【完結】一夜限りのはずが、ハイスぺ御曹司に熱烈求愛されて一途な愛を刻み込まれました

中山紡希

文字の大きさ
34 / 100
第三章 近付く距離

薄っすら口元に笑みを浮かべる彼から逃げるように立ち上がろうとする。

「なんで逃げるの?」

彼は私の腰を抱く腕に力を込める。

「あの……伍代さん、いくらなんだって近すぎませんか……?」
「うん、近いね。だけど、昨日愛し合った仲なんだし、これぐらい普通でしょ?ほら、お互い服着てるしさ」
「そ、そういうことではなくて!」
「じゃあ、どういうこと?」

彼は飄々とした表情で聞き返す。

「確かに昨日、私と伍代さんは関係を結びました。それは認めます」
「よかった。ちゃんと覚えてるんだね」
「それは、もちろん。私は望んであなたに抱かれました。ただ、私たちは割り切った一夜限りの関係です。昨日のことはお互い水に流して、今後はまた健全な上司と部下に戻りましょう」

私の言葉に彼は眉を寄せて不服気な表情を浮かべた。

「俺、一夜限りなんて言った?」
「直接的には言われてませんけど、試しに抱かれてみないかって言いましたよね?」
「言ったよ。だけど、これで終わりにする気はない」
「……は、はい?」

あまりの驚きに声が裏返る。これで終わりにする気はないって、じゃあ一体どうするつもりなんだろう。
すると、あんぐりと口を開ける私を見て彼はクックッと楽しそうに肩を震わせて笑った。

「あ、ありえません!同じ会社の同じ部署で上司と部下がそういう関係になったら仕事がやりずらくなりますし」
「そういう関係って?」
「身体だけの関係ですよ!ていうか、分かっててわざと聞いてますよね?」
「ははっ、ごめん。なんか焦ってるところが可愛くてつい意地悪したくなった。じゃあ、身体だけの関係じゃなくて、ちゃんと付き合おうって言ったら?」

彼は私の顔を覗き込んで真っすぐ射貫くような双眸を向ける。
なぜか彼に見つめられると、胸が苦しくなって、甘酸っぱい感情が込み上げてきた。
それを悟られないように、彼から目を反らす。

「……伍代さんとお付き合いするなんて、ありえません」

彼の言葉を一蹴した。

実際、こっそりと社内恋愛をしている人は大勢いる。
違う部署同士で付き合ったとか別れたとか、そういう情報はあっという間に社内中に知れ渡り、人々の噂の種になる。
そういうものが私にとっては煩わしい。
もう二十八歳だし、良い相手がいればお付き合いをしたいとは思う。
けれど、それは今じゃない。
今は結婚したいと思える相手も好意を寄せる相手もいない。
営業部でしっかりと実績を残したい。

広告代理店の仕事は楽ではない。
つらい業務から逃げるために、高給取りの旦那を見つけて専業主婦になった同期もいる。

もちろんそれは、悪いことではない。
その子は仕事を辞めてからのほうが幸せそうだし、幸せの形は人それぞれだと思う。

今の私の幸せは仕事で成功を収めること。
だから、私は私の幸せの為に、仕事へ飽くなき情熱を注いでいるのだ。


「俺のこと、そんなに嫌い?」

伍代さんはやれやれと溜息を吐いた。

「嫌いというか……、身体の関係を持った今私が言うのもなんですが、伍代さんみたいな遊び人は苦手なんです」
「俺が遊び人?」
「だって、私みたいな強気な女にまで手を出すなんて、よっぽどですから。伍代さんなら女性に困らないでしょ?」
「いや、それは心外だよ。昨晩は確かに不純な気持ちがあった。だけど、俺は家に女性を連れ込んだりしないし、抱かないよ」

彼は不服気に言い返す。その表情は真剣そのものだった。
その言葉を鵜呑みにしてしまいそうになり、慌てて感情にブレーキをかける。
体の関係を持ってしまった以上、彼が私に望むものなどないはずだ。
今の会話は全てリップサービスだろう。

「いろいろとご迷惑をおかけしてすみませんでした。後日、なにかお礼をさせてください」

淀みのない口調で言うと、私は彼の腕からするっと抜けだしてチェストの上の服を手に取った。

「じゃあ、お礼して」

すると、私に続いてベッドから立ち上がった彼は、私の腕の中にある服を再びチェストの上に戻してにっこりと微笑んだ。


感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! ✽全28話完結 ✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 ✽他誌にも掲載中です。 ✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。 →表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?