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二十五話 スカーレットの初陣
しおりを挟む子気味良い小鳥の囀りを朝の目覚まし代わりに起床……とはいかず、城の外からの騒がしい怒声を目覚まし代わりに起床した。
異世界生活三日目も変わらず、俺にはまだ平穏が訪れる兆しは見えてこない。
さて、今日はなんで騒いでいるのだろうか。
『スカーレット、城の外の状況わかるか?』
俺は外の様子を確認するため、城の中に住んでいるラティア達の護衛と城周りの警備を任せていたヴァンパイア・ノーブルのスカーレットに念話で語りかける。
それにしても、スキルで生成した配下との念話ができるっていうのはかなり便利だな。
アテナリスでは、離れた仲間との通信手段なんてなかったからこれから重宝していこうと思っている。
『おはようございますリュー様。どうやら残った領民が城の前で暴徒化しているようです』
残った領民という言い方が少し気になったものの、状況は理解できた。
それにしても、あれだけ実力を見せつけたから俺に敵対行動をとることは絶対にないと思っていたが……どうやら俺の予想は外れたようだな。
まったくバカな連中だ。
だが、丁度いいかもしれないな。
この町の領民は軒並み雑魚ばかりだが、それなりに戦えそうな奴もちらほらといた。それでも俺にしてみれば雑魚なのだが、スカーレットの戦闘能力を見る機会が出来ただけでも良しとしよう。
『今外に行くから、待機していろ』
俺はスカーレットに念話で待機を命じ、転移で城の外に一瞬で移動する。
「おい、この城の周りの結界を早く解いて俺達に降伏しろ!」
「そうだー! 元々この町はお前達のものじゃないだろ! 出てこい腰抜け!」
「女に外の警備を任せるなんて、やっぱりあいつは詐欺師だったんだ! どうせ昨日の魔物の群れだってあいつが何か仕掛けをしてただけなんだろ!」
「そうに違いねえ! じゃなきゃ説明がつかねえからな! けっ! 結構な奴らが騙されてこの町から出て行ったが、俺達は騙されねえぞ!」
「おい! この糞詐欺師! 出てこいくそが!」
外に移動すると、領民が城に住む俺に向かって罵詈雑言を浴びせている最中だった。
領民全員が暴動を起こしているにしては、数が少ない様だが……なるほど。スカーレットと領民の言葉から察するに、他の奴らは別の町に逃げたのだろう。
こいつらも、そいつらと共に逃げていれば、無事に済んだというのに、本当に救えない奴らだ。
俺は一旦領民達の様子を見るのをやめ、スカーレットの様子を見ることにした。
すると、城の外には既に俺以外のこの城に住む者達が待機していて、今にも飛び出しそうな勢いで領民達を睨みつけていた。
ラティアやリターナ、それにメイド達は戦闘能力を持たないというのに、それでも戦おうとする気概が見て取れる。
スカーレットに至っては、俺の待機命令を無視して今にも全員を血祭りに上げそうな形相だ。
スカーレットの方は俺自身がそうあるように命じたため、このような忠臣として生きているが、ラティア達は別だ。
それなのに、俺への罵詈雑言にこれだけの怒りを見せてくれていて、尚且つ領民の方に与しない。
そんな彼女らも完璧な忠臣と言っても問題ないだろう。
「おい、俺にはあのラティアとかいう売女からヤラセてもらうぜ?」
「じゃあ俺は娘の方だな! げへへっ! 早くあのくそ男を殺して楽しもうぜっ!」
「俺はメイドの奴だ!」
「あぁ、早くヤリてえ!!」
「俺はあの赤髪の奴だな! ヒィヒィ言わせてやるっ!」
これ静観を続ければ、ラティア達が飛び出しそうだったので俺も領民の前に出よう。
そう思った所で、男の領民達が、下衆な視線をラティア達に向け、気持ち悪い声を上げていた。
「……不愉快だな」
ラティアを始めたした、この城に住む彼女らは、全員俺の忠実な配下だ。
ゴミみたいなカス共が下劣な視線を向けていい存在じゃない。
……とりあえず、殺すか。
俺は簡単に殺すことを決めると、ラティア達を犯そうと企てていた連中に向けて、魔術を発動する。
「死の宣告、死の宣告、死の宣告、死の宣告、死の宣告、死の宣告、死の宣告、死の宣告死の宣告、死の宣告、死の宣告、死の宣告……」
選択した魔術は、雑魚に使うのは勿体ないと言っても過言ではない第八位階の魔術。
だが、一瞬で殺せて尚且つ他に被害が及ばないようにするには最適な魔法だ。
唱える度に、領民の中からドサドサと下劣な男どもが事切れてその場で倒れていく。
第八位階の魔術を数十回連続で使っても果てることのない自分の魔力量に驚きつつも、その光景を見ることなく、ラティア達の前に移動する。
「待たせたな」
俺が声をかけると、先程まで領民達に怒りの視線を向けていた彼女らは、途端に顔を赤らめて目尻を下げて、俺に見蕩れ始めた。
……魅力が上がりすぎるのも考えものだな。なんて場違いなことを考えつつも、俺は歩みを止めずに彼女らの数歩前に位置どる。
「俺の大切な忠臣に下賎な感情を抱いていた者達は、一人残らず平等に死を与えた。
悪く思うなよ? 俺の配下を汚そうとした奴らがいけなかったんだからな。
さて、俺があれだけ別次元の力を見せつけてお前達を守ってやったのに……守ると決めてやったのに、お前達は、それを拒んだ。ということでいいんだよな?
黙ってこの町に住んでいれば命は助かったというのに、本当にお前達は愚かだ。
俺の守るという決意も蔑ろにされた上、更には守った俺に罵詈雑言を浴びせる始末。
今このときをもって、お前達がこれから先生き残るという未来はなくなった。
お前らに待ち受けるのは……死だ」
俺が長ったらしい口上を告げると、黙って聞いていた領民達は、俺の登場と口上に戸惑い困惑の表情を見せた。
しかし、暫くして俺の口上の意味を理解した領民……いや、元領民達はその場から一目散に逃げ出し始める。
どうやら、俺が躊躇うことなく簡単に自分達を殺せる存在だとようやく理解したようだ。
自分達の仲間が殺されて初めて気がつくのは少々……いや、大分遅いと思うが、まあいい。
もう、殺すのは決定事項だからな。
「スカーレット。お前に命令を下す。今逃げ惑っているゴミ共を抹殺しろ」
「はっ!」
俺がスカーレットに命令をすると、待ってましたと言わんばかりの大きな返事をし、スカーレットは、逃げ惑う元領民達の元へ駆け出そうとする。
「っと、一つ言い忘れていた。奴らに触れられることなく始末しろ。奴らに触れられると穢れてしまうからな。綺麗なままここに帰ってこい。それじゃあ、待ってるぞ」
「っっっっぅ!! 必ず!!」
俺が伝え忘れていたことをスカーレットに伝えると、俯いて暫くその場で少し震え、そして、先程よりも気合が入った返事をし、今度こそ駆け出していった。
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