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【巨大聖戦編】第7章「誰がための選定」
162話 裏切る理由
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空が橙色に染まり始めている。ティアルの話が終わる頃には、僕たちはとある洞窟に辿り着いていた。僕は薄暗い洞窟の中で光を生み出して、辺りを照らす。ここで一度情報を整理することになった。
僕がルマンさんを押していたので、洞窟の端に立たせる。
「トゥーリもナターシャたちもいなくなった後、私はシオンたちを街に残していった。ルマンを連れてきたのは、本人からの要望だったんだ」
ティアルがルマンさんの照明部分をぽんぽん叩きながら言った。叩くたび、赤い宝石のような照明が短く点滅する。
『本当はオルフも連れてきたかったんだがな。まだ目覚めていなかったし、ティアルと一緒にみんなを宮殿に運ぶことはできたんだが』
「そこで、宮殿が襲撃されたということですか」
『そういうことだ。奴らは中庭のゲートを使って逃げた。ティアルは固有魔法でボクを小さくして、黒いローブの奴らに扮してゲートに飛び込んだのさ』
ジュリオはふむふむ、と頷きながら聞いている。クロウは僕の横で壁に寄りかかりつつ、「度胸あるな」と感心している。
そこまで話し終えると、ティアルは俯いて黙り込んでしまった。ルマンさんも、最低限の成り行きを話したら口数が減ってしまった。
僕は口を開いていないというより、話を聞くので精一杯だった。
────まさか、トゥリヤまでアーケンシェンを裏切っていたなんて。
「クロウ。君はトゥリヤのこと、知っていたのかい?」
話が終わってから、僕はようやくクロウに声をかけられたものの、「知らねぇ」と素っ気ない答えが返ってくる。
「というか、別にどうでもいい。オレが頻繁に話していたのはオマエとアリアだけだし。そもそも、オレはもうアーケンシェンじゃねぇからな」
「……そうだったね」
「ミストリューダに入ったアイツのことは、ジュリオの方がよく知ってるんじゃねぇのか」
僕たちの前でごつごつとした壁に寄りかかりつつ、ジュリオはそうですね、と岩肌の天井を見上げた。
「ノルンという構成員の正体がトゥリヤ様だとは、つい最近まで気づきませんでした。ただ、本人はリコリス……ナターシャのことを、かなり前から監視していたようです」
「そうなのかい?」
「ぼくはキャッセリアには短い期間しかいなかったので、トゥリヤ様が言っていた事件についてはよく知らないのですが。彼がミストリューダに入ったのは十年ほど前の話だそうです」
「……『グレイスガーデン殺傷事件』が起きたのも、十年前だった」
ナターシャさんを監視していたなんて、本人は言っていなかった。個人的にやっていたことなのかもしれない。
僕自身、年齢は比較的近いものの、ナターシャさんのことはよく知らない。夢牢獄事件のとき、グレイスガーデンの子供たちが被害に遭っていたから関わりがあったくらいだ。多分、ジュリオやトゥリヤの方がナターシャさんについて知っていることは多いだろうけど。
考えれば考えるほど、自然と拳を強く握ってしまう。
「……怒っているんですか、クリム様」
ジュリオに言われてようやく、自分が静かな怒りを露わにしていたことに気づいた。
「当たり前だよ。トゥリヤもナターシャも、ミストリューダに加担した神たちも……みんな、勝手すぎる」
地面を睨みつけていた僕を、ジュリオは鼻で笑ってくる。
「怒る対象を間違えていますよ、クリム様。ぼくたちは裏切りたくて裏切ったわけじゃありません。トゥリヤ様に関しては、そうでもしないとナターシャを監視し続けられなかったんだと思いますが」
嗤われて腹が立たないわけもなく、ジュリオへ厳しい目を向ける。彼は笑みを張り付けたまま、僕と目を合わせる。
「あなた自身も自覚しているんじゃないですか? 自分の無力さを。神としての不完全さを」
「……何が言いたいの、ジュリオ」
「あなたが怒るべきは他でもない、アイリスですよ。神は完全な存在であるはずなのに、ぼくたちはそれとは程遠い。ぼくたちを不完全に生むことしかできなかったアイリスを憎む権利は、あなたにだってあるんですよ」
僕がアイリス様を憎む? ……ありえない。彼女を信用していないだけで、憎悪するほどの感情はない。一応、生み出してもらった恩くらいはある。
それでも、自分は神と呼ばれるにしてはあまりにも欠陥が多すぎるとは思うが。
「そこまで難しく考えるこたぁねぇよ。簡単な話だ、アイリスは詰めが甘すぎた。秘密があるならあるで構わないから、墓まできちんと持っていけってこった。誰にも迷惑かけることなく、な」
僕もジュリオも、思わずクロウに目を向けた。珍しく、クロウがまともなことを言っている気がしたのだ。
「……まさか、クロウリー様からそんな言葉が出てくるとは思いませんでした」
「はぁ? 当たり前のことだろ。アイツもカラスのじじいも、都合の悪いことは徹底的に隠そうとするからな。『最高神代替候補』の件だってそうだろ」
驚きを隠せないジュリオに対し、クロウがまたきつい態度をとる。相変わらずの二人を見ながら、僕は考えた。
デミ・ドゥームズデイの数日前から行方不明だったとき、彼はアイリス様とカトラスさんに殺されそうになったと話していた。そうなった原因は、クロウが何か「知ってはいけないこと」を知ってしまったせいかもしれない。
だが、それは「最高神代替候補」の秘密ではなさそうだ。他にアイリス様たちが隠していること、それもアーケンシェンの処分に匹敵するほどの情報なんてあるのか……?
『キミたち、『最高神代替候補』について知っているんだな』
赤い宝石が光り、ルマンさんが僕たちに声をかける。ジュリオは一度ルマンさんに目を向けるも、すぐに目を逸らそうとした。
「……あなたには関係のないことです。あなたはただの武器で、神ですらないのでしょう?」
『この名を聞いた後でもそう言えるか? マロン・ローぺリア……聞き覚えはないか?』
はっと息を飲み、ジュリオは目の色を変えた。僕には、よくある神の名前にしか思えなかったけれど。
「『最高神代替候補』第一号の名前ですよね。それを知っているということは、まさか」
『ああ。ボクがこのバイクの姿となる前は、マロンという名の神だった。自分がそうだと知ったのは、皮肉にもこの姿になってからの話だけどな』
「……なるほど。その名を聞いたら、あなたがどうしてその姿になったのかもなんとなく理解できました」
『ボクが成功例だったら、キミたちに負担を負わせることもなかったのかもしれない……すまなかった』
「あなたに謝られても意味はありませんがね」
言葉に若干の棘があったが、ジュリオの顔が少し安堵したものになった。
アイリス様の代わりとなる神が全員で何人いるのかわからないが、ここまでで五人はいることがわかった。厳密には、ルマンさんはもうすでに一回死んでいる身だから、きちんと生きているのは四人となる。
誰がアイリス様の後を継ぐことになるのだろう。セルジュやユキアといった、僕がよく知る神たちがキャッセリア全体をまとめる光景なんて、正直に言うと全然想像できない。
……いや、今はまだ後継者のことを考えるべきじゃないな。アイリス様はまだ生きているのだから。
「ルマンさん。さっきのティアルの話にあった状況はわかってるんでしょ? 最後にトゥリヤは何をしたの?」
最後、話を聞いただけではどうしても理解できない部分があった。僕がそれについて尋ねると、照明部分を赤く光らせながら答える。
『トゥリヤは、ボクに時の断片をくれた。そこには色々な手がかりがあった。「ごめんなさい。あとはよろしくお願いします」というメッセージを添えてな』
「……何がごめんなさいだ。何もかもを傷つけて、私たちのことまで裏切ったくせに!!」
武骨な岩肌に拳を叩きつけ、ティアルはさめざめと涙を流す。それから洞窟の端でうずくまり、溢れ出す感情をこらえようとしていた。
もし、トゥリヤに会うことができるなら、きちんと話をしなくてはいけない。たとえ、刃を交えることになるとしても。事情を少しでも知った以上、彼一人に背負わせ続けるわけにはいかない。
「ルマンさん、その情報とやらを教えて。もしかしたら、ミストリューダの他の隠れ家の場所がわかるかもしれない」
『ふむ。キミたちも各々救いたいひとがいるだろう。レイチェルの分まで、みんなには生きてほしいからな』
「……知ってたんだね」
『ティアルからすでに聞いていたんだ。正直、前々から覚悟していたことではあったんだが。親友を二度も失うことになると、やはり苦しいよ』
救えなかったひとを忘れることなど、僕にはできない。今生きている神たちは、僕が守らなくてはならない。そんな決意を固めた。
「クリム。クロウリーなんか信用していいのかよ? それに、そこにいるセルジュに似た奴も訳ありじゃねぇのか?」
涙の跡を拭いながら、ティアルがそう尋ねてきた。僕がティアルに話したのは、アイリス様を撃ち殺そうとした犯人は特定したというところまでで、ジュリオが実際の犯人ということは知らない。
僕は小さく息をついて、彼女の橙と赤のオッドアイを見遣る。
「……彼らのことは利用しているだけに過ぎない。どの道、僕一人じゃここまで辿り着くことはできなかったからね」
「それならいいんだけど。あんまり肩入れしすぎるなよ。また裏切られたら……」
「もう慣れた。だから大丈夫」
一度裏切った者が二度と裏切らない保証はない。心の底から信じなければいい話だ。僕は断罪神として役目を果たせるならなんだってする。そうしなければ救えないものがあるのだから。
僕たちはルマンさんから、必要な情報を素早く聞き出していく。
洞窟の外は、だんだんと暗くなって視界が悪くなっている。急いで情報をまとめて動き出したとしても、夜の訪れは避けられない。
空が橙色に染まり始めている。ティアルの話が終わる頃には、僕たちはとある洞窟に辿り着いていた。僕は薄暗い洞窟の中で光を生み出して、辺りを照らす。ここで一度情報を整理することになった。
僕がルマンさんを押していたので、洞窟の端に立たせる。
「トゥーリもナターシャたちもいなくなった後、私はシオンたちを街に残していった。ルマンを連れてきたのは、本人からの要望だったんだ」
ティアルがルマンさんの照明部分をぽんぽん叩きながら言った。叩くたび、赤い宝石のような照明が短く点滅する。
『本当はオルフも連れてきたかったんだがな。まだ目覚めていなかったし、ティアルと一緒にみんなを宮殿に運ぶことはできたんだが』
「そこで、宮殿が襲撃されたということですか」
『そういうことだ。奴らは中庭のゲートを使って逃げた。ティアルは固有魔法でボクを小さくして、黒いローブの奴らに扮してゲートに飛び込んだのさ』
ジュリオはふむふむ、と頷きながら聞いている。クロウは僕の横で壁に寄りかかりつつ、「度胸あるな」と感心している。
そこまで話し終えると、ティアルは俯いて黙り込んでしまった。ルマンさんも、最低限の成り行きを話したら口数が減ってしまった。
僕は口を開いていないというより、話を聞くので精一杯だった。
────まさか、トゥリヤまでアーケンシェンを裏切っていたなんて。
「クロウ。君はトゥリヤのこと、知っていたのかい?」
話が終わってから、僕はようやくクロウに声をかけられたものの、「知らねぇ」と素っ気ない答えが返ってくる。
「というか、別にどうでもいい。オレが頻繁に話していたのはオマエとアリアだけだし。そもそも、オレはもうアーケンシェンじゃねぇからな」
「……そうだったね」
「ミストリューダに入ったアイツのことは、ジュリオの方がよく知ってるんじゃねぇのか」
僕たちの前でごつごつとした壁に寄りかかりつつ、ジュリオはそうですね、と岩肌の天井を見上げた。
「ノルンという構成員の正体がトゥリヤ様だとは、つい最近まで気づきませんでした。ただ、本人はリコリス……ナターシャのことを、かなり前から監視していたようです」
「そうなのかい?」
「ぼくはキャッセリアには短い期間しかいなかったので、トゥリヤ様が言っていた事件についてはよく知らないのですが。彼がミストリューダに入ったのは十年ほど前の話だそうです」
「……『グレイスガーデン殺傷事件』が起きたのも、十年前だった」
ナターシャさんを監視していたなんて、本人は言っていなかった。個人的にやっていたことなのかもしれない。
僕自身、年齢は比較的近いものの、ナターシャさんのことはよく知らない。夢牢獄事件のとき、グレイスガーデンの子供たちが被害に遭っていたから関わりがあったくらいだ。多分、ジュリオやトゥリヤの方がナターシャさんについて知っていることは多いだろうけど。
考えれば考えるほど、自然と拳を強く握ってしまう。
「……怒っているんですか、クリム様」
ジュリオに言われてようやく、自分が静かな怒りを露わにしていたことに気づいた。
「当たり前だよ。トゥリヤもナターシャも、ミストリューダに加担した神たちも……みんな、勝手すぎる」
地面を睨みつけていた僕を、ジュリオは鼻で笑ってくる。
「怒る対象を間違えていますよ、クリム様。ぼくたちは裏切りたくて裏切ったわけじゃありません。トゥリヤ様に関しては、そうでもしないとナターシャを監視し続けられなかったんだと思いますが」
嗤われて腹が立たないわけもなく、ジュリオへ厳しい目を向ける。彼は笑みを張り付けたまま、僕と目を合わせる。
「あなた自身も自覚しているんじゃないですか? 自分の無力さを。神としての不完全さを」
「……何が言いたいの、ジュリオ」
「あなたが怒るべきは他でもない、アイリスですよ。神は完全な存在であるはずなのに、ぼくたちはそれとは程遠い。ぼくたちを不完全に生むことしかできなかったアイリスを憎む権利は、あなたにだってあるんですよ」
僕がアイリス様を憎む? ……ありえない。彼女を信用していないだけで、憎悪するほどの感情はない。一応、生み出してもらった恩くらいはある。
それでも、自分は神と呼ばれるにしてはあまりにも欠陥が多すぎるとは思うが。
「そこまで難しく考えるこたぁねぇよ。簡単な話だ、アイリスは詰めが甘すぎた。秘密があるならあるで構わないから、墓まできちんと持っていけってこった。誰にも迷惑かけることなく、な」
僕もジュリオも、思わずクロウに目を向けた。珍しく、クロウがまともなことを言っている気がしたのだ。
「……まさか、クロウリー様からそんな言葉が出てくるとは思いませんでした」
「はぁ? 当たり前のことだろ。アイツもカラスのじじいも、都合の悪いことは徹底的に隠そうとするからな。『最高神代替候補』の件だってそうだろ」
驚きを隠せないジュリオに対し、クロウがまたきつい態度をとる。相変わらずの二人を見ながら、僕は考えた。
デミ・ドゥームズデイの数日前から行方不明だったとき、彼はアイリス様とカトラスさんに殺されそうになったと話していた。そうなった原因は、クロウが何か「知ってはいけないこと」を知ってしまったせいかもしれない。
だが、それは「最高神代替候補」の秘密ではなさそうだ。他にアイリス様たちが隠していること、それもアーケンシェンの処分に匹敵するほどの情報なんてあるのか……?
『キミたち、『最高神代替候補』について知っているんだな』
赤い宝石が光り、ルマンさんが僕たちに声をかける。ジュリオは一度ルマンさんに目を向けるも、すぐに目を逸らそうとした。
「……あなたには関係のないことです。あなたはただの武器で、神ですらないのでしょう?」
『この名を聞いた後でもそう言えるか? マロン・ローぺリア……聞き覚えはないか?』
はっと息を飲み、ジュリオは目の色を変えた。僕には、よくある神の名前にしか思えなかったけれど。
「『最高神代替候補』第一号の名前ですよね。それを知っているということは、まさか」
『ああ。ボクがこのバイクの姿となる前は、マロンという名の神だった。自分がそうだと知ったのは、皮肉にもこの姿になってからの話だけどな』
「……なるほど。その名を聞いたら、あなたがどうしてその姿になったのかもなんとなく理解できました」
『ボクが成功例だったら、キミたちに負担を負わせることもなかったのかもしれない……すまなかった』
「あなたに謝られても意味はありませんがね」
言葉に若干の棘があったが、ジュリオの顔が少し安堵したものになった。
アイリス様の代わりとなる神が全員で何人いるのかわからないが、ここまでで五人はいることがわかった。厳密には、ルマンさんはもうすでに一回死んでいる身だから、きちんと生きているのは四人となる。
誰がアイリス様の後を継ぐことになるのだろう。セルジュやユキアといった、僕がよく知る神たちがキャッセリア全体をまとめる光景なんて、正直に言うと全然想像できない。
……いや、今はまだ後継者のことを考えるべきじゃないな。アイリス様はまだ生きているのだから。
「ルマンさん。さっきのティアルの話にあった状況はわかってるんでしょ? 最後にトゥリヤは何をしたの?」
最後、話を聞いただけではどうしても理解できない部分があった。僕がそれについて尋ねると、照明部分を赤く光らせながら答える。
『トゥリヤは、ボクに時の断片をくれた。そこには色々な手がかりがあった。「ごめんなさい。あとはよろしくお願いします」というメッセージを添えてな』
「……何がごめんなさいだ。何もかもを傷つけて、私たちのことまで裏切ったくせに!!」
武骨な岩肌に拳を叩きつけ、ティアルはさめざめと涙を流す。それから洞窟の端でうずくまり、溢れ出す感情をこらえようとしていた。
もし、トゥリヤに会うことができるなら、きちんと話をしなくてはいけない。たとえ、刃を交えることになるとしても。事情を少しでも知った以上、彼一人に背負わせ続けるわけにはいかない。
「ルマンさん、その情報とやらを教えて。もしかしたら、ミストリューダの他の隠れ家の場所がわかるかもしれない」
『ふむ。キミたちも各々救いたいひとがいるだろう。レイチェルの分まで、みんなには生きてほしいからな』
「……知ってたんだね」
『ティアルからすでに聞いていたんだ。正直、前々から覚悟していたことではあったんだが。親友を二度も失うことになると、やはり苦しいよ』
救えなかったひとを忘れることなど、僕にはできない。今生きている神たちは、僕が守らなくてはならない。そんな決意を固めた。
「クリム。クロウリーなんか信用していいのかよ? それに、そこにいるセルジュに似た奴も訳ありじゃねぇのか?」
涙の跡を拭いながら、ティアルがそう尋ねてきた。僕がティアルに話したのは、アイリス様を撃ち殺そうとした犯人は特定したというところまでで、ジュリオが実際の犯人ということは知らない。
僕は小さく息をついて、彼女の橙と赤のオッドアイを見遣る。
「……彼らのことは利用しているだけに過ぎない。どの道、僕一人じゃここまで辿り着くことはできなかったからね」
「それならいいんだけど。あんまり肩入れしすぎるなよ。また裏切られたら……」
「もう慣れた。だから大丈夫」
一度裏切った者が二度と裏切らない保証はない。心の底から信じなければいい話だ。僕は断罪神として役目を果たせるならなんだってする。そうしなければ救えないものがあるのだから。
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