魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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漣の少女

43話

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私は寝苦しさを感じていつもより早く起きる。

「こっちはリリアなのはわかるけど…」

私はリリアとは逆側でピッタリとくっついている兎族ラビストの少女を見る。

寝る前の事を思い出そうとする。

「そうだ…昨日、押し入れに隠れてたパリスちゃんだ…」

私は左右でピッタリとくっついている二人を離そうとするが、リリアはいつもの様にやって離せて、パリスはまるで魔力で固定してるかの如く離せなかった。

しょうがないので、そのままお風呂場に作っていた洗面台で顔を洗いに行く。

「パリスちゃん、髪の毛ボサボサだ…」

私はまるでコアラのようにくっついてるパリスの髪を自分のクシで梳かしてサラサラにしておく。

「私はこれ使わないから、パリスちゃんが起きたらあげよう…」

時刻は午前3時30分くらいをさしていた。

顔を洗っているとパリスの耳がピクピクと動く。

「んう?」

パリスが寝ぼけ眼で私を見る。

「あら?起こしてしまったかしら…」

私がそう言うとパリスは眠そうに目を擦る。

「パリスは…お姉ちゃんについていく…むにゃむにゃ…」

再びパリスが眠りにつく。

「誰の事を夢に見ているんだろ?」

そんな事を思いながら、私は再び部屋に戻る。

そして、本を読んでいると5時前くらいにリリアが眠そうに起きてくる。

「おはよう、リリア。」

「ん…おふわぁ~…アリス、おはよう…」

リリアは半分寝ながら歩いていたせいで顔が扉にぶつかって蹲る。

「痛い…」

リリアはおでこを抑えながら、扉を開けて洗面台で顔を洗いに行く。

戻ってきたリリアは部屋のキッチンでコーヒーをいれていた。

「アリスのもいれた…」

そう言って、リリアが私の目の前にコーヒーを置く。

「いつもありがと!」

「うん…」

リリアは砂糖を入れずに飲む派で私は2個くらい入れないと飲めなかった。

「目が覚めるね。」

リリアは満足そうにコーヒーを飲み終える。

ちなみに私は猫舌なので、まだ熱くて飲めない。

リリアはコーヒーのカップを片づけると鼻歌を歌いながら、武器の手入れをしていた。

「そろそろ冷めたかな…」

私はそう言いながら、コーヒーをゆっくりと飲む。



しばらくして皆が起きてくる音が聞こえる。

「あ、そうだ。皆にパリスちゃんとウェリアの事を紹介しないとね!」

私がそう言うとリリアが首を傾げて言う。

「ウェリア…?パリス…じゃないの?」

「昨日、私がサリアさんのところに行った時にパーティーに入りたいって言って加入した子だよ。ほら、リリアの部屋を貸してるって言ったでしょ?」

リリアは思い出そうとしてる様子で首を傾げたまま下を見て、思い出したように顔を上げる。

「あ、パリス…見つけた時?」

「そうそう!その時の子だよ。」

私はまだ寝ているパリスをそのまま連れて行きながら、皆の元に行く。

そこにはウェリアと私の知らない少年の姿もあり、少年の事は知っているのか、皆が誰だろう?って感じでウェリアを見ていた。

私は皆に呼びかける。

「はいはい!皆、私から発表がありまーす!私経由で昨日から二人の仲間が増えました!一人目はこちら!」

私はウェリアの方へ手を出す。

「彼女の名前はウェリアです!そして、もう一人は皆も気がついてると思うけど、私にしがみついたまま寝てる兎族のパリスちゃんです!じゃあ、ウェリアからもどうぞ!」

ウェリアは王族の風格を漂わせる姿勢の良さで言う。

「ご紹介に預かりました。ウェリア・マリアージュともうします。マリアージュの名で存じてる方もいらっしゃるかもしれませんが、隣国のマリアージュ大王国の姫ですね。此度は私の方からアリスさんにお声がけさせていただいて、パーティーに入れていただきましたの。至らないところもあるかと思いますが、どうか仲良くしてさしあげてくださいまし。」

「パチパチパチ」と皆で拍手をする。

その拍手の音で目が覚めたのか眠そうにパリスが目を開ける。

パリスは驚いた様子で目を丸くしていた。

「パリスちゃん、ここに居るのは皆、私のパーティーの仲間ですよ。自己紹介してもらっても良いかな?」

パリスはそのまま私にしがみついたまま震えながら言う。

「パ、パリスです!よろしくお願いします!」

パリスは余程怖いのかアリスに抱きつく力が強くなる。

「パリスちゃん、ちょっと痛いよ…」

「はわわ…ご、ごめんなさい!」

パリスはすぐに降りて謝る。

「良いけど、大丈夫?」

皆が不思議そうに私とパリスのやり取りを見ていたので、パリスが大丈夫と言った部分だけパリスの事を話す。

その間にこっそりとリリアがパリスにブレイブをかける。

「すみません…私自身は弓術士アーチャーなのですが、力が強いみたいなのです…なので、魔力で作ったナイフを使った攻撃を得意としています。」

私は試しにパリスの鑑定をしてみる。


パリス(9歳:女性)

種族:兎族ラビスト

等級:C級冒険者(実力はS級相当と推定される)

状態:特殊状態異常全無効、魔法耐性弱化、鑑定検知、??????(登録無しの不明な呪い)、ブレイブ

固有能力:兎の足ラビスト、神体強化Lv.6、特殊状態異常全無効、鑑定検知、魔力神化、魔法耐性弱化

能力スキル:弓術の神眼ミンストレル魔法神プレスィール、影収納、脚力上昇スピードアップ


私が鑑定したのがわかった様子でパリスが言う。

「アリスさんが鑑定してわかったようにパリスには鑑定検知と言う固有能力があります。他にも固有能力があり、足を引っ張る様なことは無いかと思います。どうか、よろしくお願いします。」

パリスはそう言うとブレイブがきれた様で、足が震え始める。

茉莉がパリスの目の前まで来て、パリスの目線に合わせて座る。

「パリスちゃん、私は茉莉だよ。よろしくね!」

パリスは不安そうな顔をしながらも応えるように微笑む。

私はこっそりリリアに耳打ちする。

「ブレイブかけ直せない?」

「ダメみたい…多分、呪い?が邪魔してるせい…奴隷呪どれいじゅ…だと思う…」

「じゃあ、呪いを解くためには術者に解かせるか、術者が死なないと解けないね…早いところ、叩きにいかないと自力で解けなくなっちゃうわね。」

「デュークさん…知ってるかな…?」

「行ってみる価値はありそうね。」

私とリリアがそんな会話をしている隙にパリスとウェリアとパーティー全員の自己紹介が終わったようだ。

最後に金髪の髪の長い、黄色い目の少年が私たちの前に来て言う。

「ボクは森人エルフのブレディルだよ!よろしくね!」

私たち2人も自己紹介をする。

「それじゃ、解散!」

私がそう言うとそれぞれが自分の目的地へ動き始める。

リリーフィルがパリスとウェリアにもパーティー戦の参加を持ちかけていた。

パリスは参加する様でリリーフィルに教えてもらいながら、名前を書いていた。

「よっし…まずはギルドに行って、違法行為をした冒険者の摘発、その後はデュークさんにパリスちゃんをみてもらって、最後にパリスちゃんとウェリアの部屋を作りましょうか。」

リリアがボソッと言う。

「リリア…部屋あげるのに…」

「まあまあ、そう言わずに…たまには自分の部屋も使いたくなるでしょ?」

「ない…アリスと居られることだけがリリアの生き甲斐…」

わかってはいたが、リリアは即答だった。

参加の書類を書いた後にパリスが戻ってくる。

「あの…ご迷惑でなければ、パリスもアリスさんの部屋で暮らしても良いですか?アリスさんといると安心して寝られるので…」

リリアがライバルが増えたと言いたげな顔をしていた。

「私は構わないけど、今の私のベッドじゃ三人はさすがに寝苦しいよね?」

「そうですか?パリスは石畳の上でも寝られるから、布団があるだけでも快適な気持ちにはなれるのですが…」

「アリスと居られる…幸せ…」

私は思わず顔を押える。


そうだった…パリスちゃんはともかく、リリアは私がいるだけで満足するんだった…

と言うか、そもそも左右からピッタリと身体をくっつけて抱きつかれてたら暑いだろ!

特に私なんてめっちゃ暑がりだし…


私は暑いで思いついた。

「そうか!あれを使えば良いんだ!」

私がそう言うとリリアとパリスがキョトンとした表情になる。

「さっそく、倉庫を探してこよっと!」

リリアとパリスは二人で顔を見合わせて、何も言わなくてもついてくる。

倉庫の中で発掘作業をしているとパリスが言う。

「アリスさん、あれは何ですか?」

「パリスちゃん、ナイス!あれが私の探してた魔導具だよ!」

私は杖の様な魔導具を取り出す。

「これがあれば、快適に暮らせる…」

私は魔導具に魔力を流す。

するとすぐに周りが適温に保たれる。

「この魔導具は所有者の魔力を動力源として周囲の温度を所有者の快適と感じる温度にしてくれる優れものなんだ。」

私がそう言うとパリスは少し震えながら言う。

「す、少し寒いですね…」

リリアが奥からパリスが着れそうな白いフリルのついた青いワンピースを出してくる。

「パリス…どう?」

「パリスの為に探してきてくれたんですか?!ありがとうございます!」

パリスはそう言いながら、服を着替える。

「わぁ…とても気心地もよくて良い素材なのです!」

パリスが大喜びしていると…

「なんかいい生地ないかなぁ…」

リリーフィルが入ってくる。

パリスとリリーフィルがほぼ0距離で目が合う。

パリスは笑顔のまま固まる。

「ビックリした…パリスか…」

リリーフィルは特に気にする様子もなく奥の部屋に行く。

リリアがパリスの肩をつつく。

パリスはピクリとも動いていなかった。

「気絶…してる?」

リリアが驚いた様子で言った後、回復魔法をかける。

「…あれ?パリスは何を…」

パリスは先程の事は覚えてなさそうだった。

「リリーフィル見て…気絶した…」

リリアが楽しそうに言う。

奥からリリーフィルが出てくる。

「う~ん…ちょうど良さそうな生地が無いわねぇ…となれば、あそこに行って、それから新しい子の服を作り始めないと…」

パリスは急に聞こえてきた声に驚いた様子で私の身体に飛びつく。


少し苦しい。


「あ、アリスお姉様!おはようございます!」

「おはよ~って言っても、さっきあったばかりだけどね。」

リリーフィルは特に気にする様子もなく、そのままどこかへ行く。

「ビックリしました…ここは心臓に悪いです…」

パリスが涙目になりながら言う。

「あはは…じゃあ、最後にパリスちゃんの服だけ何着か探そうか。」

三人で服を探して、パリスの服が何着か決まり、私の部屋に戻る。

「わぁ…全部とてもいい匂いです…それにこれなんか、凄く質のいい素材なのです!こっちは植物性でこっちは毛皮でしょうか…それにスキルのついている服もあってとても面白いのです!」

たくさんの服の上で大はしゃぎするパリスを横目に私はいつもの服に着替える。


ちなみにリリーフィルが新しく仕立ててくれたもので、素材が少し良いものになっており、さらにスキルの自動修繕と自動クリーンが付与されている為、汚れないし、壊れないと言ったまさに最高の服になっている。

リリーフィルが何着か服を作ってくれたが、私のサイズに合わなかったり、私の動きについて来れなかったりでお出かけ用以外では使い勝手が悪かった。

そのうち、リリーフィルが私のいつもの服を作って、それに落ち着いた。

幸いにもマリアとフィリアが同じくらいで使えたので、二人に半分くらいあげた。

大きなサイズはクレアやリリアが着れるものを持っている。


パリスが服を選び終わったところでリリアが高速着替えをしてドヤ顔を向けてくる。

なぜかは分からないが、リリアは高速着替えをして、自分の満足のいく速さで着替えれたらドヤ顔をしてくる。

そうでない時は何故か真顔で見てくるので、たまに笑わされる。

本人に聞いてみたところ、なんとなく無意識にやってしまうのだそう。

パリスはゆっくりと下着と服を着替えて、ワンピースを着る。

「これは後で洗って…それも一緒で大丈夫かな?」

パリスは私と茉莉とリリーフィルの合同作業で作った洗濯の魔導具に服をいれて起動する。

「よし。それじゃあ、行こうか!」

私がそう言うとパリスは私の前に寝ていた時みたいにひっついて、リリアは私の隣に来る。
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