ラブプレイ~Hな二人の純愛ライフ~

中村 心響

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「“ハネムーンを楽しむ新婚さん”今回の設定はそれだからカメラは意識しないようにね…」

「……で、どうすれば…」

取り合えずおとなしく手を引かれながらデッキを歩く。

撮影もこれで数回目。

経験はあれど、やっぱりあたしの本職は写されることではないから、一切指示のない撮影は逆にとてもやりずらい。

カメラを向けられれば動きが止まってしまうのが一般人の悲しい性だ。

そう思うあたしを少し前を歩くマリオは振り返る。

「大丈夫。プロが付いてるから」

「……それは心強い」

笑顔のマリオへそう返した言葉に嘘はない。

何だかんだと言ってもやっぱりマリオはプロのモデルだ。

歩いても振り返っても止まっていても……

撮られた画はばっちり決まっている。

今まで一緒に撮影をしてきて何度ととなくマリオにリードを任せっきりなのは、案外あたしもマリオを信頼しきっているってことだから。。。

「そこ、上がってみようか」

マリオはあたしを船の船首へと誘導した。
実際に船が走っていたなら豪快に波をきって進む景色が拝めたんだろう。

柵の端に立つと海面からの高さも眺めもさすがは巨大な豪華客船。

飲み込まれそうなほど圧倒される。


「ちょっと柵の外側に立ってみる?」

「外側に?……」

危険な提案を口にしたマリオを振り返るとハッと気付いた。

「まさか、あれをしろとは言いませんよね?…両手広げて目を閉じるやつ…」

「ああ、あれ?はは…まさか、さすがにあれはもう古いよ」

古い。そうだよね、一時期は誰もが真似をしたあの映画のキメポーズ。

こんな豪華な船の船首だからこそ遣り甲斐はありそうだけど。

そう考えていたあたしの肩をマリオは突然、押していた。

「──…っ…」

あまりの驚きに声も出ない。

目を見開いて一瞬、仰け反ったあたしは自分からしっかりとマリオにしがみついていた。。。


強く抱き付いたあたしの耳元でマリオが楽しそうに笑っている。

「ははっ…そう、これこれ! 僕がやりたかったのはこれだよ」

「……しっ…信じられな…」

ほんの一瞬の恐怖でも心臓はすごくバクバク言っている。

「どう?今のしっかり撮れた」

あたしを抱き締めながら大きな声を掛けたマリオに、カメラマンは親指を立ててニヤリと笑う。

「順調だよ!このぶんなら予定より早く上がれそうだ」

カメラマンのその言葉を聞いてマリオはあたしを覗き込んだ。

「だって。と言うことで──…早く撮影を上がれたらご褒美で最終日にはデートでもして貰えるかな」

本気か冗談か──

マリオはそう口にしてウインクをした。



日本では甘えんぼの夏希ちゃんが待っている。
できるなら予定よりも撮影を早く上がれるに越したことはないけれど──

「急にあんなことされちゃったんだから撮影早く上がれてもチャラですね」

「デートはなし?」

「なしっ!」

これでどうだ、とばかりにマリオに威張って言ってやった。

北海道での撮影といい、スタジオでの撮影といい……不意打ちはマリオの常套手段ではあるけれど。

「それは残念」

マリオは外人さんらしく肩を竦めてリアクションをとる。

余裕のある笑みを浮かべているあたり、ほんとに残念だとは思って居なさそう。。。

そんなやり取りを交わしながら、衣装を変え、場所を変え、パンフレット用の撮影は着々と進んでいく。

このぶんならほんとに早めに日本に帰れそう。

帰ったらたまには夏希ちゃんを大事にしてあげるかな。

なんて。。。

そう思いながらふっと思わず笑ってしまっていた。

病院を退院したあの日──

久し振りに思いっきり二人で抱き合った。

なににも構うことなくテーブルの上で始めた行為。そのお陰で食べ掛けの料理が散れて床もベトベト。

そんな部屋を、朝早くから物音を立てないように静かに掃除する夏希ちゃん。

こっそりベッドからあの姿を盗み見て、夏希ちゃんの底知れぬ愛を感じたわけで。

その無言の意思表示は“愛してる”なんて言葉よりももっとずっと深く、あたしの胸に刻まれていた。

今頃はまた健兄にコキ使われているんだろうな……。

愚痴を溢しながらも結局はやりきってしまう。
そんな夏希ちゃんを思い浮かべながら、あたしも次の撮影の準備に取り掛かった……。



「藤沢さん!今井社長が来てますよ」

スタジオの外からそう声を掛けられた。

「ありがとうございます!直ぐ行きます」

礼を言って、俳優達とスタッフに挨拶をしながら足早にそこを後にする。

次の仕事がかなり押している。場所も遠い為に急ぐ足は少々小走りになっていた。

迎えに来てくれていた社長の車に乗り込むと、社長は直ぐにアクセルを踏む。

「もう向こうは準備万端?」

「ああ。映像もうまくマッピングできたらしい。あとはお前らの迫真の演技次第!」

「迫真? それならまかせて」

当然のように答えた後部座席の俺に、社長はバックミラーを覗いてニヤリと笑い返す。

「アレは忘れてないよな?」

「“アレ”? もちろん。忘れるはずないじゃん!」

意味深な問い掛けをする社長に、俺は隣にあったバッグのポケットを叩いて見せた。

人生を掛けた大勝負。

次の仕事で使う、俺の大事な小道具を忘れる筈がない。

て、言うか。そもそもが仕事でこれを使うのではなくて、今回だけは“これを使う為の”仕事だからだ。

晶さんの撮影もあと残すは2日を残すのみ。
撮りが済んだら二人でゆっくり旅行するんだ。。。

その予定を立てながら、夢見る表情を浮かべた俺を見て、社長が厭らしい含み笑いを覗かせる。



楠木さんは晶さんの撮影に同行している。その代わりに、社長が俺の送迎をしてくれていた。


「向こうに着いたら直ぐにリハーサルだぞ」

「わかってるって」

久し振りのアクション劇だ。

それを心配してか、社長は次の仕事の手順をしつこく確認してくる。

台本はもう覚えた。

あとはスタントマンと息を合わせての立ち稽古。

本番までは時間がない。たぶん、数回のリハーサルのみで本撮りになるはずだ。

正直なところ、変に余裕があるよりも切羽詰まった方が身体が直ぐに動きを覚える。

余計なことを考えるより、アクションは身体の動くままに身を任せた方がいい。

「まあ、浮かれんように気を引き締めて掛かれよ?」

親心を覗かせた社長が前を向いたまま、そう口にする。

俺は無言で頷いた。

バシッと一発決めて、愛も仕事の成果もしっかり手に入れてやる──

静かに息巻く俺は、バッグに大事にしまってあった“アレ”を取り出して、誓うようにしっかりと握り締めた。

「まあ、道中は長い。現場に着くまで時間はたっぷりあるからしっかり休め」

そう言って満足そうな笑みを浮かべた社長がミラーで確認できる。
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