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漣の少女
42話
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「魔法拳!」
強力なオレンジの炎を纏って、そのまま拳を振り下ろす。
「凍えよ!魔法拳!」
サリアの拳に雪の塊が出現し、そのまま私の拳の炎を相殺する。
「ならば、これで!サンダー!」
私がそう言って右手を振るうと雷球が勢いよく飛んでいく。
「甘いぜ!魔法拳!」
サリアが闇色の魔力を纏った拳を構える。
私は咄嗟にサリアの正面から逃げる。
サリアが勢いよく突き出すとそこから超重力の闇色の魔力のビームが現れる。
それらは軽々と木々を粉砕する。
「ハハッ!面白ぇ!何にでも応用が出来て面白ぇぜ!」
「今のはビックリしましたよ。まさか、こうもアッサリとこんな技が飛んでくるなんてって…でも、私もまた進化するのですよ!」
私は右手に魔法拳、左手に魔法拳を使う。
「焼き尽くす雷を!魔法拳!」
私は2つの力を混ぜるようにして両手に纏わせる。
「属性を混ぜる…か…四大元素魔法みたいで面白ぇ事するじゃねぇか!」
「まさにアレからヒントを得たようなものですよ。とは言っても、あちらと違い、私のこれは均等な2つの力を完全に混ぜてはいないので、左右で属性値のバラツキが出ますが、その分魔力消費を少なく出来るようにしてみたものです。」
「それはこんな感じか?」
サリアが右手に魔法拳、左手に魔法拳を纏う。
「焼き尽くし、凍てつかせ!魔法拳!ってな!」
ウェリアが真似をする様に魔力を練る。
「地より這い出し地獄の雷よ!ヘルサンダー!」
地面から巨大な黒い雷が発射される。
「これなら、奇襲策としても使い勝手がいい魔法も出来ますわね。」
ウェリアは様々な魔法を試していた。
「それじゃ、一気に行くぞ!」
「臨むところです!」
私の魔法拳とサリアの魔法拳がぶつかり合う。
日が暮れ、夜まで戦いは続いた。
「ふぃ…そろそろ終わりにするか!これ以上はお互いに仕事に支障が出るかもしれねぇからな!」
私は悪魔の力を抑えて、元の姿に戻る。
「そうですね。今日はお付き合いいただいてありがとうございました!」
私がそう言って頭を下げるとウェリアも頭を下げる。
「アタシも面白ぇもん、たくさん見れたし、アリスが魔法を使える様になって楽しかったぜ!また誘ってくれよな!」
その後、サリアに別れを告げて屋敷へと戻る。
「あ、そうだ!ウェリアのご飯作らないと…」
私がそう言うとウェリアが言う。
「なら、私もお手伝いいたしますわ!」
屋敷に戻るとアルが出迎えてくれた。
「ご主人様、お帰りなさいませ!そちらの方はウェリア様ですね?」
ウェリアが驚いた様に目を丸くする。
「メイドたるもの、ご主人様の事は常に把握しておりますよ。ご主人様は作らなくても良いと仰っておりましたが、お二人様の夜食も出来ておりますよ。ちょうど出来たばかりですので、美味しく召し上がっていただけると思いますわ!」
「アハハ…アルはほんとにメイドの仕事が大好きなんだね。ありがたくいただくことにしよう。」
「はい!では、お席についてお待ちください。すぐに持ってまいります。」
私達は手を洗って用意された食卓に座る。
時計を見ると11時をさしていた。
「んう…ふぁ~…」
ベッドで寝ていたリリアが起きる。
「…アリス…おかえり…」
リリアがフラフラと足取りが覚束無い状態で歩いてくる。
「リリア、ただいま!」
私はそっとリリアを隣の椅子に座らせる。
リリアは眠そうに首をカクンカクンさせてる。
「リリア、眠いなら、先に寝た方がいいよ。」
「ん…大丈夫…だ…よ…ぐぅ…」
リリアは寝ながら返事していた。
「…私の事は明日紹介すると言う段取りで問題無いですか?」
ウェリアがリリアの様子を見ながら言う。
「そうだね。多分、今のままじゃ、話を聞くどころじゃないと思うから…」
私達は次の日の段取りを決めながら、食事をとる。
「ごちそうさま!アルの料理も美味しいね!」
私がアルにそう言うとアルは嬉しそうに微笑みながら言う。
「ふふっ…お口にあったようで良かったです。では、後は私が片付けておきますね。これは私がやりたくてやった事ですから…」
「じゃあ、今日はお言葉に甘えちゃおうかな。」
私はリリアを連れて自分の部屋に戻ろうとして言う。
「あ、そうそう。ウェリアは今日はリリアの部屋を貸してあげるね。って言っても、リリアは普段私の部屋で寝る事が多いから、ちょっと埃っぽいかもしれないけど…」
「大丈夫ですわ。こう見えて、自分の事くらいは自分で出来るように躾られておりますの。」
私はウェリアと別れてリリアを自室のベットに寝かせる。
「よし…私もお風呂入って寝ようかな。」
私がお風呂場に降りて、お風呂に入って汚れを落とす。
途中でウェリアもお風呂で汚れを落としてすぐに出た。
私もお風呂を出て、体を拭いたり、髪を乾かした後、そのままバスタオルを巻いて自室に戻ろうとした時だった。
「ふぅ…汗をかいてしまったな…」
セガールとお風呂場に行く通路でばったりと出会ってしまう。
「あ、セガールだ。こんな時間に何してるの?」
私がそう言うとセガールは真っ赤な顔で「誤解だ…僕はそんな…」とかなんとか言ってブツブツ呟いていた。
「セガール?」
私が呼ぶと「はいっ!」って元気よく返事をして背筋をピンと伸ばす。
「あの…皆寝てるから、もうちょっと静かに…ね?」
「す、すみませんでした!」
セガールが土下座する。
「ええ?!セガール!?」
私が驚いているとセガールが言う。
「いくら、僕が恋焦がれてる相手とは言え、こんな覗きみたいな事をしてしまって本当に申し訳ない!」
私はセガールが何を言っているのか少しだけわかんなかったが、なんか凄い勘違いをしてそうな事はわかった。
「よくわかんないけど、セガールは何をしてたの?」
「はい!僕は今まで鍛練所で自主トレーニングをしておりました。ここの一員の中では僕は非力な人間ですので、パーティー戦で足を引っ張らないようにと思って…」
私はセガールの頭を撫でる。
「そっか。セガールも頑張ってるんだね!でも、ほどほどにしないと明日に響くから、早く寝るんだよ?」
私がそう言って自室に戻ろうとするとセガールが言う。
「あの…本当に申し訳ございませんでした!」
「ん?何か悪いことでもしたの?まあ、私は気にしてないから良いけど…」
私はそのまま自室に戻る。
後に残されたセガールはお風呂の中で悶絶していたとかいなかったとか…
自室に戻るとリリアが身体を起こしてキョロキョロしていた。
「リリア、起きてたの?」
「うん…アリス…部屋…誰か来てる?」
私はウェリアの事だろうと思い、「今日新しく入ったウェリアにリリアの部屋を貸してるよ」と言うとリリアが首を振る。
「違う…この部屋…」
私は感知を使う。
「うん?」
私は押し入れの中を見る…
「ヒャッ!?」
私と同じ獣人の小さな女の子だ。
ただし、私とは違って兎の獣人みたいだけど…
「迷子かな…」
私が女の子に触れようとすると女の子がビクッと身体を震わせる。
「怖くないよ。ほら、出ておいで。」
私は手を引っ込めて、女の子が出てくるのを待つ。
「い、嫌です!パリスはもう戻りたくないです!」
女の子はパリスと言う名前らしい。
「パリスちゃんって言うのね。私はアリス、こっちにいるのはリリアよ。とりあえず、事情を聞かせてもらいたいから、出てきてくれないかしら?」
私がそう言うとパリスはチラッと私の顔を見る。
その紅い目には恐怖が映っていた。
「…ブレイブ。」
リリアがパリスの心を奮い立たせる魔法を使う。
パリスは震えながらも押し入れの中から出てくる。
ボサボサの白く短い髪、汚れたワンピース、背丈は私より小さいくらいで種族の特徴的な大きな胸と長い耳、身体には無数の痣や傷跡が残っていて、かなり痛々しい見た目になっており、脚には奴隷である事を証明する焼印が押されていた。
「リリア、回復できる?」
「任せて…」
リリアがパリスの身体を回復させる。
ついでに奴隷の焼印も消しておく。
パリスの傷と痣で黒ずんでいた肌はとても白く美しい色に戻っていた。
「あの…ご、ごめんなさい!」
パリスは土下座して謝る。
「クローゼットに隠れていた事は許すけど、なんであんなところに居たの?」
私が言うとパリスが恐る恐る話し始める。
「実はパリスはとあるパーティーに入ったのですが、そこのリーダーの方の性的行為の誘いを拒絶していたら、突然暴力を振るわれて、無理矢理犯された後に奴隷として売られてしまったのです。今頃、奴隷商がパリスを探していますが、パリスはもうあんな思いをしたくないのです…だから、どうか…このパリスを買っていただけませんか?貴方なら、少なくとも同じ女性ですし、あんな思いをする事は無いと思いますし、どんな事でもやりますから…だから…お願いします!どうか、パリスを…」
私はパリスの口を塞ぐ。
「パリスさん、貴方の言い分はよくわかりました。ですが、私はパリスさんを買う事はしません。代わりに私のパーティーに入っていただけませんか?」
パリスは驚いた様子で私を見るとすぐに不信感のある顔をする。
「私とここにいるリリアも貴方と似た様な境遇なのですよ。幸いにも奴隷にはされませんでしたが、前のパーティーで不当な扱いを受けてパーティーを脱退したんです。それに、奴隷と言う制度自体、本来は違法制度です。だから、貴方を買うのではなく、貴方を仲間として対等に扱うべきだと思っております。」
私はパリスの目を見る。
パリスも私の目を見る。
しばらく、そのまま見つめ合う。
「パリスは救われるのでしょうか…」
パリスがポツリと言う。
「さあ?」
私は分からないと全面に押して出して首を竦める。
「えっ…」
パリスが思わず固まる。
「だって、そんなの自分がどうしたいか次第じゃない?救われたいなら救われる行動をするし、今より酷い目に合わなければ良いって思ってたら現状維持に務めるでしょ?だから、自分がどうしたいかが大事だと思うわ。ふわぁ…」
私はそろそろ頭が限界を告げていた。
パリスはゆっくりと目を閉じて言う。
「パリスは救われたいです。だから…まずはアリスさんの仲間にしてください!お願いします!」
パリスが土下座をする。
「うん。よろしくね…」
私はもう頭が回らなくなり始めていたので、パリスの事をリリアに任せる。
そのまま、リリアがパリスをお風呂場に連れて行ってる間に椅子に座ったまま気絶する様に眠りにつく。
強力なオレンジの炎を纏って、そのまま拳を振り下ろす。
「凍えよ!魔法拳!」
サリアの拳に雪の塊が出現し、そのまま私の拳の炎を相殺する。
「ならば、これで!サンダー!」
私がそう言って右手を振るうと雷球が勢いよく飛んでいく。
「甘いぜ!魔法拳!」
サリアが闇色の魔力を纏った拳を構える。
私は咄嗟にサリアの正面から逃げる。
サリアが勢いよく突き出すとそこから超重力の闇色の魔力のビームが現れる。
それらは軽々と木々を粉砕する。
「ハハッ!面白ぇ!何にでも応用が出来て面白ぇぜ!」
「今のはビックリしましたよ。まさか、こうもアッサリとこんな技が飛んでくるなんてって…でも、私もまた進化するのですよ!」
私は右手に魔法拳、左手に魔法拳を使う。
「焼き尽くす雷を!魔法拳!」
私は2つの力を混ぜるようにして両手に纏わせる。
「属性を混ぜる…か…四大元素魔法みたいで面白ぇ事するじゃねぇか!」
「まさにアレからヒントを得たようなものですよ。とは言っても、あちらと違い、私のこれは均等な2つの力を完全に混ぜてはいないので、左右で属性値のバラツキが出ますが、その分魔力消費を少なく出来るようにしてみたものです。」
「それはこんな感じか?」
サリアが右手に魔法拳、左手に魔法拳を纏う。
「焼き尽くし、凍てつかせ!魔法拳!ってな!」
ウェリアが真似をする様に魔力を練る。
「地より這い出し地獄の雷よ!ヘルサンダー!」
地面から巨大な黒い雷が発射される。
「これなら、奇襲策としても使い勝手がいい魔法も出来ますわね。」
ウェリアは様々な魔法を試していた。
「それじゃ、一気に行くぞ!」
「臨むところです!」
私の魔法拳とサリアの魔法拳がぶつかり合う。
日が暮れ、夜まで戦いは続いた。
「ふぃ…そろそろ終わりにするか!これ以上はお互いに仕事に支障が出るかもしれねぇからな!」
私は悪魔の力を抑えて、元の姿に戻る。
「そうですね。今日はお付き合いいただいてありがとうございました!」
私がそう言って頭を下げるとウェリアも頭を下げる。
「アタシも面白ぇもん、たくさん見れたし、アリスが魔法を使える様になって楽しかったぜ!また誘ってくれよな!」
その後、サリアに別れを告げて屋敷へと戻る。
「あ、そうだ!ウェリアのご飯作らないと…」
私がそう言うとウェリアが言う。
「なら、私もお手伝いいたしますわ!」
屋敷に戻るとアルが出迎えてくれた。
「ご主人様、お帰りなさいませ!そちらの方はウェリア様ですね?」
ウェリアが驚いた様に目を丸くする。
「メイドたるもの、ご主人様の事は常に把握しておりますよ。ご主人様は作らなくても良いと仰っておりましたが、お二人様の夜食も出来ておりますよ。ちょうど出来たばかりですので、美味しく召し上がっていただけると思いますわ!」
「アハハ…アルはほんとにメイドの仕事が大好きなんだね。ありがたくいただくことにしよう。」
「はい!では、お席についてお待ちください。すぐに持ってまいります。」
私達は手を洗って用意された食卓に座る。
時計を見ると11時をさしていた。
「んう…ふぁ~…」
ベッドで寝ていたリリアが起きる。
「…アリス…おかえり…」
リリアがフラフラと足取りが覚束無い状態で歩いてくる。
「リリア、ただいま!」
私はそっとリリアを隣の椅子に座らせる。
リリアは眠そうに首をカクンカクンさせてる。
「リリア、眠いなら、先に寝た方がいいよ。」
「ん…大丈夫…だ…よ…ぐぅ…」
リリアは寝ながら返事していた。
「…私の事は明日紹介すると言う段取りで問題無いですか?」
ウェリアがリリアの様子を見ながら言う。
「そうだね。多分、今のままじゃ、話を聞くどころじゃないと思うから…」
私達は次の日の段取りを決めながら、食事をとる。
「ごちそうさま!アルの料理も美味しいね!」
私がアルにそう言うとアルは嬉しそうに微笑みながら言う。
「ふふっ…お口にあったようで良かったです。では、後は私が片付けておきますね。これは私がやりたくてやった事ですから…」
「じゃあ、今日はお言葉に甘えちゃおうかな。」
私はリリアを連れて自分の部屋に戻ろうとして言う。
「あ、そうそう。ウェリアは今日はリリアの部屋を貸してあげるね。って言っても、リリアは普段私の部屋で寝る事が多いから、ちょっと埃っぽいかもしれないけど…」
「大丈夫ですわ。こう見えて、自分の事くらいは自分で出来るように躾られておりますの。」
私はウェリアと別れてリリアを自室のベットに寝かせる。
「よし…私もお風呂入って寝ようかな。」
私がお風呂場に降りて、お風呂に入って汚れを落とす。
途中でウェリアもお風呂で汚れを落としてすぐに出た。
私もお風呂を出て、体を拭いたり、髪を乾かした後、そのままバスタオルを巻いて自室に戻ろうとした時だった。
「ふぅ…汗をかいてしまったな…」
セガールとお風呂場に行く通路でばったりと出会ってしまう。
「あ、セガールだ。こんな時間に何してるの?」
私がそう言うとセガールは真っ赤な顔で「誤解だ…僕はそんな…」とかなんとか言ってブツブツ呟いていた。
「セガール?」
私が呼ぶと「はいっ!」って元気よく返事をして背筋をピンと伸ばす。
「あの…皆寝てるから、もうちょっと静かに…ね?」
「す、すみませんでした!」
セガールが土下座する。
「ええ?!セガール!?」
私が驚いているとセガールが言う。
「いくら、僕が恋焦がれてる相手とは言え、こんな覗きみたいな事をしてしまって本当に申し訳ない!」
私はセガールが何を言っているのか少しだけわかんなかったが、なんか凄い勘違いをしてそうな事はわかった。
「よくわかんないけど、セガールは何をしてたの?」
「はい!僕は今まで鍛練所で自主トレーニングをしておりました。ここの一員の中では僕は非力な人間ですので、パーティー戦で足を引っ張らないようにと思って…」
私はセガールの頭を撫でる。
「そっか。セガールも頑張ってるんだね!でも、ほどほどにしないと明日に響くから、早く寝るんだよ?」
私がそう言って自室に戻ろうとするとセガールが言う。
「あの…本当に申し訳ございませんでした!」
「ん?何か悪いことでもしたの?まあ、私は気にしてないから良いけど…」
私はそのまま自室に戻る。
後に残されたセガールはお風呂の中で悶絶していたとかいなかったとか…
自室に戻るとリリアが身体を起こしてキョロキョロしていた。
「リリア、起きてたの?」
「うん…アリス…部屋…誰か来てる?」
私はウェリアの事だろうと思い、「今日新しく入ったウェリアにリリアの部屋を貸してるよ」と言うとリリアが首を振る。
「違う…この部屋…」
私は感知を使う。
「うん?」
私は押し入れの中を見る…
「ヒャッ!?」
私と同じ獣人の小さな女の子だ。
ただし、私とは違って兎の獣人みたいだけど…
「迷子かな…」
私が女の子に触れようとすると女の子がビクッと身体を震わせる。
「怖くないよ。ほら、出ておいで。」
私は手を引っ込めて、女の子が出てくるのを待つ。
「い、嫌です!パリスはもう戻りたくないです!」
女の子はパリスと言う名前らしい。
「パリスちゃんって言うのね。私はアリス、こっちにいるのはリリアよ。とりあえず、事情を聞かせてもらいたいから、出てきてくれないかしら?」
私がそう言うとパリスはチラッと私の顔を見る。
その紅い目には恐怖が映っていた。
「…ブレイブ。」
リリアがパリスの心を奮い立たせる魔法を使う。
パリスは震えながらも押し入れの中から出てくる。
ボサボサの白く短い髪、汚れたワンピース、背丈は私より小さいくらいで種族の特徴的な大きな胸と長い耳、身体には無数の痣や傷跡が残っていて、かなり痛々しい見た目になっており、脚には奴隷である事を証明する焼印が押されていた。
「リリア、回復できる?」
「任せて…」
リリアがパリスの身体を回復させる。
ついでに奴隷の焼印も消しておく。
パリスの傷と痣で黒ずんでいた肌はとても白く美しい色に戻っていた。
「あの…ご、ごめんなさい!」
パリスは土下座して謝る。
「クローゼットに隠れていた事は許すけど、なんであんなところに居たの?」
私が言うとパリスが恐る恐る話し始める。
「実はパリスはとあるパーティーに入ったのですが、そこのリーダーの方の性的行為の誘いを拒絶していたら、突然暴力を振るわれて、無理矢理犯された後に奴隷として売られてしまったのです。今頃、奴隷商がパリスを探していますが、パリスはもうあんな思いをしたくないのです…だから、どうか…このパリスを買っていただけませんか?貴方なら、少なくとも同じ女性ですし、あんな思いをする事は無いと思いますし、どんな事でもやりますから…だから…お願いします!どうか、パリスを…」
私はパリスの口を塞ぐ。
「パリスさん、貴方の言い分はよくわかりました。ですが、私はパリスさんを買う事はしません。代わりに私のパーティーに入っていただけませんか?」
パリスは驚いた様子で私を見るとすぐに不信感のある顔をする。
「私とここにいるリリアも貴方と似た様な境遇なのですよ。幸いにも奴隷にはされませんでしたが、前のパーティーで不当な扱いを受けてパーティーを脱退したんです。それに、奴隷と言う制度自体、本来は違法制度です。だから、貴方を買うのではなく、貴方を仲間として対等に扱うべきだと思っております。」
私はパリスの目を見る。
パリスも私の目を見る。
しばらく、そのまま見つめ合う。
「パリスは救われるのでしょうか…」
パリスがポツリと言う。
「さあ?」
私は分からないと全面に押して出して首を竦める。
「えっ…」
パリスが思わず固まる。
「だって、そんなの自分がどうしたいか次第じゃない?救われたいなら救われる行動をするし、今より酷い目に合わなければ良いって思ってたら現状維持に務めるでしょ?だから、自分がどうしたいかが大事だと思うわ。ふわぁ…」
私はそろそろ頭が限界を告げていた。
パリスはゆっくりと目を閉じて言う。
「パリスは救われたいです。だから…まずはアリスさんの仲間にしてください!お願いします!」
パリスが土下座をする。
「うん。よろしくね…」
私はもう頭が回らなくなり始めていたので、パリスの事をリリアに任せる。
そのまま、リリアがパリスをお風呂場に連れて行ってる間に椅子に座ったまま気絶する様に眠りにつく。
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