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漣の少女
41話
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「では、よろしくお願いします!」
私がそう言うとサリアが私の前で構える。
「まずはアリスがどこまで出来んのか見せてもらうぜ!」
「では…いきます!」
私は少しだけ力を入れてサリアの腹に左の拳を突きだす。
「思ったより、力があるみたいだな。私から教えられるとしたら、魔法拳についてだが…」
サリアは私の右手を見る。
読者の皆はもう何度も見ただろうアリスの体質。
黒く禍々しい色をしたその腕には悪魔と精霊の力が宿っている。
この2種類の相反する力による属性反発作用によって、属性魔法が使用不可になっている。
私は突き出した左手を見る。
「サリアさん、私、魔法拳使えるようになるかもしれません。」
サリアは驚いた様子で目を見開く。
「力の制御方法でも思いついたのか?」
「いえ、そうではありません。」
私は左の拳を見る。
「この手には龍の力が宿っています。その力でならば、私の相反する2つの力を利用する事が無いので、属性魔法を扱えるのではないかと考えたのです。もし仮にこれで使えれば、私はもっと高みにいけると思うのです。」
「ハッハッハ!やっぱ、お前は面白ぇやつだ!普通、そんな事思いつかねぇからな!」
サリアは拳に炎を纏う。
「これが魔法拳だ!炎の魔力を意識すれば出来ると思うぜ!」
ウェリアが試す様にやる。
「燃えろ!魔法拳!」
私は炎のイメージを強く思い浮かべる。
「燃えろ!魔法拳!」
私の拳に炎が出ることは無かった。
「う~ん…ダメでしたか…なら…」
私は右手に精霊力を纏う。
「魔法拳!」
少しだけ拳に炎を纏う事に成功した。
「お?やったじゃねぇか!どうやったんだ?」
「同程度の力がぶつかり合うのをどちらかに偏らせる感覚でイメージしました。思ってたより上手くいったので、訓練すればきっともっと出来るのかなと思います。」
サリアは楽しそうに言う。
「ハッハッハ!やっぱ、アリスの言う事は面白ぇな!アタシらとは違った見方が出来てすげぇぜ!」
サリアは一度魔法拳を解除して、もう一度魔法拳を使う。
すると先程よりもかなり強い火がサリアの拳に纏われる。
「お?これはアタシ達にも応用が出来そうだな!上手くやれば、アリスの考え方で同じ魔力を使っても威力に違いが出そうだぜ!」
私の目で見ても、先程と魔力量自体は変わってないが、威力が格段に跳ね上がっている事が分かる。
ウェリアが杖を取り出す。
「ファイア!」
「ゴウッ!」と音を立てて燃え盛る火球がウェリアの杖から放たれる。
火球は近くの木に当たるとその木を一瞬にして灰にする。
「…凄いですわ!これは魔法学会の革命ですわ!アリスさん、貴方、本当に天性の才がありますわよ!」
ウェリアはもはやアリスが魔法を使えるのか使えないのかはどうでもよかった。
それよりも凄い発見をしたからだ。
ウェリアは雷の魔力を溜める。
「アリスさんの言葉のイメージを利用して…」
ウェリアの杖にパチパチと電気が発生する。
「留まる雷を!サンダースフィア!」
ウェリアがそう言って勢いよく杖を振るとウェリアの目の前に雷球が浮かび上がる。
サリアがその様子を見て言う。
「すげぇじゃねぇか!雷属性の魔法はタダでさえ、扱いが難しいってんのに、それをその場に留めるなんて、歴代でも出来たやつは居ねぇぞ!」
私は少しだけ好奇心を感じて力の入れ方を変えてみる。
「こうはどうかな…魔法拳!」
私はは先程よりも弱く塊にした魔力で出来る偏りをイメージしながら、魔法拳を使う。
今度は先程よりも纏う火は小さくなったが、火力が桁違いになっていた。
「せいっ!」
私はそのまま左の拳を突き出す。
「ゴウッ!」と音を立てて炎が発生し、拳から先の直線上のものが熱によって跡形もなく蒸発する。
「よっし!上手くいったわ!なら、次は…」
「ちょっと待ちなさい!今のはなんですの?!」
ウェリアが勢いよく言う。
「何って…ただの魔法拳を衝撃波に乗せただけなんだけど…」
私が冷静に言うとウェリアは「何を言っているのですか?!」と顔全体に出ていた。
軽く原理を説明すると…
まず、拳に纏う少量の魔力の偏りを強くイメージする。
そして、その少量の魔力を打ち出す様なイメージで拳を突き出すと衝撃波に魔法拳を乗せられるって言う比較的に単純なやり方だ。
「アッハッハッ!やっぱ、アリスは面白ぇ!次から次へと面白ぇアイデアが出てくるじゃねぇか!」
それを聞いたサリアが楽しそうに笑う。
「アリス、貴方、本当に魔法が使えなかったんですよね?」
ウェリアが不思議そうに言う。
「えぇ…今の今まで魔法が使えませんでしたよ。とは言っても、今は無理矢理、力に偏りをつけているから、一時的に魔法が使える状態になっているだけなのですが…」
私がそう言うと、私の右手に纏わせていた精霊力が消えると同時に私の左手の魔法拳の炎も消える。
「あ、纏っていた精霊力が尽きたみたいね。」
私は再度同じ事をやろうとするが、何故かイメージ通りに上手くいかない…
「なあ、思ったんだけどよ…」
サリアが私の右手を見る。
「例えばだけどよ…精霊力を小さくしたりとかは出来ないのか?どちらかを大きくしようとすると消費も激しいだろ?」
「出力調整かぁ…やった事ないけど、力の制御に役立つかもしれないし、試してみる!」
私は目を閉じて集中する。
「力は水…水は器…器は水の源…溢れた水面は地を這い、外へ出る…」
私が今言っているのはこの世界における力のイメージだ。
「器を増やすか、水を減らすか…」
私はある方法を試す。
「穴を開けてしまおう!それでダメなら、次だ!」
私は少しだけ器に穴を開けるようなイメージを浮かべる。
精霊力が弱まった感覚と同時に悪魔の力が溢れ出る。
「あ…う…」
全身に激痛が走り、意識が遠のきそうになる。
「お、おい!大丈夫か?」
サリアの手が私の身体に触れようとする。
「触らないで!」
サリアが驚いて手を引っ込めるとサリアの手には火傷のような痕が残っていた。
「大丈夫…大丈夫…大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫…」
私は無理矢理自分を奮い立たせて、大丈夫だと言い聞かせる。
「悪魔操術!」
聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、私の中の悪魔の力が抑えられたように感じた。
「全く…お前は無茶するよ…」
私たちが声のした方を見るとそこにはダリアンがいた。
「ありがとう…」
「礼なんて良いわよ。何でこんな事をしたのかだけ、教えてちょうだい。」
私は簡単に今日の修行の成果を説明する。
その中でより魔法を使える時間を伸ばす為の策として、精霊力を抑える形で伸ばそうとした事も使える。
「…なるほどな。それであんな無茶をしたわけか…」
ダリアンは「はぁ…」とため息をついて言う。
「本当はもっと強くなってから、渡すはずだったんだけどな…」
ダリアンはそう言いながら、私にあるものを渡す。
それが私の右手に入り込むと私の脳内に記憶が流れ込んでくる。
『アリス、貴方がこの力を手にした時、私はこの世にはいないでしょう。ですが、悲しむ事はありません。貴方はとても強くなりました。私はそれを見れただけで満足なのです。今の貴方なら、私の力も使いこなしてくれると信じてます。』
私は悪魔の力の制御方法を覚えた。
そして、私たちの目の前には黒色の2本の角に藍色の長い髪の少女の悪魔がいた。
「悪魔だと?!」
サリアが拳を構え、ウェリアも杖を構える。
私はゆっくりとその悪魔に近づく。
「マリッシャー、貴方だったのですね。」
マリッシャーと呼ばれた悪魔は片膝をついてアリスに頭を下げる。
「アリス様、今まで騙すような事をしていて申し訳ございません。」
私はマリッシャーの顔を上げさせる。
「大丈夫ですよ。お母様に言われていたのでしょう?悪気があって偽っていたわけでも無いですし、気にしてませんよ。それよりもまたこうして貴方と会えた事が嬉しいです。」
「もったいないお言葉です…」
マリッシャーはそう言うとそのまま立ち上がる。
背丈は今の私より少し小さく、胸はそこそこあった。
私は昔のように接する事を希望するとマリッシャーは優しく微笑んで言う。
「アリス様は優しいなぁ…悪魔としては心配になるくらい優しいよ。」
ウェリアが冷静にマリッシャーを見ながら言う。
「アリス、この悪魔とはどの様な関係なのですか?」
「マリッシャーは私の年の離れたお姉ちゃんみたいな存在ですよ。私が幼い頃、お母様がいない時に彼女が母親の代わりをしてくれたり、何かと私に世話を焼いてくれたりといろいろしていただいたものです。」
マリッシャーはニコニコと笑いながら言う。
「そうだな。私は階級は違えど、アリス様の事は大好きだからな。もちろん、今でもそれは変わらないし、アリス様の為ならなんだってやるぜ!」
「貴方はいろいろと力押しでゴリ押してやり過ぎるでしょう…」
そんな事を言っているとどこからともなくグラディオスが現れる。
「ダリアン…お前…」
マリッシャーが言う。
「グラディエル、お前にも謝らないとな…俺のウソに付き合わせちまってすまんかった。」
グラディオスはため息をつきながら言う。
「はぁ…まあ、良いぜ。これも一つの依頼だったからな。仕事を完遂出来て良かったぜ。後、俺はグラディオスだ。グラディエルは俺の親父の名前だ。」
「アハハ!そうだったな!」
マリッシャーはグラディオスに言う。
「なあ、グラディオス、ダリアンはまだ使えるか?」
「ああ、情報削除はまだしてないからな。でも、お前は悪魔だろ?縛られるのは悪魔的にはどうなんだ?」
「俺はアリス様の元で暮らせるならなんでもいいぜ!俺はアリス様の事が大好きだからな!」
マリッシャーは満面の笑みで言う。
「なら、情報はそのままにしておくぞ。報酬はあの世の親父にでも払っておいてくれ。」
グラディオスはそう言ってギルドに戻ろうとする。
「待ってください!」
私はグラディオスを呼び止める。
「なんだよ…俺は帰ってゆっくりとだな…」
私はグラディオスの目を見る。
グラディオスと目が合う。
「グラディオスさん、今まで私の身内がお世話になりました!そして、これからもよろしくお願いします!」
グラディオスはニヤリと笑って言う。
「気にすんな。俺もアイツもお前の事が好きでやっただけだ。」
グラディオスはそのままギルドの中に帰っていく。
マリッシャーの方へ振り返るとマリッシャーの姿は無かった。
私は覚えたての悪魔術を試す為にサリアに言う。
「サリアさん、私と戦ってもらえませんか?」
サリアはニヤリと笑って言う。
「良いぜ!アタシにも悪魔の力を見せてくれ!」
サリアが構えて、私は悪魔の力を解放して、背中に悪魔の翼が生える。
「いきます!」
「こい!」
私は一瞬でサリアの目の前に移動し、悪魔の力を纏った右手で殴りかかる。
私がそう言うとサリアが私の前で構える。
「まずはアリスがどこまで出来んのか見せてもらうぜ!」
「では…いきます!」
私は少しだけ力を入れてサリアの腹に左の拳を突きだす。
「思ったより、力があるみたいだな。私から教えられるとしたら、魔法拳についてだが…」
サリアは私の右手を見る。
読者の皆はもう何度も見ただろうアリスの体質。
黒く禍々しい色をしたその腕には悪魔と精霊の力が宿っている。
この2種類の相反する力による属性反発作用によって、属性魔法が使用不可になっている。
私は突き出した左手を見る。
「サリアさん、私、魔法拳使えるようになるかもしれません。」
サリアは驚いた様子で目を見開く。
「力の制御方法でも思いついたのか?」
「いえ、そうではありません。」
私は左の拳を見る。
「この手には龍の力が宿っています。その力でならば、私の相反する2つの力を利用する事が無いので、属性魔法を扱えるのではないかと考えたのです。もし仮にこれで使えれば、私はもっと高みにいけると思うのです。」
「ハッハッハ!やっぱ、お前は面白ぇやつだ!普通、そんな事思いつかねぇからな!」
サリアは拳に炎を纏う。
「これが魔法拳だ!炎の魔力を意識すれば出来ると思うぜ!」
ウェリアが試す様にやる。
「燃えろ!魔法拳!」
私は炎のイメージを強く思い浮かべる。
「燃えろ!魔法拳!」
私の拳に炎が出ることは無かった。
「う~ん…ダメでしたか…なら…」
私は右手に精霊力を纏う。
「魔法拳!」
少しだけ拳に炎を纏う事に成功した。
「お?やったじゃねぇか!どうやったんだ?」
「同程度の力がぶつかり合うのをどちらかに偏らせる感覚でイメージしました。思ってたより上手くいったので、訓練すればきっともっと出来るのかなと思います。」
サリアは楽しそうに言う。
「ハッハッハ!やっぱ、アリスの言う事は面白ぇな!アタシらとは違った見方が出来てすげぇぜ!」
サリアは一度魔法拳を解除して、もう一度魔法拳を使う。
すると先程よりもかなり強い火がサリアの拳に纏われる。
「お?これはアタシ達にも応用が出来そうだな!上手くやれば、アリスの考え方で同じ魔力を使っても威力に違いが出そうだぜ!」
私の目で見ても、先程と魔力量自体は変わってないが、威力が格段に跳ね上がっている事が分かる。
ウェリアが杖を取り出す。
「ファイア!」
「ゴウッ!」と音を立てて燃え盛る火球がウェリアの杖から放たれる。
火球は近くの木に当たるとその木を一瞬にして灰にする。
「…凄いですわ!これは魔法学会の革命ですわ!アリスさん、貴方、本当に天性の才がありますわよ!」
ウェリアはもはやアリスが魔法を使えるのか使えないのかはどうでもよかった。
それよりも凄い発見をしたからだ。
ウェリアは雷の魔力を溜める。
「アリスさんの言葉のイメージを利用して…」
ウェリアの杖にパチパチと電気が発生する。
「留まる雷を!サンダースフィア!」
ウェリアがそう言って勢いよく杖を振るとウェリアの目の前に雷球が浮かび上がる。
サリアがその様子を見て言う。
「すげぇじゃねぇか!雷属性の魔法はタダでさえ、扱いが難しいってんのに、それをその場に留めるなんて、歴代でも出来たやつは居ねぇぞ!」
私は少しだけ好奇心を感じて力の入れ方を変えてみる。
「こうはどうかな…魔法拳!」
私はは先程よりも弱く塊にした魔力で出来る偏りをイメージしながら、魔法拳を使う。
今度は先程よりも纏う火は小さくなったが、火力が桁違いになっていた。
「せいっ!」
私はそのまま左の拳を突き出す。
「ゴウッ!」と音を立てて炎が発生し、拳から先の直線上のものが熱によって跡形もなく蒸発する。
「よっし!上手くいったわ!なら、次は…」
「ちょっと待ちなさい!今のはなんですの?!」
ウェリアが勢いよく言う。
「何って…ただの魔法拳を衝撃波に乗せただけなんだけど…」
私が冷静に言うとウェリアは「何を言っているのですか?!」と顔全体に出ていた。
軽く原理を説明すると…
まず、拳に纏う少量の魔力の偏りを強くイメージする。
そして、その少量の魔力を打ち出す様なイメージで拳を突き出すと衝撃波に魔法拳を乗せられるって言う比較的に単純なやり方だ。
「アッハッハッ!やっぱ、アリスは面白ぇ!次から次へと面白ぇアイデアが出てくるじゃねぇか!」
それを聞いたサリアが楽しそうに笑う。
「アリス、貴方、本当に魔法が使えなかったんですよね?」
ウェリアが不思議そうに言う。
「えぇ…今の今まで魔法が使えませんでしたよ。とは言っても、今は無理矢理、力に偏りをつけているから、一時的に魔法が使える状態になっているだけなのですが…」
私がそう言うと、私の右手に纏わせていた精霊力が消えると同時に私の左手の魔法拳の炎も消える。
「あ、纏っていた精霊力が尽きたみたいね。」
私は再度同じ事をやろうとするが、何故かイメージ通りに上手くいかない…
「なあ、思ったんだけどよ…」
サリアが私の右手を見る。
「例えばだけどよ…精霊力を小さくしたりとかは出来ないのか?どちらかを大きくしようとすると消費も激しいだろ?」
「出力調整かぁ…やった事ないけど、力の制御に役立つかもしれないし、試してみる!」
私は目を閉じて集中する。
「力は水…水は器…器は水の源…溢れた水面は地を這い、外へ出る…」
私が今言っているのはこの世界における力のイメージだ。
「器を増やすか、水を減らすか…」
私はある方法を試す。
「穴を開けてしまおう!それでダメなら、次だ!」
私は少しだけ器に穴を開けるようなイメージを浮かべる。
精霊力が弱まった感覚と同時に悪魔の力が溢れ出る。
「あ…う…」
全身に激痛が走り、意識が遠のきそうになる。
「お、おい!大丈夫か?」
サリアの手が私の身体に触れようとする。
「触らないで!」
サリアが驚いて手を引っ込めるとサリアの手には火傷のような痕が残っていた。
「大丈夫…大丈夫…大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫…」
私は無理矢理自分を奮い立たせて、大丈夫だと言い聞かせる。
「悪魔操術!」
聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、私の中の悪魔の力が抑えられたように感じた。
「全く…お前は無茶するよ…」
私たちが声のした方を見るとそこにはダリアンがいた。
「ありがとう…」
「礼なんて良いわよ。何でこんな事をしたのかだけ、教えてちょうだい。」
私は簡単に今日の修行の成果を説明する。
その中でより魔法を使える時間を伸ばす為の策として、精霊力を抑える形で伸ばそうとした事も使える。
「…なるほどな。それであんな無茶をしたわけか…」
ダリアンは「はぁ…」とため息をついて言う。
「本当はもっと強くなってから、渡すはずだったんだけどな…」
ダリアンはそう言いながら、私にあるものを渡す。
それが私の右手に入り込むと私の脳内に記憶が流れ込んでくる。
『アリス、貴方がこの力を手にした時、私はこの世にはいないでしょう。ですが、悲しむ事はありません。貴方はとても強くなりました。私はそれを見れただけで満足なのです。今の貴方なら、私の力も使いこなしてくれると信じてます。』
私は悪魔の力の制御方法を覚えた。
そして、私たちの目の前には黒色の2本の角に藍色の長い髪の少女の悪魔がいた。
「悪魔だと?!」
サリアが拳を構え、ウェリアも杖を構える。
私はゆっくりとその悪魔に近づく。
「マリッシャー、貴方だったのですね。」
マリッシャーと呼ばれた悪魔は片膝をついてアリスに頭を下げる。
「アリス様、今まで騙すような事をしていて申し訳ございません。」
私はマリッシャーの顔を上げさせる。
「大丈夫ですよ。お母様に言われていたのでしょう?悪気があって偽っていたわけでも無いですし、気にしてませんよ。それよりもまたこうして貴方と会えた事が嬉しいです。」
「もったいないお言葉です…」
マリッシャーはそう言うとそのまま立ち上がる。
背丈は今の私より少し小さく、胸はそこそこあった。
私は昔のように接する事を希望するとマリッシャーは優しく微笑んで言う。
「アリス様は優しいなぁ…悪魔としては心配になるくらい優しいよ。」
ウェリアが冷静にマリッシャーを見ながら言う。
「アリス、この悪魔とはどの様な関係なのですか?」
「マリッシャーは私の年の離れたお姉ちゃんみたいな存在ですよ。私が幼い頃、お母様がいない時に彼女が母親の代わりをしてくれたり、何かと私に世話を焼いてくれたりといろいろしていただいたものです。」
マリッシャーはニコニコと笑いながら言う。
「そうだな。私は階級は違えど、アリス様の事は大好きだからな。もちろん、今でもそれは変わらないし、アリス様の為ならなんだってやるぜ!」
「貴方はいろいろと力押しでゴリ押してやり過ぎるでしょう…」
そんな事を言っているとどこからともなくグラディオスが現れる。
「ダリアン…お前…」
マリッシャーが言う。
「グラディエル、お前にも謝らないとな…俺のウソに付き合わせちまってすまんかった。」
グラディオスはため息をつきながら言う。
「はぁ…まあ、良いぜ。これも一つの依頼だったからな。仕事を完遂出来て良かったぜ。後、俺はグラディオスだ。グラディエルは俺の親父の名前だ。」
「アハハ!そうだったな!」
マリッシャーはグラディオスに言う。
「なあ、グラディオス、ダリアンはまだ使えるか?」
「ああ、情報削除はまだしてないからな。でも、お前は悪魔だろ?縛られるのは悪魔的にはどうなんだ?」
「俺はアリス様の元で暮らせるならなんでもいいぜ!俺はアリス様の事が大好きだからな!」
マリッシャーは満面の笑みで言う。
「なら、情報はそのままにしておくぞ。報酬はあの世の親父にでも払っておいてくれ。」
グラディオスはそう言ってギルドに戻ろうとする。
「待ってください!」
私はグラディオスを呼び止める。
「なんだよ…俺は帰ってゆっくりとだな…」
私はグラディオスの目を見る。
グラディオスと目が合う。
「グラディオスさん、今まで私の身内がお世話になりました!そして、これからもよろしくお願いします!」
グラディオスはニヤリと笑って言う。
「気にすんな。俺もアイツもお前の事が好きでやっただけだ。」
グラディオスはそのままギルドの中に帰っていく。
マリッシャーの方へ振り返るとマリッシャーの姿は無かった。
私は覚えたての悪魔術を試す為にサリアに言う。
「サリアさん、私と戦ってもらえませんか?」
サリアはニヤリと笑って言う。
「良いぜ!アタシにも悪魔の力を見せてくれ!」
サリアが構えて、私は悪魔の力を解放して、背中に悪魔の翼が生える。
「いきます!」
「こい!」
私は一瞬でサリアの目の前に移動し、悪魔の力を纏った右手で殴りかかる。
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