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しおりを挟む舞花をマリオんとこに寄越すのか?ヒンシュク買う覚悟かよ?
芸能事務所の社長と言えば親代わりも同然。バカな子ほど可愛いってやつか?──
俺は黙って行く末を見守った。
「では、宜しくお願いいたします。詳細はウチの楠木と…」
数分間の交渉の末、社長は電話を楠木さんに返す。
インチキ髭の巧みな交渉で、マリオの押した新人だけを宛にしてオファーを要請してきた向こうのマネージャーは大事なクライアントからの仕事を逃さない為に取り合えず舞花で手を打ったようだ。
楠木さんが電話を切ったことを確認して俺は社長に話し掛けた。
「やれんの?舞花に?」
「……しょうがない。間繋ぎになるとは思うが“もし”ってこともあるしな」
「間繋ぎ?」
「舞花に撮影してもらってる間に時間作れるかどうかってこった」
「……舞花じゃたぶん間繋ぎになんないと思うけど? とくにマリオが相手じゃね…」
「だからこっちの調整を急ぐんだよ…でも“もし”変わりにきた舞花が気に入られたら万々歳じゃないか?」
「………」
この手法って…
俺に舞花をけしかけたときと似ている感じがするんだけど!?
そんな呆れ顔で俺は社長を見た。
・
「でもスケジュール空かないってそんな多忙?ウチの新人ちゃんは?」
「………多忙、てか…もともと臨時バイトだからな」
「へえ、…勿体ないね?こんなバカバカ仕事入ってくんのにこっちが本職じゃないって?」
「ああ、だからできれば舞花を気に入ってもらったほうが有り難いってこった」
なるほど…
本職次第のスケジュール調整なわけだ?
仕事が欲しくて偽のスキャンダル企てなきゃいけなかった舞花と大違いじゃん…
尚更、力量の差が問われるな?
「バイトだから事務所にもまったく顔出さないんだ?」
「なんだ聖夜?お前最近、やけにこっちに顔出すと思ったらそれ目当てか?」
「──…!」
社長はニヤリと返し“チクるぞ…”小さくそう呟く。
「べつに目当てなわけないってっ!」
一瞬焦った俺は慌てて弁解していた。
「まあ、会ったってなんてこたないから気にするな。お前のタイプじゃないから」
「……もしかしてぶちゃいく?」
「ああ」
「なる…」
所詮、脚だけってやつか?
「………」
なんだろう。男ってやっぱ、下心の塊なんだろうか?社長のその一言で一気に興味が薄れていった…
俺って強烈、不謹慎なヤツだ──
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