【完結】一夜限りのはずが、ハイスぺ御曹司に熱烈求愛されて一途な愛を刻み込まれました

中山紡希

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第一章 謎のイケメン御曹司の登場

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「でもそうなると、かなりの時間がかかると思います。コンセプトを考えてクライアントへ提案して合意をもらわなくてはならないですし……」

伍代さんと斎藤さんが『旬デリカ』について真剣に話し合っている。

「そうですね。それに、発行元の出版社を決めないと。できれば、料理関係に強い出版社で出したいと思っています」
「はい。ですが、この案件は元々白鳥さんが担当していたものなんです。それを私が代わりに担当させてもらっていて……。なので、白鳥さんにお戻ししたほうがいいかと……」

斎藤さんはチラリと私のほうへ視線を向けて、遠慮がちに言った。
フリーペーパーではなく雑誌ともなれば、売り上げが全く違ってくる。
当たればでかい案件だ。
私は椅子ごと体を斎藤さんのほうへ向けた。

「私に戻す必要はありませんよ。フリーペーパーの企画から進行まで行ったのは斎藤さんですから」
「で、でもこの案件は白鳥さんが一緒に付いてきてくれてプレゼンしてくれたから通った企画ですし……」
「それは違います。企画が良かったから、採用になって今の仕事に結びついたんです。雑誌になるならなおさらのこと、斎藤さんのままでいきましょう」

人の手柄を当たり前のように横取りできる人間にはなりたくない。
それに、料理の苦手な私が立てた企画ではそもそもクライアントが首を縦に振ってくれたのかも微妙なところだ。

「……本当に……いいんですか?」

斎藤さんの声が震えている。

「もちろんです。ただ、斎藤さんにはお子さんもいらっしゃるので、今後負担になるようなことがあれば私がフォローに入ります。それでいいですか?」

私たちの話を真横で聞いていた伍代さんに尋ねると、大きく頷く。

「白鳥さんもこう言ってくれていますし、斎藤さんでいきましょう。斎藤さんなら主婦として、さらに母としてクライアントにリアルな声を伝えることができますし、適任かと思っていました。詳しくはまた後で話しましょう」

二人の会話から再び意識を目の前のパソコンに向けようとしたとき、通路を挟んで向かい側に座る黒川さんが目についた。

気だるげにデスクに肘を突き、手のひらに顎を乗せてジッと私の隣の席の斎藤さんを睨みつけている。

「ねえ、黒川さん。頼んでおいた資料ってもう用意できてる?」

そう尋ねると、黒川さんはハッとしたように目を見開いてへらりと笑う。

「すいませぇん。今から用意します~」

たった数時間で揃えられる資料を昨日頼んだというのに、今日になってもできていないなんて。
黒川さんに頼むなら、自分で動いたほうが圧倒的に早い。
こめかみが引きつりそうになるのをぐっとこらえる。

悪びれる様子もなく今頃になってようやくパソコンを開く彼女にげんなりしながら、私は再びパソコンに目を落とした。
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