【完結】ハイスぺ副社長になった初恋相手と再会したら、一途な愛を心と身体に刻み込まれました

中山紡希

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第二章

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「君は確か陽介の第一秘書だったな。えっと、名前は……」
「秋月と申します」
「ああ、秋月さんだったね。こちらは八乙女商事のご令嬢、八乙女茜さんだ。モデルをやっているんだ。美人でスタイル抜群だから目立つだろう?」

どうやら彼女のご機嫌取りをする作戦のようだ。
紹介を受けた流れで頭を下げて挨拶をし、専務の言葉に同意する。

「専務のおっしゃる通り、お綺麗でスタイルが良くて羨ましい限りです」

年は私と変わらないだろう。身長は百七十センチほどだろうか。
ミニスカートから覗く足には無駄な贅肉が一切ない。
小顔で華やかな顔立ちの彼女は、お世辞抜きに誰もが振り返るほどの美女だった。
私の答えに気を良くした専務は饒舌になる。

「そうだろう?女性の目から見ても茜ちゃんは美人だからな。うちと八乙女商事は深い繋がりがあるんだ。今後も会う機会があるだろうから、茜ちゃんのことをしっかり覚えておいてくれ」
「承知しました。では、私はこれで――」

頭を下げて去ろうとしたタイミングで、茜さんがおもむろにゴールドチェーンの高級ショルダーバッグの中に手を突っ込んだ。スマホを取り出した拍子にブランドもののポーチが彼女のヒールの近くに落ちた。

けれど、彼女はポーチを拾い上げようとはしない。
不思議に思っていると、彼女が苛立ったような声を上げた。

「なにボケっとしてんのよ。あたし、スカートなのよ?さっさと拾いなさいよ!」

鋭い目で睨み付け、顎で指示を飛ばす。
丈の長さは違えど、私だってスカートを履いている。
とはいえ、そんな言い訳は彼女の前では通用しないだろうとすぐに察し、私はポーチを拾い上げてパンパンッと埃をはらって彼女に手渡した。

「言われないとできないなんて、気が利かない女ね。そんなんで陽介さんの第一秘書が務まるわけ?」

棘のある言い方だった。

「茜ちゃん、彼女は秘書になってまだ一か月ほどのひよっこなんだ。大目に見てあげてくれ。あっ、タクシーが来たよ。もう行こう」

車道にハザードを付けた個人タクシーが止まり、二人が乗り込む。私は深々と頭を下げてタクシーを見送る。
車が走り去り、悔しさに拳をきつく握りしめる。
彼女に侮辱されたことや専務にひよっこだと揶揄されたのが悔しかったのではない。

早瀬商事の副社長である陽介くんの評判を落とすようなことをしてしまったことがなにより悔しかった。
彼女の口ぶりからして、陽介くんとも顔見知りなのだろう。
そんな彼女に対しての気遣いと配慮が足りなかった。
白洲さんに褒められていい気になっていた自分を戒め、今一度気を引き締めた。
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