【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される

中山紡希

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第三章

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「心配しないでください。わたしはエドガー様しか目に入りません」
「……そんな可愛いことを言わないでくれ。あなたを抱きしめたい気持ちを、今もずっと堪えているんだ」 

 エドガーを見上げてアイリーンはふふっと柔らかな笑みを浮かべた。顔に傷があっても、どこの誰に貶されても、エドガーが「可愛い」と言ってくれるのならばそれでよかった。
 しばらく歩くと、園庭に出た。茶色いタイルの上には丸テーブルがずらりと置かれ、美味しそうな洋菓子が並んでいた。テーブルを囲むように大勢の人々がグラスを片手に談笑している。その傍らでは演奏家が優しい音楽を奏でていた。

「アイリーン!」

 名前を呼ばれて声の方へ顔を向ける。

「オゼット!」

 駆け寄ってきたオゼットは水色の艶やかなドレスを纏っていた。

「エドと一緒に来てくれたのね。ありがとう、嬉しいわ」
「こちらこそ招待してくれてありがとう。あの……義妹のソニアは来ているのかしら?」

 アイリーンの一番の心配事はソニアだった。ソニアは何をしでかすか分からない怖さがあった。

「まだ来ていないみたいだわ。会ったら、二人のラブラブっぷりを見せつけて、今度こそぎゃふんと言わせてやりなさいよ」
「ぎゃふん……?」
「エドは気にしなくていいのよ。これは女と女の問題だから」

 不思議そうな顔をするエドガーをオゼットはふわりと交わす。
 それから、オゼットはアイリーンとエドガーにたくさんのお菓子を勧めてきた。振る舞われている菓子の中には今まで見たことがない珍しい物もたくさんあり、アイリーンは心を弾ませながら菓子を頬張った。
 ガーデンパーティを二人は心から楽しんだ。アイリーンとエドガーは同じ菓子を食べて美味しさを共有し、さらに感想を言い合った。二人が一番気に入ったのはアーモンドの良い香りがするマドレーヌだった。アイリーンはエドガーと過ごす穏やかな時間を満喫し、心配の種であったソニアのことはすっかり頭から消え去っていた。
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