魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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漣の少女

44話

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私はまずギルドに向かい、ギルドの受付嬢に声をかける。

「アリスさんじゃないですか!今日はどの様なご依頼で?」

「グラディオスさんにお話があってきたんですけど、今お時間大丈夫ですかね?」

「ああ、ギルドマスターにご用があったんですね。ちょうどとある冒険者から奴隷商に手を染めた冒険者がいると相談を受けてるんですよ。」

私はリリアの方を向いて、リリアも「ナイスタイミング」だと言わんがばかりに目を合わせて微笑む。

「実は私もその事でグラディオスさんにご報告をしようと思っていたのです。」

「なら、すぐにグラディオスを呼んできますね!」

受付嬢は奥の部屋に行くとすぐにグラディオスを連れて来る。

「おう!アリス!久しぶりだな!」

グラディオスはニヤリと笑って言う。

「はい!お久しぶりです!」

私が挨拶を返すとグラディオスがすぐに奥の部屋に案内する。

そして、冒険者らしき女性の隣に座らされる。

リリアは私の後ろで髪を弄っていた。

「まずは第一摘発者、アレストレーゼの情報を共有しよう。」

アレストレーゼは私の隣の女性のことのようだ。


まず、アレストレーゼはレグレスがパーティーリーダーを務める英雄達の剣ヒーローブレイダーズの元一員で数日前にレグレスの行為を拒否したところ、不当な戦力外通告を受け、抗議するなら奴隷商に売ってやると脅されたとの事だった。

また何度か黒ずくめの奴隷商と取引をしている所を見ており、その度にパーティーからレグレスやアルカイダによって犯され尽くして心を失ってしまった少女たちが消えていたと言う。


パリスがレグレスの名前を聞く度にビクッと体を震わせていたので、おそらくパリスを奴隷商に売ったのはレグレスで間違いないだろう。

「私も似た様な話をこの兎族のパリスから聞きました。数日前に入ったパーティーのリーダーに性行為を求められ、拒否したところ、暴力を受け、さらには無理矢理性行為に及んだ後に奴隷商に売られたとの事です。運良く、パリスは奴隷商から逃げて来たようですが、奴隷の焼印や鑑定による奴隷呪と思われる詳細不明な状態異常があった事から、パリスの身に実際に起きた事だと認識した為、私も報告をしに来た次第であります。」

私は震えるパリスを抱きしめながらも淡々と説明する。

グラディオスは私にくっついているパリスの様子を見て言う。

「俺の目にも報告されたパリスに詳細不明な状態異常が確認出来た。これは間違いないだろうな…パリスの被害とアレストレーゼの被害はおそらく同一人物…つまり、レグレスとアルカイダのやった事だと言えるだろう。そして、この国の中で奴隷商をする不届き者がいる事もわかった。まずは奴隷商の根城を叩く事から始めねぇとな…」

リリアが内なる怒りを燃やしている様子で言う。

「グラディオス…ネクロノミコン…持ってる?」

リリアの圧にグラディオスが思わず圧される。

「あ、あぁ…今回のパーティー戦の優勝景品に入れようと思ってたからあるのはあるんだが…」

リリアが拳を震わせながら言う。

「それをください。代わりに奴隷商を壊滅させる依頼を受ける。リリア、絶対に許さない…」

グラディオスは渋々と言う様な表情で言う。

「そうだな…お前ら、は本当に強い奴らばっかりだもんな。俺からもそこから人手が借りれるのは助かるのだが…」

私たちは一度解散して、夜に私達の屋敷で作戦会議をする事になった。

そうして、グラディオスと別れる前にパリスは涙目になって震えながらも言う。

「奴隷商にメティアと言う名前の女性がいます。その人を捕まえる事が出来たら、場所の特定も早くなるかもしれません。グッ…」

パリスの口から血が出る。

「リリア!」

回復ヒール!」

リリアが回復魔法でパリスの身体を回復させようとする。

「…効いてない?!」

パリスの呼吸が荒くなる。

「お、おい!大丈夫か!今、救護班を…」

私は探知を使い、デュークを探す。

「グラディオスさん、これは呪いです!デュークさんの元まで飛ばしてください!居場所は探知出来てます!リリアもついてきてください!」

グラディオスは呪いと言う単語で全てを理解した様子だった。

「わかった。呪いが相手となると俺たちからは何にも出来ねぇが頼んだぜ。それと元気になったら、パリスにもきっちり礼を言わせてくれ。」

そう言うと私たち三人の視界が暗転し、次の瞬間とある骨董屋に飛ばされる。

「フフッ…この品…とてもいい…」

そこには骨董屋で怪しげなものを見て楽しそうに笑うデュークがいた。

「デュークさん!急ぎで解呪をしていただきたいのですがよろしいですか?」

デュークは少しだけ驚いた表情をしていたが、パリスを見てすぐに真剣な表情に変わる。

「わかった…来て…」

デュークに連れられて、彼女の家の中に入る。

私は解呪の為にパリスをデュークに預ける。

「すぐ出来る…でも…とても…危ない…」

「リリア、治せる。」

デュークはそれを聞くと安心した様子ですぐに解呪を開始する。

解呪はあっという間に終わり、リリアの回復でパリスが一命を取り留める。

「ケホッケホッ…」

パリスは少しだけ血を吐いて、大きく呼吸する。

「はぁ…はぁ…助かりました…ありがとうございます…」

パリスはそれだけを言うと疲れからか、スヤスヤと寝息を立て始める。

私はパリスの体を優しく抱き上げる。

「良かった…」

デュークが凄く怒った様子で言う。

「呪いをこんな使い方するなんて許せない…アイツら全員呪い殺してやる…」

「あいつらって事はデュークさんはもう相手がわかったのですか?!」

私が驚いてそう言うとデュークは冷静に言う。

「呪詛を辿ったの…でも、これには魔法も使われていたわ…魔術師の方の魔力は覚えたけど、それ以上は何も出来なかったわ。でも、奴隷呪をかけた呪術師は全員見つけたし、呪ったわ。良いざまね。呪術の神と呼ばれた私を怒らせた事を悔いながら、苦しんで死ぬが良いわ…」

デュークが悪魔の様に笑う。

デュークは自分の大好きな呪術を悪用されてとてもご立腹の様だ。

「デュークさん、今夜私の屋敷に来ていただけませんか?奴隷商討伐の件についてお頼みしたい事もありますので…」

「行くわ…呪術をこんな使い方するやつを生かしておけないもの!」

私たちはデュークの家を出る。

帰り道、何かを感知した私はリリアに言う。

「リリア、今晩は何がいい?」

リリアは一瞬キョトンとした表情になるが、すぐに理解した様子で言う。

「ボイルベアーの山菜煮かな…七味たっぷりのやつ…」

「じゃあ、先に行って、準備しててもらえる?材料買って帰る。」

「わかった…」

リリアはそう言うと走ってどこかへと行ってしまう。

「よし。まずは人参と熊肉、隠し味のウルフの血だね。そうと決まれば、さっそく市場までレッツゴー!」

私はそんなことを言いながら、市場の方向の人気の無い路地裏に入る。

まんまと何かもついてきていた。

「あれ?間違えちゃったかなぁ…」

私は首を傾げながら、どんどん路地の奥へと進む。

私が行き止りの方向に曲がった瞬間、七人のフードを被った何かが襲いかかるがそこには誰もいなかった。

「ドサッ」と音が聞こえた時には時すでに遅し、リーダー格のフードを被った何かの背後には悪魔の翼がチラつく。

「テメェの目的は何だ?」

アリスが怒りを露わにして言う。

「チッ…」

私たちをつけていた者は逃げようとするが、私が魔力で押さえつけると今度は毒を飲んで死のうとしていたので、魔力で口を開けなくする事でそれも封じ、毒を取り上げる。

「何勝手にラクになろうとしてんだ?こちとら、テメェの親玉に仲間傷つけられてんだよ。ラクになれると思うなよ?」

私がリーダー格のフードを取ると、女性の顔が現れる。

私はそいつの目を見て言う。

「テメェも女なら、パリスの受けた傷がどれほどのものかわかるよなぁ?まさかとは思うが、わからねぇなんてすっとぼけたことを言うんじゃねぇだろうな?」

リーダー格の女性の赤色の目が恐怖に揺れる。

「ま、安心しな。私も女だから、テメェはパリスの様にならねぇよ。ただし…」

私は悪魔の様にニヤリと笑う。

「借りはキッチリ返させてもらうぜ?たっぷり利子をつけてやっから覚悟しろ!」

こうして、リリアが呼んだギルド協会の冒険者が来るまでの間、女性はアリスによる無慈悲な拷問を受け続ける事になったのであった。


状況説明をするとギルド協会の冒険者達は納得して、気絶している者を含めた七人のフードの組織をギルドに連行する。

後に女性は震えながら、殺してくれと懇願して洗いざらい全てを話したそうだ。


帰り道、リリアがポツリと言う。

「あんなに…怒った…アリス…初めて…」

「言われてみれば、あんなに怒ったことも無かったね。」

「アリス…いつも…優しい…好き…」

「なら、あんな怖い私は嫌い?」

私はちょっと意地悪な質問をしてみる。

「そんな事言ってない!」

リリアが怒って頬を膨らませる。

「アハハ…ごめんごめん!」

私はお詫びにとリリアが前に欲しがっていたアクセサリーを買いに行く事にした。



「ふんふ~ん♪」

リリアはとても嬉しそうにイヤリングの入った袋を持っていた。

「リリアが嬉しそうで良かったよ。」

私がそう言うとリリアは嬉しそうに微笑んだまま言う。

「アリス…買ってもらった…嬉しい…」

「喜んでもらえたなら奮発したかいがあるってものね」

私たちがそのまま屋敷に帰る頃には日が暮れ始めていた。

「そうだ!」

私が思いついたように言うとリリアが何となく察した顔をする。

「今晩は煮込みにしよう!ボイルベアーの山菜煮の話したら、食べたくなっちゃったからね!」

リリアは「やっぱりね…」と言うように肩を竦めながらも一緒に食材を買うのであった。
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