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しおりを挟む空は快晴──
食べ歩きにはうってつけ。
人混みでサングラスはしていてもすれ違う度に人に振り返られる。
遠巻きに聖夜だと囁かれ、社長は俺の隣を歩いていた晶さんの腕を引っ張った。
「人混みのみでの扱いだ、晶のために我慢しろ」
「……っ…」
つい、チッと舌が鳴る。
晶さんは俺と一緒に外を歩くのを楽しみにしてたのになんだよっ…髭の奴!
距離を置いて前を歩く社長とその彼女、そして晶さんは後ろから着いてくる俺を気にしてチラチラと振り返る。
「この扱いっ──…俺、めっちゃ寂しいじゃん!」
三泊四日の北海道旅行初日、千歳空港についてすぐ社長が借りたレンタカーに乗り込むと俺はそう不貞腐れて叫んだ。
「穴場に行けば人も少ない上に旨いもの食える。いい加減、機嫌直せ!」
「もう、直ってる…」
バックミラーから覗く社長からそっぽを向いて、外の景色を眺める俺の手に、隣に座った晶さんの指先が絡んでいた。
前の座席から見えない位置で手を握り少しずつ二人の距離を近付ける。
そんなさりげない仕草に胸が疼いた。
社長の長年の連れ合いの彼女、真理さんとチンピラ髭を前にしてまるで家族旅行に来た雰囲気になってしまったけどしょうがない…
晶さんとの初デート。市場食堂で生け簀を見て回る晶さんは凄く楽しそうだ。
「うわぁ…あれ捌いて食べたい!」
喜ぶ笑顔は無邪気で可愛いけど口にする言葉は残酷だった。
・
生け簀から揚げたばかりの透明なイカを刺身で食べる。
ちょっと早めの昼食は色んな所へ足を向けての摘まみ食い的な食べ歩きだ。
魚市場の店先で売られる絶品魚介を口にしていると社長の携帯が鳴り響いた。
「おう、どうした?舞花はなんとかやってるか?」
尋ねた内容からして相手は楠木さんなのだろう。
炭で炙られた蟹の足を晶さんと半分こして頬張りながら俺は社長に目を向けた。
「なにっ!?」
小さな注目を集める社長の表情か少し険しくなる。
何事かと見ていると社長は驚く言葉を次に発した。
「マリオが舞花にセクハラ!?」
思わず社長の声に蟹を食う手が止まる。電話口で何やら響いてくる楠木さんの声に社長は唸りながら難しい顔を浮かべ始めた。
切れた電話を見つめて社長はポケットにしまう。
「……っ!?…晶っ、腹をどうした!? なんかあたったかっ」
へっ!?──
突然、晶さんを庇うように抱き込んだ社長に驚き飛び退いた。
「なっ!大丈夫か晶っ!」
「えっ!?── ああっ…い、痛いっ…かもっ…」
「うそ、マジいきなりっ!?」
踞り苦しそうに声を絞り出す晶さんに俺も慌てて顔を覗き込む。
社長はそれを遮るようにして俺の前を塞いだ。
「聖夜、ちょっと真理のお供を頼むっ! 晶を病院連れてくからっ!」
「えっ、病院なら俺も一緒にっ──」
中腰の晶さんに肩を貸してタクシー乗り場へ走りだした社長。それを追い掛けようとした俺を真理さんが引き止める。
「聖夜くんはあたしのお供よ」
「ちょっ、なにそれっ…」
うそっ…晶さん!?
立ち去るタクシーは猛スピードで俺の前から消えていった……。
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