ラブプレイ~Hな二人の純愛ライフ~

中村 心響

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若君にはまだ先がある──

藤壺は舞い落ちる花弁を目で追いながら視線を下に落とした。

土に落ちた桜の花びらも夜空と同じように黒い反物に柄を描く。

ただ、地に落ちた花びらは夜空を舞う花弁のように自由気儘に躍ることはない…

ただひっそりとそこに佇み…

時が来れば忘れ去られる──

目も向けて貰えず、何度も踏まれ…

やがては土に還る──


それは老いていくこの身と同じ──

美しくも若き君…

その隣に添うて歩くにはこの身はやはり……

「母上…っ…」

想いに耽る義理母の背中を見付け、光の君は後ろから切な気に抱き締めていた──

人目を忍んでの逢瀬に自由はない。

だからこそこうして逢って、手の内に抱き締めれば想いが弾ける。

「夜風が吹く中でまた待たせてしまいましたっ…」

申し訳ない気持ちで光の君は抱き締めた腕に力を込める。

藤壺はその腕をほどくようにそっと身を離し、光の君の胸を押した。



「母上? どうされました」

まるで我が身を拒む表情。そんな藤壺を光の君は厳しい表情で見つめる。

「また──…わたしの好かぬ言葉を口にするおつもりですか母上っ…」

光の君は強く腕を掴んで顔を覗き込む。藤壺はその瞳から逃げるように目を背けて俯いた。

真剣な眼差しが胸を突き刺す──

いたたまれずに目を背けたままの藤壺を光の君はその場に強引に押し倒した。

「───っ!?…や、…やめて」

「嫌ですっ…ほんとにやめて欲しいならっ…」

「───……」

「わたしを刺し殺してでも逃げればいいっ…」

「……っ…」

懐に忍ばせた短刀を光の君は藤壺に見せつける。そして藤壺の手にそれを握らせて我が身の喉元に宛がった。

「──…っ…やめなさいっ…」

「いいえっ!! やめませんっ……」

「───……」

「今更になって……なぜやめられましょうかっ…そうならなぜわたしに貴女は抱かれたのですかっ!?」

覆い被さったまま真っ直ぐに問い掛ける──

若いからこその血潮。実の父を裏切り義理の母と犯す背徳の逢瀬。

藤壺は問われてその答えに戸惑った。光の君は藤壺の頬に手を添えて自分に向かせる。

曇りなき瞳──

若いからこそのひたむきさ

その瞳が目の前の一人の女を逃がさぬように捕らえていた。



後ろで束ねていた艶やかな光の君の黒髪が肩からはらりと前に落ちる。

月を背にして覆う影──

「母上はわたしが単なる若気の気狂いだとでも言いたいのでしょうっ!? 躰さえ与えて置けば気が済むと…っ…まさかそう高を括っていたのではありませんかっ…」

考えていたことを見抜かれて、藤壺は目を見開いた。

その表情を見て光の君は悔しげに顔を強く歪めると、押さえ付けていた藤壺の衣を強引に剥ぎ取っていた──

強く吹く風に桜木が揺れる。

辺り一面に舞い散る桜吹雪。幻惑の夜空に金色の盆のような月が歪んで見える──

白い肌、ふくよかな乳房を手繰り寄せて這う熱い吐息。

最後の戯れと決めて藤壺は閉じた瞳の端から滲んだ涙を溢していた──

それは嬉し涙なのか
息子だと思いながらも昂る我が身に課した穢れへの涙なのか──

手放しで放置していた細い腕が若い男の背中に回る。

息を切らし、上下に激しく揺れる躰。

血の繋がりはなくともこの男は我が息子──

自分を妻にと、めとった男の実の息子…

「はあ……っ…母上っ…」

義理の母に女を求めながらも母と呼ぶ──

この罪をどう償うのだろうか──


小さく身震う躰を上に預けたまま、光の君は藤壺の目尻に滲んだ涙を指先で拭いさる。

そして吐息を溢し、震える頬に軽く口付けた。



光の君は懐に手を入れた。そして忍ばせていた短刀を自らの喉に突き立てる。

「───っ…」

目を見開いた藤壺を、光の君は見つめる。

その濡れた双瞼を細め、悲しい笑みを浮かべてゆっくり口を開いた──

「…母上、泣かないでください……もしも月落ちの闇がそなたを覆い隠すことがあろうとも──…わたしはそなたを見つけてみせる…っ…」

「………」

「たとえ眩(まばゆ)い陽がそなたを陽炎でまやかそうと──っ…わたしはそのぬばたまの瞳の色を見逃さぬでしょう──…」


そう呟いた声が強く震え、光の君の瞳から溢れた雫が頬を伝い落ちていく。

光の君は愛しそうに言葉を紡いでは藤壺の頬に触れていた指先を、剣を握っていた自らの手に添えて微笑んだ──


「……っ…」

「…来世になろうとも…っ…わたしはそなたを離さない──…」


月の光を受けて走る銀の切っ先──

舞い落ちた桜の花弁が梅の色に塗り変わる。

目の前で美しく散る若き華──

光の君の喉元から滴る蜜は藤壺の雪のような肌を彩鮮やかに染め上げる。

乳房に散ったそれはまるで、雪に堕ちた牡丹のように真っ赤に燃え、光の君は愛した人の震えるその紅色の唇にゆっくり顔を落としていた……。







「はいっカーット!」

威勢のいい声が跳ぶ。
一先ずオーケーの声に俺は血糊だらけの顔を上げて舞花に被さる身体を起こした。

「お疲れさま」

肌けた身を直しながら舞花も起き上がる。血糊を使っての撮影はそうNGを簡単には出せない為に、一先ず俺は安堵の溜め息を漏らしていた。


撮ったばかりの映像をモニターで 確認して橘さんは顎に手を添えた。

「んー…ラストだからもう少し欲しいな…」

「欲しいって?」

一緒に映像を確認した俺を見ると橘さんは舞花に声を掛けた。

「藍原さん、胸を出せる?」

「──……」

橘さんの口から出た言葉に舞花のみならず、スタッフも一瞬目を丸くした。

「どうせならその胸を口に含んで愛撫するシーンを撮りたいんだよね…っ…ガツッとした濡れ場ってのをさ…」

腕を組み、今の映像ではイマイチ満足できない口振りで橘さんは苦悶の表情を浮かべて訴えていた。

「どう、藤沢くんは?」

「俺は…監督の指示に添って演技するだけなんで……」

とか言いつつあまりドギツイのはどうなんだろうか──

いくら大人の時間に放送されるとは言われても…

そう思いながら舞花に目を向けると舞花は何やら覚悟を決めた顔を見せていた。

「藍原さんはいけそう?」

「やります…あたし、これといった台詞もないし何処かでここぞって役を演じなきゃ…」

舞花は戸惑いながらもそう口にしていた。

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