【完結】一夜限りのはずが、ハイスぺ御曹司に熱烈求愛されて一途な愛を刻み込まれました

中山紡希

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第一章 謎のイケメン御曹司の登場

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「気強そうだけど、超美人じゃね?」

扉が閉まる直前、そんな男の声がした。
私の評価は自分自身で決める。美人かどうかなんて、人のことを勝手に評価して口に出すな。
用を足すと、バッグからお気に入りのブランドの花柄タオルで手を拭いてトイレを出る。

すると、タイミングの悪いことに黒川さんのいるグループがレジで会計をしているところだった。
……不思議だ。財布を手にしているのは彼女だけ。
グループの全員が黒川さんに「さすが大手広告代理店勤務!」「ゴチです!」と安っぽい笑顔を浮かべて褒め称えている。

「え~、あたしが全部払うのぉ……?まあ、確かにあたしはみんなよりは高収入だけどぉ……」

全員分の金額と思しき札束を淡いピンク色の長財布から抜き出そうとする彼女を見ていられず、私はカツカツとハイヒールを鳴らして彼女たちの元へ歩み寄った。

「どうしてあなたが全部払うの」
「なっ……!白鳥さん……」

黒川さんは私に気付き、苦々し気な表情を浮かべる。
彼女が私を苦手としているように、私も彼女が苦手だった。
水と油の関係。それでも、黙ってなどいられない。

「お金出す価値なんてないわよ。この男たち、あなたのことを二人で持ち帰るってトイレの前で作戦会議していたんだから」

私の言葉に男たちがギョッとしたように目を見開き、気まずそうに視線を泳がせる。

「えっ……、なにそれ……」

空気が凍り付き、黒川さん以外の二人の女子が目を見合わせて頬を引きつらせる。

「言いたいのはそれだけだから。じゃあね」

私はそのまま席に戻った。
黒川さんたちが帰るならば、私が帰る必要はない。
早速イカゲソのから揚げと生ビールを追加注文する。

騒がしい黒川さんたちグループが店を去り、ようやくくつろげる。

「……うまっ」

届けられたビールをグイっとあおり、イカゲソをつまむ。

あの後、黒川さんが全員分の支払いをしたのか、男たちに持ち帰られたのかは定かではない。
けれど、週明けの月曜日の今日。
営業部の人間にはそのときの話に盛大な尾びれと背びれがついて拡散された。
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