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二十話 忠臣増加
しおりを挟む城に戻ってくると俺はまず最初に大食堂に足を運んだ。
大食堂には、既に出来上がった料理が用意されていて、この城に住む全員が揃っていた。どうやら俺が帰ってくるのを待っていたようだ。
「待たせてすまないな。早速食事にしよう」
「少々お待ちいただけませんか、大魔王様」
俺の対面の位置にいたリターナーの顔を見れば、先程まで泣いていただろうということがわかったので、気を利かせて触れないようにすぐに食事にしようとしたが、そんな目論見は当の本人、リターナーの手によって遮られた。
「……いいだろう。どうしたんだ」
ここまでくれば、もはや触れない方がおかしいだろうと決断した俺は、席に腰掛けると、リターナーに話を続けるように促した。
「ありがとうございます、大魔王様」
リターナーは一度礼を言うと、こちらに歩み寄ってきて……俺の目の前で片膝立ちになり頭を垂れた。
「この度は、私の身体を浄化して下さり、誠にありがとうございました。
この御恩に報いれるように、これから精一杯貴方様の忠実な僕として、誠心誠意努めさせていただきたいと思います。
大魔王様、改めまして!よろしくお願いします」
リターナーは、そう言い切ると、先程よりも更に深く頭を低く下げた。
古傷を治し、ディスという屑から解放してやった結果、こうしてまた新たな忠実な配下が誕生したということだ。
これに勝る喜びはないだろう。ただ、一つ訂正をしておかなければいけないことがある。
「その誠意は受け取ろう。だが、お前は俺の下僕ではなく、配下、忠実な臣下だ。そこだけは間違えるなよ?」
「っっっぁ……はいっ! 畏まりました、大魔王様っ!」
俺がそう言うと、リターナーは目元に涙を浮かべながら、再度頭を垂れた。
「さあ、もう話は終わりだろう。早く飯を食べようじゃないか。冷めたら美味しくないだろうしな」
「はいっ!」
俺はリターナーを元の席に戻し、待ちに待った炎龍王の肉の料理を堪能することに。
用意された料理は、シンプルに塩胡椒で味付けされたステーキや薄切りにした炎龍王の肉を野菜で巻いたもの。それに炎龍王の肉を贅沢に使ったシチューまである。
俺はヨダレが垂れそうになるのを我慢しながら、まずは、ステーキから食す。
「あむっ……んっ!? 美味い! やはり最高の味だ! いや、この塩胡椒の塩梅も実に丁度よくて、肉の味を引き立たせているから、より旨味が実感出来るのか。ラフリア、流石だな!」
「喜んでいただけたようで何よりでございます。ささ、他の料理もお食べ下さいませ」
「ああ、いただこう」
俺はラフリアを褒めながらも、次々とラフリア特製の炎龍王の肉料理を食べていく。
結論から言うと、全てが最高の味だった。
今まで食べた肉が全て安物の肉だと思えるほどに圧倒的に違う次元の美味さだった。
だからつい夢中になって、ガツガツと次から次に食べてしまったが、ふと冷静になって周りを見てみると、俺以外の面子の料理が別物であることに気づいた。
「……なんで、ラティア達は俺と別の物が用意されているんだ?」
「えっ? いえ、そんな我々が大魔王様が用意した高級な肉を食べるなんて、滅相もないです」
みんなを代表したラティアが、さも当たり前と言ったふうにそんなことを口にする。
なるほど、恐らくはこれもディスの残した悪習なのだろう。
やつの事だ、ラティアや使用人達には自分とは比べ物にならないほど下級の食事を取らせていたのだろう。まったく何処までもゲスな男だ。
「俺を馬鹿にするなよ? たかが炎龍王程度の肉、いつでも、いくらでも用意することができるんだ。だから、遠慮せずにお前達も同じ料理を食え。
まあ、今回はラフリアが用意した物を捨てるわけにもいかないから、仕方ないが、夜飯からは同じものを取るように、わかったか?」
「これは……大変失礼致しました。そして、ありがとうございます」
「なに、この程度のこと、大魔王にかかれば大したことではない。
言わなくてもわかると思うが、当然使用人達もそれに含まれているからな?」
俺とラティアのやり取りを羨ましげに聞いていた使用人達も同等の物を食べるように伝える。
そうすると、使用人達はたちまち表情が晴れやかになる。
まったく、これだけのことで忠誠度が上がっていくんだから、ディスのダメさ加減の異常さがこれでもかという程理解出来るというものだ。
そうして、用意された料理を全て食べ終えた時、唐突にそれは起こった。
カンカンカンカンッ!
『魔物だ! 魔物大群、スタンピードだー!!』
城の外から、そんな叫び声が聞こえてきた。
スタンピードか……アテナリスでも当然同じような物はあったが、こちらの世界でもやはりあるか。
まあ、朝飯終わりのいい運動にはなりそうだな。
「ちょっと出掛けてくる。留守を頼むぞ」
「大魔王様……お気をつけて」
「あぁ」
俺は一言そう告げて、『転移』を発動し、城の外に一瞬で移動した。
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