ラブプレイ~Hな二人の純愛ライフ~

中村 心響

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急ぎで旅館に向かうタクシーの中、健兄の電話が鳴り響く。

「楠木だ」

確認するとぽつりとそう口にして電話を受けた。

「──…ああ、わかった。場所は?……──ああ」

短いやり取りをえて電話を切ると健兄はあたしを見る。

「打ち上げ…いってくれ」

「………」

あたしは黙って健兄を見つめ返した。切った健兄の電話がまた直ぐに点滅した。

「これはどうするの?」

電話の画面に流れる夏希ちゃんの名前──

あたしはそれを指差して健兄を覗き込んでいた。


「晶さんっ…」

旅館に着いて顔を見るなり夏希ちゃんが駆け寄って来た。

「大丈夫!?」

「うん…なんとか」

心配そうな表情を見て罪悪感に苛(さいな)まれる…

夕陽に合わせた撮影だった為に移動に時間を取られただけで、ロケ自体は所要一時間もない──

そのお陰であまり大事の仮病を装う必要もなく夕食は北海道の夜の街へと繰り出した。

北海道の旅行通(ツウ)に言わせると旅館やホテル、宿泊先で食事を済ませるなんてもっての他らしい。

外で安くて旨いものを食す──

それが北海道を満喫する極意なんだとか…

てか…あたしの胃ではカップ麺が膨張して旨いものを前にしても箸が進まない…
「まだ調子悪い?」

隣の夏希ちゃんが顔を覗き込む。

その手前では健兄がしきりに目配せをして来ていた。



せっかくの旅行──

のんびり温泉、と美味しい食べ物で舌鼓!──…の筈が、健兄のあり得ない策略であたしはめちゃ忙しい…

「ちょっとトイレに…」

「また!?」

15分置きにトイレに立つあたしに夏希ちゃんは表情を曇らせていた。

大きな海鮮居酒屋の二階にいるロケ班の打ち上げ。あたしは一階のテーブル席を立つとトイレに行くふりをして二階に上がる。

「あ、おかえり。お腹大丈夫?」

「…っ…な、なんとかっ…」


ちょこちょこと席を外すあたしにマリオはそう声を掛けていた。

豆な移動がいい運動になったのか、居酒屋にきて一時間を過ぎた頃には消化の早いカップ麺は腹から消え、マリオが注ぐ酒と新鮮な活き造りに手が進み始める。

「日本酒もワインもイケるならかなり酒豪だな」

マリオはあたしの呑みっプリを見てそう呟いていた。

「ところで彼氏は留守番?」

「うちの社長と食事してます」

まさか同じ場所の一階と二階、掛け持ちで行ったり来たりしてるとは言えず、あたしはテキトーに誤魔化した。

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