男装バレてイケメン達に狙われてます【逆ハーラブコメファンタジー】

中村 心響

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第四章 伝説編

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今朝ティムを迎えに行くと、入れ違いでルイスに呼び出されアル達と三人で遺跡に向かったとユリアから知らされた。

自分も行って見ようかと一瞬思いもしたが、ティムの言う通り“馬は生き物”


朝一番の水汲みと餌は例え這ってでも行かねばならぬほど、大事な仕事でもある。

「…んっ…ほうだったっ! 兄ちゃんにも報告しなきゃなっ」



口から零れ落ちそうなパイを手で押さえながらティムは言う。

「昨日、勇者が見付かったんだっ」

「……―――なにっ!?」

「しかも二人っ」

「マジにか!?」


目を見開くロイドを見ながら頷くとティムはあーん、とまたパイにかぶりついた。

「誰だったんだそれは!?」

追求するロイドにちらっと目をやると、ティムはいっぱいに頬張った口をもぐもぐと動かしてぐっと飲み込む。

「…っんぐ…っしかも! その勇者がルイ兄ちゃんと狼の兄ちゃんなんだって!!」

「ルイス!? と狼のって…レオのことか!?」


うんと頷いてロイドが用意してくれたお茶をティムは美味しそうに飲む。



ルイスとレオが勇者…

ロイドは考えながら無意識に口に手を当てた。


どうやってわかったんだ?

「石に選ばれたんだって」

「――石に?」


ロイドの考えを先読みしたようにティムが口にした。今日のことをロイドに全て伝えるとティムはぽつりと口を開く。


「ねえ兄ちゃん…
オイラ、アルの代わりになってやりたい…」

「ティム…」

「だってっ…アルは女なんだ…これから冒険とか戦いとかっ…女なのにしなくちゃいけないなんて…」


ティム…

「…ティム…だからこそお前達が側に付いててやるんだ…その為に俺だって命を賭けてアイツを守る。だろ?」

ロイドはうつ向いたティムの頭を優しく包み込むと肩を叩いた。

まだ小さな背中。

あと五、六年もすればあっという間に大人の男と変わらぬ姿に成長する。


この歳からこれだけ頼もしいんだ…

いずれ俺は敵わなくなるんだろうな…


大事な人を思う気持ち

心は十分に大人顔負けだ。

ティムはふいにぐっと顔を上げロイドを見た。

「オイラ…今度から剣も習うことにするっ」

「お! いい心意気だ!! だったら俺が指導してやる」

二人は互いに笑い合うと拳をぐっと交差させた。



「じゃあ早めに仕事にかかるか。また何かあったらルイスから声が掛かるかもしれないからな」

「おう!」

ティムの気持ちに突き動かされる。

食べたケーキの後片付けを済ませると二人は気合いを入れて馬小屋の作業に戻った。

「じゃあ、こいつを棄ててくるから後を頼む」

取り替えた藁を荷車に乗せるとロイドはそれを城の裏手の焼却炉へと牽いて行った。


兵士達の出払った城内。

何処の国よりも比較的、安全なこの国の城。
普段は城門に立っている門番二人の兵士も遠征で借り出され、今は精鋭隊一人のみに任されている。

アルは人気の少ない城を見て回ると、あの大樹の元へと足を向けた。


「ほんと、大きな樹…」

小雨の中、大樹を見上げ改めてため息をつく。

地に根付くどっしりとした太い幹。

ルイスが掘り当てた入り口付近には、注意を促す立て看板が立てられている。
大樹の周りをぐるりと一周すると、アルは幹の中にめり込んだ扉を眺めた。


あの時は鍵穴だけだった…

鍵が開いた手応えを感じた瞬間に光りに包まれて吸い込まれるように隊長さんと地下に落ちていった。




光と共に温かい風が体を包んで…

そして体が浮いたような感覚を覚えてる…

落ちた衝撃は何ひとつ感じなくて…
辺りを見回してあんな高い位置から落ちたことを知って、違う意味で驚いた…


あの時は鍵穴しかなかったのに、今は存在を示すようにはっきりと姿を現した扉…

まるで、いつでも自分達を歓迎するかのように周りの土もすっかり取り払われ、地下へと続く扉はそこに在る。

この国が建国される前からあった…

“名も無き村に通じる道 
鍵を手にした認められる者だけが通る道”


古の地図と書物には確かこの大樹の箇所にそう書き印してあったよね…

名も無き村に通じる…か…


アルは黙りこくったまま腕を組みその場に佇むと意を決したように表情を引き締める。

そして扉に手を掛けた。


「あーっ!!…っとちょっと待ったーーっ!!」

…!?

血相変えた叫び声にアルはびくりと動きを止めた。
離れた所から慌てふためきながら走ってきた精鋭の若手隊員はアルの側まできてはあっと息を整えると看板を指差す。

「ここに書いてあるでしょ!? 関係者以外、立ち入り禁止って!!」

「え、でも…僕……」

思いっきり関係者なんですけど?…




アルと変わらぬ背丈。年のころもアルと同じくらいだろうか。

若い隊員はアルの前に仁王立ちになって扉に近付くことを必死で拒む。

アルはその勢いに思わず身を引いていた。

「とにっ…宝探しだなんだって冒険しにくるガキが多くて困るよっ…」


…冒険?

「あ、でも僕、この関係者だから大丈夫だと…」


「また何を言って…君みたいな子供が関係者な訳ないだろ?」

自分の立場を説明しようとしたアルに、若い隊員はシッシッと虫でも追うような動作を繰り返す。

…あ、あれ!?

この人もしかしてあたしのこと知らない?


「あのー…」

参ったな…

従者の事を話していいのかな…


アルは戸惑いながら、自分は城直属の警備兵だと口にしてみた。その途端に隊員は目を剥き出す。

「城直属ぅ!?」

驚いた隊員のその声は焼却炉へ向かう途中のロイドの耳にまで届いていた。


ロイドは足を止めて聞こえてくる会話に耳を傾ける。

―――!?

あれはアルの声か?


誰かに責められて、しどろもどろに応対している声がアルのものだと分かるとロイドは荷車をその場に置いた。

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