通りです!国外で楽しく暮らしちゃいますね! では、皆様ごきげんよう!

【完結】婚約破棄された悪役令嬢ですが、魔法薬の勉強をはじめたら留学先の皇子に求婚されました

楠結衣
恋愛
公爵令嬢のアイリーンは、婚約者である第一王子から婚約破棄を言い渡される。 王子の腕にすがる男爵令嬢への嫌がらせを謝罪するように求められるも、身に覚えのない謝罪はできないと断る。その態度に腹を立てた王子から国外追放を命じられてしまった。 アイリーンは、王子と婚約がなくなったことで諦めていた魔法薬師になる夢を叶えることを決意。 薬草の聖地と呼ばれる薬草大国へ、魔法薬の勉強をするために向う。 魔法薬の勉強をする日々は、とても充実していた。そこで出会ったレオナード王太子の優しくて甘い態度に心惹かれていくアイリーン。 ところが、アイリーンの前に再び第一王子が現れ、アイリーンの心は激しく動揺するのだった。 婚約破棄され、諦めていた魔法薬師の夢に向かって頑張るアイリーンが、彼女を心から愛する優しいドラゴン獣人である王太子と愛を育むハッピーエンドストーリーです。

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜

よどら文鳥
恋愛
 伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。  二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。  だがある日。  王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。  ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。  レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。  ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。  もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。  そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。  だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。  それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……? ※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。 ※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)

婚約破棄の日の夜に

夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。 ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。 そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです

珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。 そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた 。

「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります

恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」 「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」 十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。 再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、 その瞬間に決意した。 「ええ、喜んで差し上げますわ」 将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。 跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、 王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。 「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」 聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜

腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。 「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。 エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。

処理中です...