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しおりを挟む「ど、どうするの!?」
思わず健兄に言われるまま食あたりを演じたあたしは走り出したタクシーの中で詰め寄った。
「取り合えず現場に着いたら舞花の交代で撮影入ってくれ」
「──…っ…またそんな急に…」
「向こうはご立腹だと」
「向こうってのは?」
「クライアントのほうだ──…まあ、もちろんマリオのほうもな…」
…ご立腹ったって…
だいたいマリオがセクハラって一体…
あたしはそう考えながらストッキングのCM撮りを思い出した。
大胆な動きに加え、下半身をグリグリ擦り付けてきたマリオを──
「あれをやったのかな…」
「ん? なんだアレってのは?」
あたしの呟きに健兄は聞き返す。
「マリオがセクハラってのは?」
「ああ、楠木の話だとマリオの事務所からのオファーが直接自分にきたと思い込んだらしくてな……ちぃーと、天狗になって我が儘言い出したんだと」
「……」
「そこでマリオに言われたらしいんだよ。“君は頭の栄養も胸に吸い摂られたみたいだね”と──」
なるほど…
セクハラってそれか…
・
あたしは理由を聞いて、何となくホッとしていた。
「…んで、胸がデカイのをバカにされたと、泣いてロケバスから出て来ないままらしい」
「………」
「撮影に穴空いてクライアントはそりゃ大激怒。しかも舞花はクライアント側が選んだんじゃなく、マリオがどうしても晶をって推したその代理だからな……マリオの方も顔が立たないわけだ──…今後の契約が危ぶまれるってやつだな」
「……で、あたしはそんな大事件の中に放り出されるわけだ──…」
「……よくわかったな…」
ただの生け贄じゃん──
「撮影は夕方かららしいから今走れば間に合う──頼むから頑張ってくれ」
なんて他人事のような言い草だろう──我が身内ながら呆れてしまう。
火中の栗を放ろうどころか栗その物になるなんて──
「カップラーメン食い放題だぞ!」
「余計にいやじゃっ! 胸焼けするわっ」
満面の笑みを向けた健兄にあたしはそう言い切って返した。
急ぎで走らせたタクシーは広い草原へと向かう。
冬を迎える前の北海道──
空気が澄んでいるせいか風の冷たさも一際増している。
「楠木さん!」
「ああ、晶さんよかった」
楠木さんはタクシーから降りたあたしを見てホッとした表情を浮かべていた。
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