天使のトリセツ

切羽未依

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食事の後で

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 卵入りハンバーグ丼も、おみそ汁も、おかずも、天使様は何も言わず、無表情で、全部、食べてくれた。

「食欲がない」ってことは、「美味しい」って、味覚もないのかなぁ…

 俺は聞いてみた。
「味覚は、あるの?『美味しい』って、感じる?」

 天使様が俺を見た。あぶらで、紅い唇が、てらてら、光ってる。
「地上の物を食べたのは初めてだから、何が『美味しい』のか、わからない」
「マジで?――そっかぁ…」

 それって、俺の料理が、天使様の『美味しい』の判断基準になっちゃうってことか?責任重大だな!
 そう思いながら、俺はテーブルの下のウェットティッシュを取って、天使様の唇を拭こうと、手を伸ばした。

 天使様が思いっきし!体を退きましたよ!!マジで俺、傷付く。

なんもしないから。――唇、拭きなよ」
 俺は伸ばした手で、ウェットティッシュを差し出す。

 天使様は、ウェットティッシュを受け取り、唇を拭いた。
 俺はゴミ箱を差し出す。天使様がウェットティッシュを捨てる。俺はゴミ箱を置く。

 天使様は、おしりで回れ右すると、また、空を見上げ始める。

 そんな天使様を、俺は見てられなくて、言った。
「夜じゃ、空、よく見えないだろ。今日は、ここに泊まって、明日、帰りなよ」

 明日も、天気予報は晴れだが!

 天使様は、振り返らない。
 ちっちゃな背中に、しぼんだ羽、バックハグしてえええええええええ


 俺は皿洗いに立ち上がった。

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