魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

文字の大きさ
56 / 108
反骨の意志

46話

しおりを挟む
翌朝…

「ふわぁ…」

私は両脇に温かさを感じながら欠伸をする。

いつものようにリリアの身体を引き剥がそうとするが…

「…あれ?」

リリアの身体もパリスの身体も引き剥がせない。

「はぁ…」

私は大きなため息をついて諦めた。

しばらくボーッとして時間を潰しているとリリアが起きる。

「…?おはよう?」

「おはようリリア。今日は凄く力強くくっついてるんだね。」

リリアは「何を言ってるの?」と言いたげに首を傾げながら動こうとする。

「…?!動けない…」

「えっ…」

私は探知を使う。

周囲に呪力や魔力の類は感じなかった。

「まさか…」

私はパリスを見る。

「お姉様と一緒ですの…むにゃむにゃ…」

リリアは察した様子で言う。

「リリア…歩く…?」

「そうね…でも、危なくないかしら?」

「大丈夫…」

リリアはそういうと身体を起こす。

私とパリスの身体も同時に起き上がる。

「リリア、あんまり無理しないでね…」

「平気…アリス…軽い…」


あ…今、胸見ただろ。

おい…足の先から頭の先まで丁寧に見やがって!追い討ちやめろ!


リリアは少しだけ楽しげに口元を緩ませながら、ゆっくりと足元を確認し、洗面台までくる。

「あっ…顔…洗えない…」

リリアは少し残念そうに言う。

「大丈夫よ。私が居るからね!」

私は自分とリリアの顔を洗う。

「アリス…凄い…」

「アハハ!こう言うのはわりと得意な方だからね。」

そのままクシでパリスの爆発してる髪をとかし、綺麗にする。

リリアの髪も軽くとかして後ろでまとめる。

「よし。出来た。」

私がそう言うと嬉しそうに黄金色のポニーテールを揺らして、リリアはそのまま部屋に戻る。

「まだ離れない…」

リリアが少し不満そうに言う。

「あら?リリアとしては嬉しい誤算ってやつじゃないかしら?」

私がリリアをからかうように言うとリリアはちょっと不満そうに言う。

「アリス…コーヒー…作れない…」

どうやら、私に朝のコーヒーが作れない事が不満だったらしい。

「リリアはほんとに私の事ばっかり考えてるね。」

「それが…リリアの生きる意味…それ以外…いらない…」

リリアは少しだけ抱き締める力を強くする。

「う~ん…」

パリスが眠そうに唸りながら目を開ける。

一瞬、魔力が弱まった隙にリリアが離れる。

すぐにパリスがスヤスヤと寝始める。

「やっと…いれれる…」

リリアはそういうと急いでコーヒーを入れようとする。

「…?ない…」

リリアがショックを受けた様子でアイテムボックスからバナナとリンゴが合わさった様な果実のバナップルを取り出して、ジュースを作る魔道具に入れる。

「ジュース…コーヒー…ジュース…」

リリアはいつもより少しだけテンションが低かったが、冷たくて甘いバナップルジュースを持ってくる。

「ありがと!」

「また…コーヒー…買う…」

リリアはニコニコと微笑みながら、ジュースを飲む。

「私としては、すぐに飲めるからジュースの方が有難いんだけどね。」

そう言いながら、冷たいジュースを飲む。

「…じゃあ…明日も…ジュース…作る…」

リリアはとても嬉しそうに言う。

「アハハ…でも、リリアが飲みたいものを作ってくれたらいいよ。コーヒーもコーヒーで悪くはないからね。」

私がそういうとリリアは首を振りながら言う。

「いつも…別々…コーヒー…熱い…でも…ジュース…一緒…冷たい…」

「確かにいつもは私が猫舌なせいで別々に飲んでるもんね。そういう意味ではリリア的にはジュースの方が良いのかな?」

「うん…」

リリアは嬉しそうに小さく鼻歌を歌う。

二人ともジュースを飲み終わって、リリアが片づける。

しばらくすると皆が起きてくる足音が聞こえ始める。

「もうそんな時間かぁ…」

私は寝てるパリスをくっつけたままリリアと皆の元へ行く。

「アリス姉…リリア…おはよう。」

マリアが私に気づいて眠そうに挨拶する。

「おはよ!」

「おはよう…マリア…」

そこにアルがやってきて、私に耳打ちをする。

「マリアさんの情報により、昨日の我々の作戦会議が盗聴されていた事が発覚しました。こちらの対応は会議中に席を外したクレアさんとデュークさんが全ての盗聴魔道具の破壊を行い、会議後にリリーフィルさんが波魔法により、第二、第三、第四国防騎士隊に指示を出し、夜が開ける前に盗聴した者たちを全て捕らえました。それにより少しだけ作戦の内容が変更となっておりますが、パーティー戦の内容は変更されていません。またこの変更に伴い、フィリアさんとサリサで南の街外れの怪しい建物を調査に行く手筈になり、代わりにマリアさんが茉莉さんと英雄達の剣の討伐隊に向かう事になりました。後は大きな変更点はございませんが、こちらも攻め込まれる可能性がありますので、アイフェット様にこちらの防衛を依頼しています。」

私はいきなりとんでもない事をやってきたと顔を抑える。

リリアが言う。

「だから…マリア…空気…だった…?」

マリアは半分寝ながら言う。

「ぐぅ…変な気配…すぅ…した…すぴ~…から…ぷぅ…」

思わず寝息のレパートリーに吹き出しそうになる。

リリアが真顔でマリアの頬をぺちぺちと叩く。

「痛い痛い!痛いよリリア…」

少し赤くなった頬を擦りながら、マリアが涙目で言う。

「寝てる…悪い…」

リリアが「ぷく~」と頬を膨らませてマリアを見る。

「うぅ…それでも…もうちょい優しく出来たじゃんか~…」

「ツーン」と顔を背けてリリアは言う。

「リリア、あんまりマリアをイジメないであげてね…」

「…わかった。」

リリアは真顔でマリアを見る。

「いや…わかったって言う人の顔じゃないんだけど…」

マリアがそんな事を言っていると玄関が開かれる。

「アイフェット・アルフェノーツ、ただいま参りました。」

アイフェットが声高らかに言う。

アルが出迎えて、他の皆もそれぞれの場所に向かう。

「さて、私達もパーティー戦の会場に向かうよ!」

私たちは会場である王立闘技場に移動を始める。



私たちが控え室に着くとパリスが目覚める。

「んう?ふわぁ~…」

眠そうに目を擦っているパリスを見ながら、スキンヘッドのガラのわるそうな男が寄ってくる。

「なんだ?このガキ、あくびなんかしやがって…舐めてんのか?」

私はパリスに言う。

「パリスちゃん、おはよう。」

「…んう?アリスさん、おはようございます…」

パリスはまだ眠そうにあくびをしていた。

私たちが無視していたので、ガラのわるそうな男が怒った様子で言う。

「てめぇ…オレが誰だかわかっての態度か?アァン?」

「うるさいおじさん…」

リリアが興味無さそうに言う。

「オレは泣く子も黙るA級冒険者のグレミィ様だぞ?舐めてるとぶっ殺すぞ!」

周りが「なんだ?なんだ?」と騒ぎ始める。

「リリア、相手にしちゃダメよ。こんな程度のやつと同レベルだと思われたくはないでしょ?」

私がリリアとパリスを連れて場所を変えようとして背を向けた瞬間だった。

「舐めやがって…ぶっ殺してやる!」

グレミィと名乗った男が背中の雷属性のB級メイスのトールハンマーを振り上げる。

「よっと…」

私が軽く足払いをしてバランスを崩したグレミィがそのまま後ろに倒れて、偶然あった水の入った掃除用バケツがひっくり返りグレミィが頭からずぶ濡れになる。

「少しは頭冷やしたら?」

「A級があんなあっさりと…」とか「あの猫族の女すげぇ!」とか周りが少しだけ騒がしくなる。

私はパリスとリリアとともにその場を離れる。

「アリスさん…かっこいい…!」

パリスがキラキラした目で私を見る。

「今のでA級かぁ…となれば、パリスちゃんもSS級レベルの実力があるのかしら…」

私はそう言いながら、探知を使って周囲に危険な存在が無いかを確認する。

「…アリス?」

リリアが不思議そうに私の顔を覗き込んでいた。

「ん?どうしたの?」

「とても…怖い…顔…してる…」

私は慌てて頬をパシパシと叩く。

「緊張してるのかも。なんたって、対人戦は久しぶりだからね。」

「ふふっ…アリスらしいや…」

そんな事を言っていると、開会式の合図がされる。

選手が全員闘技場内に入ると国王が挨拶をし、予選の開始を告げる。

予選は単純で1~8のグループに分けて行われ、それぞれのグループを勝ち抜いたパーティーのみ、本戦へと進む権利を得る。

またこの予選ではバトルロイヤル形式だとのこと。

そして、7グループ目に私たちが含まれている。

「よーし…パリスも頑張るぞ~!おー!」

パリスが元気よく拳を突き上げて気合を入れる。

リリアも一緒に「おー」と拳を突き上げていた。



そして、私たちのグループの出番が来る。

私たちは闘技場に向かい、それぞれのパーティーを見る。

「行くぞ!」

「おう!」「うん!」

試合開始のゴングと共に一瞬にして、ほとんどのパーティーが全滅する。

「派手にやってくれましたね…」

私がそう言っていると目の前から虎の様な顔の鋭い爪を持った虎族タイガルー人獣アニマリスが飛び込んでくる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...