spiritGUARDIAN ~あの空の向こうへ~ ①

七瀬 ギル

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第3章「初めての任務」

初めての任務 その③

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一方、紫月と黄泉と橙羽の3人は、小さい子の啜り泣く声が聞こえるという、駅の近くにある交差点で見張りを立てていた。

駅では人の会話や笑い声はするものの、この数日間と同様に、小さな子の啜り泣く声は、全く聞こえてこないのであった。

百合 黄泉
『全然、駄目ね。』
 
朝顔 紫月
『今日も現れてくれないのかなぁ?』

百合 黄泉
『私達とは、波長が合わないんじゃない?』

朝顔 紫月
『そうかもね。』

紫月と黄泉が話している隣で、暗い表情を浮かべる橙羽。
そんな橙羽のことが心配になり、紫月は橙羽の顔を覗き込み優しく話しかけた。

朝顔 紫月
『ヒマワリちゃん、元気?』

日廻 橙羽
『元気だよ。でも、お腹空いちゃって・・・。』

百合 黄泉
『どうりで大人しいわけね。お昼、食べて来なかったの?』

日廻 橙羽
『うん。お財布忘れちゃって。』

そう話しながらも、橙羽のお腹からは、『ぐぅ~っ』という、物凄い音が聞こえてきていた。

百合 黄泉
『凄い音・・・。あんた、女子として終わってるわよ。』

日廻 橙羽
『何よ!』『ユリちゃんの馬鹿!』

百合 黄泉
『さっきから、馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿煩いわね!』

物凄い剣幕で睨み合う黄泉と橙羽。
紫月は苦笑いを浮かべながら、『まあまあ、2人共落ち着いて!』と言い、2人の間を割って入った。

紫月が仲裁に入ったことで、黄泉は橙羽の元から遠ざかり、財布を取り出しながら話し始めた。
 
百合 黄泉
『そんなお腹で側に居られると、こっちが恥ずかしくなるから、コンビニで何か見てきてあげるわよ。』

日廻 橙羽
『えっ!』『奢ってくれるの?』

急に笑みを浮かべる橙羽。

百合 黄泉
『何で私が、あんたに奢るのよ!』
『明日、持ってきて。』

日廻 橙羽
『明日!』『来月じゃ駄目?』
『橙羽、お金使っちゃって、お財布に、200円くらいしか無いの・・・。』

百合 黄泉
『あー、もう仕方無いわね。』
『出世払いで良いわよ。それで、何が良いの?』

日廻 橙羽
『梅おにぎりと、小さい紙パックの牛乳が欲しい。』

百合 黄泉
『紫月ちゃんは?』

朝顔 紫月
『じゃあ私も、レモンティーお願いして良いかな?』

百合 黄泉
『分かったわ。じゃあ、行ってくるわね。』

黄泉は、そう言い残し、コンビニへと向かった。

日廻 橙羽
『アサガオちゃん、ヨツバちゃん家に、ペンとメモ帳忘れちゃったから、ペンとメモ帳貸してもらっても良い?』
『来月、お金返すの忘れそうだから、メモしておきたいの。』


橙羽の問いに、紫月は笑顔で『良いけど、多分あの言い方は、奢ってくれるんだと思うよ。』と答えながら、小さなショルダーバッグに手を伸ばした。

その言葉を聞いた瞬間、橙羽は笑顔で『じゃあ、大丈夫!』『ペンもメモ帳要らない!』と言いスマホを取り出し電話をかけ始めた。

日廻 橙羽
『もしもし!』『ユリちゃん!』

どうやら、電話の先には黄泉が居るようだ。

百合 黄泉(電話)
『何よ。』

日廻 橙羽
『やっぱり、梅おにぎりと牛乳止める!』
『ミックスサンドとね、カフェオレとね、ピザまんが欲しい!』

百合 黄泉(電話)
『はっ!』『最初のになさい!』

日廻 橙羽
『ユリちゃんのケチ!』

そう言うと橙羽は、電話を切った。

------------------------

一方、コンビニの中で、橙羽の態度にキレる黄泉。

百合 黄泉
『何なのよ!』『あの子は!』

そう小言を言いながら、お握りコーナーへ向かうと、お握りコーナーには何も無く、隣のサンドイッチコーナーに、唯一ミックスサンドだけが残っていた。

そして最悪なことに、飲み物コーナーの牛乳も売り切れており、カフェオレとレモンティーのみが並んでいたのであった。

百合 黄泉
『何なのよ・・・。このコンビニ、あの子とグルなの・・・。』

------------------------

黄泉は、紫月と橙羽の元へ戻ると、紫月にレモンティーと肉まんを渡し、自分の分のレモンティーと肉まんを取り出すと、残りの食料が入った袋を橙羽に向かって投げ渡した。

投げ渡されたこともお構いなしに、橙羽は袋の中に、ミックスサンドとカフェオレ、そしてデザートのピザまんが、入っているのを見て喜んでいた。

日廻 橙羽
『アサガオちゃん、見て見て!』

貰ったものを袋から取り出し、自慢する橙羽。

朝顔 紫月
『良かったね。』

日廻 橙羽
『うん!』『ユリちゃん有難う!』

無言で眉を顰めながら、カフェオレを飲む黄泉。
紫月は、そんな黄泉に近寄り、『ごめんね。私が余計なことを、言っちゃったから・・・。』と謝った。

百合 黄泉
『良いわよ。紫月ちゃんには、何1つ怒っていないわ。ただ、あの子の顔を見ると腹が立つだけ。』

黄泉が橙羽を睨みつけるも、橙羽は食べるのに夢中で、何も聞こえていない様子であった。

朝顔 紫月
『私が全部、出すよ。』

百合 黄泉
『良いわよ。それより紫月ちゃん、リーダーに昨日の領収書のこと、言ってないでしょ!』

朝顔 紫月
『うん。忘れてて・・・。』

百合 黄泉
『忘れていたんじゃ無くて、言い出せなかったんでしょ?』

朝顔 紫月
『・・・。』

百合 黄泉
『そんなに気を遣っていたら早死にするわよ。戻ったら、私が言ってあげる。レシートは、持ってるんでしょ?』

朝顔 紫月
『うん。』

実は、紫月が朱珠の家の前で見張りをしていた日、紫月のことが心配だった黄泉も、一緒に見張りをしていたのであった。

百合 黄泉
『そうゆうところ、リーダーも成ってないわね。普通、忘れないでしょ。』

朝顔 紫月
『仕方ないよ。リーダーも忙しいんだから。』

百合 黄泉
『そうは言っても、高校2年組は週に5日6時間、同じ時間、働いている訳でしょ?』
『忙しいからって通らないわよ。』

少し寂しそうな顔で、俯き肉まんを口にする紫月。

そんな2人の会話をよそに、橙羽はサンドイッチとピザまんを完食し、カフェオレも飲み干していたのであった。
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