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大罪覚醒
魔王と剣豪
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「着いたぞ。」
魔王の少女は開けた土地の真ん中で立ち止まり言う。
「ここなら誰にも気を使わなくても良さそうですね。」
金髪の青年が少し楽しげに言う。
「さて、フィルアールよ。我をここまで連れてきたのには理由があるのだろう?」
少女が悪魔の様な翼を広げ、口に人差し指を当てながらいたずらっぽく笑う。
「そうですね。アスティア様には少し聞きたい事がございますが…」
青年は金色に輝く剣を構えながら言う。
「まずは戦いませんか?私も貴女も早く戦いたくてうずうずしてるでしょう?」
「フハハ!人間風情が知ったような事を…」
少女がさらに魔力を高めて両腕に龍の鱗の様なものを出現させる。
同時に青年の目の色が変わる。
「では、行くぞ。せいぜい、楽しませてくれよ!」
「望むところです!こちらも最高に楽しみますよ!」
一瞬で両者の姿が消え、遥か上空から激しい衝撃波が地上に発せられる。
衝撃波の発生源では少女の拳と青年の黄金の剣がぶつかり合っていた。
「我は魔神龍王、アスティー・テペシュラーデ!その真名において、貴様の全てを阻もうぞ!」
「では、私は魔王を倒す勇者だとでも言っておきましょうか。」
「フハハハハ!なかなか粋な事を思いつくではないか!」
そして、そのまま重力に引っ張られて地に落ちながらも拳と剣の怒涛の攻防が繰り広げられ、地に足が着くと同時に互いに距離を取りながら、拳と剣の衝撃波をぶつけ合う。
「一気に行きます!」
青年はそう言うと一瞬で少女の背後に現れる。
「煉獄一閃!」
「龍王覇轟衝!」
少女の体から解き放たれた魔力による衝撃波が青年の刃を弾き返す。
少女は振り返って青年を見ながら声高らかに宣言する。
「勇者よ!我が力を刮目せよ!」
少女が翼を大きく羽ばたかせると空高く飛び上がる。
「龍王の鼓動」
少女が口からひと粒のしずくのような青い炎を一つ落とす。
「ちょっとこれはマズいですかね。」
青年がそう呟き、青い炎が地面に落ちる。
その瞬間、一瞬で大地が青く燃え盛る。
「…」
少女は青く燃える大地を見ながら、ちょっとやり過ぎたかなと思考する。
「容赦ないですね。」
そんな声が聞こえたかと思った瞬間、大地を焦がす青い炎が吹き飛ぶ。
「お主の事じゃから、生きておるとは思っておったが…」
少女は大地に降り立つと目の前の青年を見る。
「まさか、無傷だとは思わなかったのぅ。」
青年は頭を掻きながら笑う。
「あはは!私も伊達に伝説の剣豪などと呼ばれてませんからね。とは言っても、アスティア様が手加減なさってなければ、私は今頃灰すら残ってないでしょうね。」
「おや?我は手加減したつもりは無いのじゃが…」
「…確かにそのお姿では全力でしょうね。ですが、貴女にはまだ形態変化が残ってます。それを考慮すれば手加減されてると言っても過言ではないでしょう?」
「ハハハ!それもそうじゃな!」
そう言って2人が魔力を高める。
「これで決めますよ!」
「かかってくるが良いぞ!」
両者が同時に地を蹴り、互いの魔力を纏った拳と剣が交わる瞬間、彼らの間に入る者が居た。
「全く…」
「片手で受け止めただと!?」
フードを被ったピッチリとした黒いタイツの人が2人の剣と拳を片手で受け止めていた。
顔は隠れていたが、豊満な胸がタイツ越しに見える事から女性である事が確認出来る。
「お二人さん、少しは周りを見なさいよね。」
周囲にあった森はほぼ焼け野原で跡形もなくなっている。
炭として残っているものも元の原型が分からないくらいには粉々になっていた。
地面も所々に熱によって溶けた跡が見える。
「す、すみません…ウェンが止めてくれなければ、多分もっと酷かったと思います。」
そう言って青年が剣をしまうと同時に少女も元の姿に戻る。
女性はフードを被ったまま少女を見る。
「久しぶりね…アスフィーアさん。」
「お主…どこかで…」
少女は思い出そうと首を傾げる。
「おっと…失礼、私だけが一方的に知ってる関係だったわね。私はウェン。アルフェノーツのメイドよ。」
女性が人差し指を当てた口元が日差しに照らされていたずらっぽく微笑んでるのが見える。
「ところでウェンはどうしてここに居るんです?」
「あの子に会うためなのだけれど…」
女性は誰にも聞こえない程度の小さな声でそう零すと青年の方を向いて言う。
「しばらく休みをもらってるんだ。そしたら、フィルアール様たちが暴れてたってわけ。」
女性はニヤリと笑って言う。
「たまたま通りがかったって事ですか…せっかくの休暇を邪魔してしまってすみません。」
「別に気にしてないよ。フィルアール様が戦闘狂なのはうちの常識みたいなもんだし。」
女性が呆れた様に言うと青年はとても驚いた表情で言う。
「えっ…そんなに戦闘狂っぽいですか?!」
「うん。強そうな人見たら、いっつも戦いたがってるし、ただの一介のメイドのウェンにも戦りましょう!なんて言ってたからね。」
「だって、ウェンは元冒険者だったじゃないですか!だったら、その実力を知りたいと思うのは当然でしょう?」
「はいはい。そういう事にしとくよ。」
そう言って女性が言うと青年はちょっと拗ね気味な表情をしていた。
「お主ら、主従関係であるのに仲が良いのじゃな。まるで古くからの友人であるかのようじゃ。」
少女が少し揶揄う様に言う。
「アッハハ!確かに!でも、魔王様もフィルアール様と仲が良いよね!とてもじゃないけど、初対面だとは思えないよ。今ならフリーだけど、どうかしら?」
ニヤリといたずらっぽく女性が微笑みながら、少女に言う。
一方、青年は何を言ってるのかわからないと言いたげな表情をしていた。
「わ、我は別に…そ、それよりもそう言うのは本人の意思と言うものが大事じゃろうて…」
少し赤い顔をしてモジモジして言う少女の顔を見て女性は優しく包み込むような笑顔で言う。
「フィルアール様の事だったら、なんでも教えてあげるよ。なんてね♪」
女性はそう言うと少し走って振り返り手を振る。
「んじゃ、ばいばーい!」
女性は言い終わると同時に凄い速さでどこかへと行ってしまった。
「嵐の様なやつじゃったのう…」
少女がポツリとそう言うと青年が恥ずかしそうに頭を掻きながら言う。
「でも、彼女はとても静かに仕事をこなす優秀なメイドなんですよ。」
少女はニヤリと笑って言う。
「そうじゃろうな。喋り方はアレじゃが、相手を不快にさせない声の出し方をしておったし、あの服越しにも分かる非の打ち所がない綺麗な姿勢もまさに従者と呼べるものであったな。それに…」
少女は青年の顔を見ながら言う。
「お主と我の攻撃を片手で受け止めた実力も只者では無いな。少なくとも我一人では叶わぬじゃろう。」
「そうですね…経歴としては元A級冒険者ですので、階級で見るなら私やアスティア様の足元にも及ばない実力と言えますが、間違いなく本気になればアリスちゃんよりも強いでしょうね。」
青年は真面目な表情で女性が去って行った方を見て言う。
「そうじゃな。次会った時は我も試合をしたいくらいじゃ。まあ、勝敗はおおよそ予想出来ておるがのう。」
少女は横目で青年の横顔を見る。
青年は真っ直ぐと目指すものを見ているようだった。
「あ、そうだ!」
青年は思い出した様に言うと少女に言う。
「アスティア様は何故、アリスちゃんを選んだんです?」
少女は一瞬ニヤリと笑うと言う。
「彼奴に賭けた方が面白そうだからじゃよ。」
青年はそれを聞いて安心したように言う。
「魔王様らしい理由で良かったです。」
魔王の少女は開けた土地の真ん中で立ち止まり言う。
「ここなら誰にも気を使わなくても良さそうですね。」
金髪の青年が少し楽しげに言う。
「さて、フィルアールよ。我をここまで連れてきたのには理由があるのだろう?」
少女が悪魔の様な翼を広げ、口に人差し指を当てながらいたずらっぽく笑う。
「そうですね。アスティア様には少し聞きたい事がございますが…」
青年は金色に輝く剣を構えながら言う。
「まずは戦いませんか?私も貴女も早く戦いたくてうずうずしてるでしょう?」
「フハハ!人間風情が知ったような事を…」
少女がさらに魔力を高めて両腕に龍の鱗の様なものを出現させる。
同時に青年の目の色が変わる。
「では、行くぞ。せいぜい、楽しませてくれよ!」
「望むところです!こちらも最高に楽しみますよ!」
一瞬で両者の姿が消え、遥か上空から激しい衝撃波が地上に発せられる。
衝撃波の発生源では少女の拳と青年の黄金の剣がぶつかり合っていた。
「我は魔神龍王、アスティー・テペシュラーデ!その真名において、貴様の全てを阻もうぞ!」
「では、私は魔王を倒す勇者だとでも言っておきましょうか。」
「フハハハハ!なかなか粋な事を思いつくではないか!」
そして、そのまま重力に引っ張られて地に落ちながらも拳と剣の怒涛の攻防が繰り広げられ、地に足が着くと同時に互いに距離を取りながら、拳と剣の衝撃波をぶつけ合う。
「一気に行きます!」
青年はそう言うと一瞬で少女の背後に現れる。
「煉獄一閃!」
「龍王覇轟衝!」
少女の体から解き放たれた魔力による衝撃波が青年の刃を弾き返す。
少女は振り返って青年を見ながら声高らかに宣言する。
「勇者よ!我が力を刮目せよ!」
少女が翼を大きく羽ばたかせると空高く飛び上がる。
「龍王の鼓動」
少女が口からひと粒のしずくのような青い炎を一つ落とす。
「ちょっとこれはマズいですかね。」
青年がそう呟き、青い炎が地面に落ちる。
その瞬間、一瞬で大地が青く燃え盛る。
「…」
少女は青く燃える大地を見ながら、ちょっとやり過ぎたかなと思考する。
「容赦ないですね。」
そんな声が聞こえたかと思った瞬間、大地を焦がす青い炎が吹き飛ぶ。
「お主の事じゃから、生きておるとは思っておったが…」
少女は大地に降り立つと目の前の青年を見る。
「まさか、無傷だとは思わなかったのぅ。」
青年は頭を掻きながら笑う。
「あはは!私も伊達に伝説の剣豪などと呼ばれてませんからね。とは言っても、アスティア様が手加減なさってなければ、私は今頃灰すら残ってないでしょうね。」
「おや?我は手加減したつもりは無いのじゃが…」
「…確かにそのお姿では全力でしょうね。ですが、貴女にはまだ形態変化が残ってます。それを考慮すれば手加減されてると言っても過言ではないでしょう?」
「ハハハ!それもそうじゃな!」
そう言って2人が魔力を高める。
「これで決めますよ!」
「かかってくるが良いぞ!」
両者が同時に地を蹴り、互いの魔力を纏った拳と剣が交わる瞬間、彼らの間に入る者が居た。
「全く…」
「片手で受け止めただと!?」
フードを被ったピッチリとした黒いタイツの人が2人の剣と拳を片手で受け止めていた。
顔は隠れていたが、豊満な胸がタイツ越しに見える事から女性である事が確認出来る。
「お二人さん、少しは周りを見なさいよね。」
周囲にあった森はほぼ焼け野原で跡形もなくなっている。
炭として残っているものも元の原型が分からないくらいには粉々になっていた。
地面も所々に熱によって溶けた跡が見える。
「す、すみません…ウェンが止めてくれなければ、多分もっと酷かったと思います。」
そう言って青年が剣をしまうと同時に少女も元の姿に戻る。
女性はフードを被ったまま少女を見る。
「久しぶりね…アスフィーアさん。」
「お主…どこかで…」
少女は思い出そうと首を傾げる。
「おっと…失礼、私だけが一方的に知ってる関係だったわね。私はウェン。アルフェノーツのメイドよ。」
女性が人差し指を当てた口元が日差しに照らされていたずらっぽく微笑んでるのが見える。
「ところでウェンはどうしてここに居るんです?」
「あの子に会うためなのだけれど…」
女性は誰にも聞こえない程度の小さな声でそう零すと青年の方を向いて言う。
「しばらく休みをもらってるんだ。そしたら、フィルアール様たちが暴れてたってわけ。」
女性はニヤリと笑って言う。
「たまたま通りがかったって事ですか…せっかくの休暇を邪魔してしまってすみません。」
「別に気にしてないよ。フィルアール様が戦闘狂なのはうちの常識みたいなもんだし。」
女性が呆れた様に言うと青年はとても驚いた表情で言う。
「えっ…そんなに戦闘狂っぽいですか?!」
「うん。強そうな人見たら、いっつも戦いたがってるし、ただの一介のメイドのウェンにも戦りましょう!なんて言ってたからね。」
「だって、ウェンは元冒険者だったじゃないですか!だったら、その実力を知りたいと思うのは当然でしょう?」
「はいはい。そういう事にしとくよ。」
そう言って女性が言うと青年はちょっと拗ね気味な表情をしていた。
「お主ら、主従関係であるのに仲が良いのじゃな。まるで古くからの友人であるかのようじゃ。」
少女が少し揶揄う様に言う。
「アッハハ!確かに!でも、魔王様もフィルアール様と仲が良いよね!とてもじゃないけど、初対面だとは思えないよ。今ならフリーだけど、どうかしら?」
ニヤリといたずらっぽく女性が微笑みながら、少女に言う。
一方、青年は何を言ってるのかわからないと言いたげな表情をしていた。
「わ、我は別に…そ、それよりもそう言うのは本人の意思と言うものが大事じゃろうて…」
少し赤い顔をしてモジモジして言う少女の顔を見て女性は優しく包み込むような笑顔で言う。
「フィルアール様の事だったら、なんでも教えてあげるよ。なんてね♪」
女性はそう言うと少し走って振り返り手を振る。
「んじゃ、ばいばーい!」
女性は言い終わると同時に凄い速さでどこかへと行ってしまった。
「嵐の様なやつじゃったのう…」
少女がポツリとそう言うと青年が恥ずかしそうに頭を掻きながら言う。
「でも、彼女はとても静かに仕事をこなす優秀なメイドなんですよ。」
少女はニヤリと笑って言う。
「そうじゃろうな。喋り方はアレじゃが、相手を不快にさせない声の出し方をしておったし、あの服越しにも分かる非の打ち所がない綺麗な姿勢もまさに従者と呼べるものであったな。それに…」
少女は青年の顔を見ながら言う。
「お主と我の攻撃を片手で受け止めた実力も只者では無いな。少なくとも我一人では叶わぬじゃろう。」
「そうですね…経歴としては元A級冒険者ですので、階級で見るなら私やアスティア様の足元にも及ばない実力と言えますが、間違いなく本気になればアリスちゃんよりも強いでしょうね。」
青年は真面目な表情で女性が去って行った方を見て言う。
「そうじゃな。次会った時は我も試合をしたいくらいじゃ。まあ、勝敗はおおよそ予想出来ておるがのう。」
少女は横目で青年の横顔を見る。
青年は真っ直ぐと目指すものを見ているようだった。
「あ、そうだ!」
青年は思い出した様に言うと少女に言う。
「アスティア様は何故、アリスちゃんを選んだんです?」
少女は一瞬ニヤリと笑うと言う。
「彼奴に賭けた方が面白そうだからじゃよ。」
青年はそれを聞いて安心したように言う。
「魔王様らしい理由で良かったです。」
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