魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

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魔王都市とルネリス

59話

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私達が村に戻るとパリスが一目散に私の元に来る。

その後に気がついたリリアもやってくる。

アークがウルカの手を見て言う。

「ホッホッホー!今夜は楽しくなりそうですな!」

「んだよ?ジジイも食いてぇのかよ…」

ウルカは口では嫌そうにしていたが、尻尾は全力で喜びを現していた。

アークもそれがわかっている様で、楽しそうに笑っていた。

私は収納魔法で収納していた肉を出すと村の人達が匂いにつられて集まってくる。

「お姉さん、その肉くれない?」とか「お姉ちゃん、僕にもそのお肉ちょうだい!」なんて大人から子供まで、皆が肉を食べたいと騒いでいた。

「お前ら、落ち着け!これは全部アリスが狩った獲物なんだぞ!」

ウルカが村の人達を落ち着かせようとする。

「大丈夫ですよ、ウルカさん。こんな事もあろうかとたくさん用意してますからね♪あ、アークさん、村の皆さんをお呼びしてください!私はその間に準備しておきますので…」

私がテキパキと用意をしながら言うとアークが楽しげに笑いながら村の人たちを集める。

「アリス…リリア…手伝う…」

「パリスもお手伝いしますよ!」

リリアが肉を捌いてパリスは私のやってる事の手伝いをしていた。

「あ、あのよ…」

ウルカが少し恥ずかしそうに頬を掻きながら言う。

「俺も何か手伝うぞ?」

「じゃあ、薪割りお願いしてもいいかな?たくさん必要になると思うから、ウルカさんにも手伝ってもらいたくてさ。」

私がそう言うとウルカはとても嬉しそうに頬を緩ませて言う。

「力仕事なら得意分野だぜ!」

そう言うとウルカはとてつもない勢いで薪割りを始める。

私たちが準備を終わる頃には山の様な薪が出来ていて驚いた。

「ウルカさんって、すごく手際よく薪を作るんですね。」

パリスが「凄いなぁ…」と呟きながらそういう。

「そうか?つっても、俺は小さい頃からこう言う力仕事しかした事がねぇからなぁ…まあ、当然っちゃ当然だな!」

そう言いながらも尻尾を振ってるところも凄く可愛いな~と思わず笑みが零れそうになる。

クレアが薪をセットしながら言う。

「アリスー!こっちは準備出来たのじゃ!いつでも火をつけられるぞ!」

「じゃあ、火をつけてその上に鉄板を置いてくれる?」

「了解なのじゃ!ファイヤー!」

クレアがそう言って火を吹くと薪にあっという間に火がついて、その上に鉄板を置く。

ちなみにクレアが「ファイヤー!」と言ったのはただの雰囲気作りの為で火を吹くのに必要だったりはしない。

鉄板がある程度温まったところにリリアが肉をセッティングする。

村の皆が集まった頃には良い感じの焼き加減になっていた。

「よっしゃあ!お前らー!肉を食う準備は出来てるかー!」

『おおー!』

村の皆がクレアの掛け声に返事する。

私とパリスとクレアで皆のお皿に肉を乗せて、リリアとウルカで肉を焼く。

しばらく焼いて、皆がお腹いっぱいになった頃、私たちはようやく肉にありつく事が出来た。

「ん~!たくさん動いた後の肉は最高なのじゃ!」

ここ最近では一番動いたとクレアは言いながら、物凄い速さで肉を食べていく。

「おい!それは俺が置いた分だぞ!」

クレアがウルカが焼けるのを楽しみにしていた肉を取ったのでウルカが怒る。

「へっへーん!この世は弱肉強食なのじゃ!悔しかったら、私より先に取ってみるんじゃな!」

「テメェ…その言葉、忘れんじゃねぇぞ?」

ウルカは自慢げに言うクレアを睨みつけながら言う。

「け、喧嘩はダメですよ…」

パリスが控えめに言う。

「大丈夫…アリス…いる…」

リリアは気にするだけ無駄だと言いたげに言う。

そこにクレアが肉を取ろうとした瞬間、その肉をウルカがさらっていく。

「あー!それ私が狙ってたのにー!」

「へっ!この世は弱肉強食なんだろ?文句ねぇよな!」

さっきの仕返しだと言わんがばかりにウルカがクレアが取ろうとしていた肉を見せびらかしながら言う。

「ぐぬぬ…」

クレアが悔しそうに唸る。

私は自分の分の肉を焼いて食べる。

「うん。美味しい!」

パリスが野菜を焼いていると…

「やい!お前!」

ネコ科の生物を思わせるしなやかな尻尾、丸みを帯びた小さな耳の虎族グランダーの少年がパリスに言う。

「何でしょう?」

パリスがそう言うと虎族の少年がニヤリと笑う。

「俺と勝負しろ!お前、弱そうだから、俺が鍛えてやる!」

「いえ、遠慮しておきます。冒険者でもない方を危険な目に合わせる訳にはいきませんので…」

「なんだよ?ビビってんのか?」

虎族の少年がパリスを挑発する。

「そうですね…ある意味、そうとも言えますね。」

パリスはあまり興味無さそうに言う。

「へっ!冒険者って、言っても腰抜けなんだな!お前ら、大した事無いんじゃないのか?猫族のやつも弱そうだし!」

虎族の少年が私を弱そうだと言った瞬間、クレアからとてつもない殺気が放たれる。

リリアも凄い顔をしていたので、かなり強烈な地雷を踏んでしまったと言わざるを得ないだろう。

「そこまで言うなら、パリスがお相手してやりますよ。負けたら素直にアリスさんに謝れよ?」

パリスが頬をひくつかせながら怒りを抑える。

「へっ!じゃあ、お前が負けたら、俺の家来になれよな!」

そうして、少し開けた場所に移動し、二人の戦いが始まる。

「どこからでもどうぞ。」

パリスが右手を「クイッ」と動かして少年を挑発する。

「へっ!言われなくてもやってやるぜ!」

虎族の少年は獣化を使って立派な虎の爪を出す。

「おりゃあ!」

少年が勢いよく振り上げた右手を振り下ろす。

「遅い!」

パリスが少年の右手が下ろされる前に少年の体に右脚の蹴りを当てて突き飛ばす。

「グアッ!」

少年が地面に叩きつけられながら転がる。

パリスは獣化が解けて地面に這いつくばって倒れている少年に言う。

「もう終わりですか?あれだけ大口を叩いて、このザマとは程度がしれてますね。」

パリスは少年がよろよろと立ち上がるのを待つ。

「へっ!ちょっと油断しただけだっ!今度はそうはいかねぇぞ!」

少年は再度獣化を使用してパリスに飛びかかって、今度は両手でアタックする。

パリスは両手の攻撃を両腕をクロスさせて受け止める。

「どうだ!俺の力、思い知ったか!」

虎族の少年は勝ち誇った様にパリスに言う。

パリスは呆れた様子で言う。

「やっぱり、口だけでしたね。」

パリスは軽く腕を押し返して、反動で宙に浮いた少年の体に右の膝蹴りを当てる。

「グアアアアアアアアアア!」

少年の体が吹き飛び、そのままの勢いで後ろに生えていた木に叩きつけられる。

少年は満身創痍で地面に這いつくばっていた。

「約束通り、アリスさんに謝ってもらいますよ。これでもまだやられたりないと言うなら、お望み通りに何度でも地に叩きつけてあげますよ。」

パリスは這いつくばっている少年の目の前まで来て見下し、威圧をかけながら言う。

その様はまさに絶対的な王の断罪のようだった。

少年は痛む体を震わせながら正座する。

「調子に乗ってすみませんでした…」

少年はそのまま崩れるように土下座する。

私は少年の前まで行き、顔を上げさせる。

「別に良いですけど、怪我してないか診させてさせてもらいますね。」

私はそのまま少年の体を診て、怪我していた場所に治療を施す。

「はい。終わりましたよ。しばらくは安静にしていてくださいね。」

「ありがとうございます」

少年の親に事情を説明していたので、特に何も問題なく少年とその親が家に帰る。

「アリスさん、すみません…」

少年が去った後でパリスが謝る。

「良いよ。パリスちゃんも私の事を思ってやった事なんでしょ?それにパリスちゃんが出なかったら、あの子死んでたかもしれないしね。特にクレアなんか手加減を知らないし。」

私がそう言うとクレアがわちゃわちゃと手を振りながら言う。

「そんな事ないのじゃ!私だって、ちゃんと手加減くらい出来るのじゃ!多分…」

「ほんとかなぁ?」

「ほんとじゃよ!」

そんな風に騒がしくしながら、後片付けをして、借りていた宿に戻る。

「あっ…さっきの…」

虎族の少年によく似た女の子が私たちを見て言う。

「クンクン…さっきの虎族の少年の匂いがするのじゃ!後、マンドラゴラの匂いもするのじゃ。」

クレアが匂いを嗅ぎながら言う。


この世界ではマンドラゴラの叫び声を聞いても死んだりとかはしないが、その叫び声にはモンスターを呼び寄せる効果がある為、間接的に死んでしまう可能性があり、叫び声をあげさせないように口を塞がないといけないと言われている。

それ以外は読者の皆も知っている様な人の顔が着いた根菜のマンドラゴラで間違いない。


リリアは私の後ろで眠そうに目を擦っていた。
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