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確かハウスクリーニングのバイトのロケだった筈。

煤汚れた作業着は舞花が一生懸命仕事した証だ。

普段、気取ろうとする女がこういう所を見せると男は結構ツボにくる。

いつも俺の前で親父臭い格好して寛ぐ晶さんよりもかなりグッとくるよ……


ねえ、晶さん…

どうしようか……

俺も舞花の何気に変わろうと努力する姿にかなり揺らいじゃってるけど……


晶さんはそんなこと気にも止めないよね、たぶん──

「楠木さん待たせてるなら早く行こう……」

俺は照れてうつ向く舞花の肩を押しながら然り気無く抱く──

妬けばいい。

晶さんも思いきり…

俺以上に嫉妬すればいいよ


そうしてやっと互角にならぶ──


晶さんと俺の想いの天秤が……


それじゃなきゃ、俺、いつまでも不公平なままだから。。。


舞花の肩に手を置いて店を出ながら俺は鏡越しに晶さんの視線を感じてる。


もっと色んな感情をぶつけて欲しい──

願わくば…

髪を振り乱して俺が好きだとなき叫ぶ晶さんを


そんな晶さんを宥めるように抱き締める俺を──

ねえ晶さん…

たまには俺にもそんな役を演じさせて欲しいよ…


暗い車道脇に止めたワンボックスカー。

一向に夢中になってくれない恋人にそんなことを願いながら、俺は舞花の後からその車に乗り込んでいた。


「じゃあ、お先」

人が掃けた店内で、店長が挨拶しながら肩に手を置いていた。

「可愛くしてもらって次は俺とデートしてよ、倉ちゃん!」

ニヤリとレンズ無しのだて眼鏡で笑う店長。

「わけわかんないこと言わずに早く帰れ」

マモルさんはそう言いながら店長を足蹴りする。

何気に気さくなのは二人が元々同期で友人だからなのだろう。

あたしは頭にちらちらと銀ホイルを付けたまま笑っていた。

店のシャッターを半分だけ閉められた店内。マモルさんは店長を見送るとカラーリングのチェックをしにまた戻ってきた。

「そろそろいいかも…」

一枚だけ毛束を包んだホイルを開いて呟くと、マモルさんは何気にデジカメを構えて撮影する。

「なんで仕上がりじゃなくて今、写すんですか~」

少し呆れ気味にあたしは聞いた。

「はは、ごめん。蝶々が止まってる見たいで可愛かったからつい…」

「………」

舌を出して笑いながら口にする。でもそういった後の視線が妖しかった。

あたしはツッコムことなく受け流して黙り込む。

マモルさんはあたしの頭をタオルで包むとそのままシャンプーブースへと誘導した。

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