17 / 35
十六話 料理人に託す
しおりを挟む俺は一度ラティアを部屋に返し、一風呂浴びて汗でベトベトだった身体をリフレッシュした。
その後、第六位階魔術の『異空収納』から予備の服を取り出し、新しい服に着替えて、調理場に足を運ぶ。
調理場に辿り着くと、既に数名の使用人が朝食の用意に取り掛かっていた。
本来ならば元々雇われていた男の料理人が用意するのだが、そいつは数回ラティアのことを犯した歴のあるものだったため、既に屋敷からは追い出している。
いずれその命も奪うつもりだが、まだ当分は泳がせておいて、生きた心地のしない時間を送って貰っているというわけだ。
他にも数名いた男性使用人達も軒並み同じ理由でシャットアウト中だ。
同じくいずれはディスとその取り巻きと同じ運命を辿らせる予定である。
「これは! 大魔王様、おはようございます!」
「「「おはようございます!」」」
調理場に入ってすぐ、中にいた使用人達が俺に気づくと挨拶をしてくる。
昨日あれだけのことがあったのに俺に怯えている様子は微塵も感じられない。
これも全てラティアのおかげである。
彼女が昨日、自分の娘とこの城で暮らす使用人達に、俺がどんな人物かを懇切丁寧に教えた結果、俺のことを素晴らしい人物だと尊敬するようになっているのだ。
前の主人や男の使用人達がクズすぎたのも相まって、更にはラティアを大切にしたり、怪我していた娘をなんの見返りもなしに魔術で治したのも相乗効果となっているのだろう。
ディス達を問答無用で焼き殺したのだって、俺が強力な毒を盛られそうになったという正当性のある理由もあるしな。
「おはよう。あらためて自己紹介をしておく、昨日からこの城の主となっている大魔王のリューだ。ラティアから聞いていると思うが、君達には今後もこの城で務めてもらうことになる。これからよろしく頼むな」
「は、はい! よろしくお願いします!」
「「「します!!」」」
ただ、俺の圧倒的な力に怯えはしなくても、萎縮して緊張はしているようだ。
何故か皆俺と目が合うと顔を赤らめるが······ああ、そうか。そういえば、愛神エロールの加護で魅力にかなりの補正がかかっているんだったな。
ここまであからさまに見蕩れられると、少し気恥しさも感じるが、まあ有用なものなのだから多少のデメリットには目を瞑ろう。
「さて、では本題に入らせてもらうぞ。今日の朝食はこの肉を使った料理を作って欲しい」
そう言うと、俺は『異空収納』にしまっておいた炎龍王の一部をおもむろに取り出し一人のメイドに手渡す。
何故一人のメイドに直接手渡したかといえば、この女が唯一『料理』というスキルを保有していたからだ。
叡智の情報では、スキルは加護で手に入れる以外の方法は二つしかなかった。
一つは生まれつき。
そしてもう一つは、そのスキルを得るためにただ只管に努力をすることだ。
そして、後者の場合の方が生まれつきでスキルを保有していた者よりも圧倒的に熟練度が高く、その技術は比べるまでもなく上に位置するらしい。
そして、今炎龍王の肉を手渡したこのメイド。名をラフリアというのだが、そんな彼女は後者の努力で料理スキルを手に入れた猛者だ。
努力でスキルを手に入れるような彼女は、間違いなく一流の料理人と言えよう。
そんな彼女、ラフリアに料理して貰えれば、きっと炎龍王の肉を美味い料理に変えてくれるはずだ。
だから俺は、彼女を信じて託した。
「この肉は、昨日この町にやってくる前に俺が単独で倒した、炎龍王の肉だ。
これをお前に料理してもらいたい。頼めるな?」
「え、炎龍王の肉ですか!? そ、そんな伝説のようなお肉を私が!?」
俺が炎龍王を倒したことに疑問をもっていない様子に少し驚いたが、あれだけ圧倒的な力を見せたのだから、それくらい出来るだろうと思われていると考えれば納得がいく。
それにしても、やはり料理スキルを持っているだけあって生粋の料理人ということか、炎龍王の肉を調理できると知ってかなりテンションが高まっているようだ。
「俺は他者の力を見抜ける能力を持っているからな、お前が料理が得意なのは既にわかっている。
で、頼めるな?」
一応、他の使用人達にも何故俺がラフリアに頼んだのかをわかるように補足を加えておく。
「は、はい! お任せ下さい大魔王様!!」
大きく返事をしてくると、ラフリアは取り憑かれたように炎龍王の肉を見据え、どう調理するかをその場で瞑想しだした。
俺はその様子に満足し、もう用がなくなった調理場から出ていくことにする。
「あっ、他の奴らはしっかりとラフリアをサポートしてやってくれ、頼むな」
「「「······はい! 畏まりました!」」」
ラフリア以外の三人も元気よく返事をし、やる気は十分に感じられた。
俺は彼女達なら俺に最高の料理を用意してくれるだろうと確信し、今度こそ調理場を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる